JILPT、半数弱の企業が今後、年間総実労働時間を「短縮していく」と回答
~朝型勤務については約2割の企業が「検討余地あり」、約3割の労働者が「希望する」と回答~
―「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」(企業調査)結果
「労働時間や働き方のニーズに関する調査」(労働者調査)結果 ―
【調査結果のポイント】
≪企業調査≫
<半数弱の企業が今後、年間総実労働時間を「短縮していく」と回答>
年間総実労働時間の今後の方向性について尋ねると、「現状通りで良い」が約半数(49.2%)を占めたものの、「短縮していく」とする企業も半数弱(45.7%)みられた。短縮の具体的な方法としては(複数回答)、「所定外労働時間の短縮」が79.7%にのぼり、これに「年次有給休暇の取得率の引上げ」(47.2%)等が続く。年間総実労働時間を「短縮していく」理由としては(複数回答)、「働き過ぎを防止するため(メンタルヘルス不全者の削減や健康の確保等)」(64.9%)、「仕事と家庭の両立など時短は社会的な要請となっているため」(58.5%)、「労働生産性を向上させるため(より効率の良い働き方を追求するため)」(58.3%)等が多くなっている。
≪企業・労働者調査≫
<朝型勤務については約2割の企業が「検討余地あり」、約3割の労働者が「希望する」と回答>
正社員の働き方を多様化・柔軟化することへの賛否を尋ねると、41.6%の企業及び59.2%の労働者が「賛成(どちらかというと含む)」と回答した。また、始業時刻を8時等へシフトさせ、17~18時頃には必ず退社できるようにする「朝型勤務」については、20.4%の企業が「今後、検討余地がある」、30.9%の労働者が「希望する」と回答した。同様に、「短時間正社員制度」について「今後、検討余地がある」企業は29.2%で、「希望する」労働者は27.4%。「(より柔軟な)フレックスタイム制」については「今後、検討余地がある」企業が32.6%で、「希望する」労働者が39.3%などとなった。
<労働生産性を高めるには、業務上のムダの削減や業務配分のムラの解消等が喫緊の課題に>
企業調査で、労働生産性(従業員一人当たりの付加価値)を(さらに)高めるために必要なものを尋ねると(複数回答)、「仕事内容の見直し(ムダな業務の削減)」がトップ(63.1%)で、これに「仕事の進め方の見直し(決裁プロセスの簡素化、会議の短縮化等)」(48.7%)が続いた。一方、労働者調査で、仕事の効率性を高めるために必要なもの(複数回答)のトップは「組織間・従業員間の業務配分のムラをなくす」(54.6%)で、次いで「人員数を増やす」(30.0%)、「仕事中心の職場風土や社会慣行を見直す」(26.2%)などとなった。
≪労働者調査≫
<現状は「仕事に重点型」が半数弱だが、理想としては6割弱が「仕事と生活のバランス型」を志向>
労働者調査で、仕事と生活のバランスについて尋ねると、現在の状態としては「仕事に重点型」 「バランス型」「生活に重点型」がそれぞれ47.6%、37.5%、8.5%となっているのに対し、理想としては「仕事に重点型」が現状を33.7ポイント下回る13.9%、「バランス型」が22.3ポイント上回る59.8%、「生活に重点型」が8.7ポイント上回る17.2%などとなった。なお、現状と理想の乖離は、過去1年間により長時間の労働経験がある人ほど、また、年次有給休暇の取得率が低い人ほど大きくなっている。
<半数以上の労働者が、18時頃に退社できるようになったら「心身の休養」や「趣味」「家族との団欒」等に充てたいと回答>
労働者調査で、基本的に18時頃には退社できるようになったら何をしたいか尋ねると(複数回答)、多い順に、(1)心身の休養・リフレッシュ(64.0%)、(2)自身の趣味(57.8%)、(3)家族との団欒(51.0%)、(4)同僚や友人との懇親会(34.3%)、(5)家事、育児(30.6%)、(6)買い物、ショッピング(25.9%)、(7)自己啓発(英会話等)(24.5%)等があがった。
○ 調査の概要
1.調査の趣旨・目的
少子高齢化の急速な進展等に伴い、労働力人口が減少に転じるなか、労働生産性をいかに高めていくかが喫緊の課題となっている。そこで、長時間労働問題を構成している「所定外労働時間の長さ」と「年次有給休暇の未消化」に焦点を当て、その発生状況・原因を把握するとともに、長時間労働は職場にどのような影響を及ぼしているのか、また、より効率的な働き方を実現するには何が求められるのか等を展望するため、企業とそこで働く労働者(働き盛り世代を中心とする正社員)を対象に、アンケート調査を実施した。
2.調査対象:
民間信用調査機関が所有する企業データベースを母集団に、全国(農林漁業、鉱業、公務を除く)における、従業員規模100人以上の企業12,000社を、産業・規模別に層化無作為抽出した。また、同企業を通じて正社員60,000人分(100~299人は3枚、300~999人は6枚、1,000人以上は12枚)の調査票配付を依頼した(自社の正社員構成に照らして男女や年齢に極端な偏りが出ないよう留意しつつ、20~40代に優先的に配付してもらえるよう依頼した)。
3.調査項目数:企業23問、労働者18問
4.調査方法:郵送配布・郵送回収
5.調査期間:平成27年1月21日~2月末日
6.有効回収数(有効回収率):
企業2,412社(20.1%)、労働者8,881人(14.8%)
※調査結果の最終的なとりまとめは、年末を目途に調査シリーズとして刊行予定
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /7月27日発表・同機構プレスリリースより転載)