クオリア・リレーションズ
美容業界の就労実態調査・結果発表
医療・美容業界の労働問題調査とコンサルティングを行うクオキャリア(愛知県名古屋市、 中山豊・代表取締役 クオリア・リレーションズ)は、3月、全国250校の美容師養成専門学校を対象に、2006年度の卒業者に関する就職活動実態を電話調査(有効回答数:50校)を実施いたしました。
本調査の結果から、美容業界の就労実態において下記に並べる特徴があることがわかりました。
1. 人材採用難が叫ばれる美容業界の中で、採用に到ってもミスマッチのために早期に離職・転職をする若い美容師が増えつつある
2. 新卒入社のミスマッチを解消し充実したキャリア形成を進めていく上で、「より時間・内容の充実したコミュニケーション能力開発プログラム」の必要性
3.「リアルな職場雰囲気を把握できる情報提供インフラ」の必要性
弊社では本調査の結果を受け、4月初旬より、美容業界での就職を希望する方に向けた総合支援事業(クオキャリア)を展開してまいります。紙(求人誌)・WEB(Youtube動画利用)・モバイルの情報媒体を用いることによって、人材を必要とする求人先の労働条件、福利厚生、職場環境などの情報を明確化し、求人先と就職希望者との間でベストマッチングの促進を図ることを目的としています。今後は就職希望者を対象としたセミナーの開催やカウンセリングなどの機会を設け、きめ細かな就職支援サービスも実施してゆきます。
【 調査結果の概要 】
■ 調査実施期間: 2007年1月―2007年3月
■ 調査対象: 全国の美容学校(250校)
■ 調査方式: 電話調査
■ 回答状況: 有効回答数50校(有効回答率20%)
【 調査項目 】
【 調査結果の特徴 】
1.早期離職者の増加傾向
美容師養成専門学校は、現在のところ卒業後の学生に関する追跡調査を実施していない。美容師養成専門学校の目的は、在学生の(1)国家試験合格(2)就職内定であるため、既卒学生の職業実態把握について、体制的な取り組みを行っていないのが現状である。それにもかかわらず、回答校50校のうち30校が「卒業後1年以内の離職者は増えていると思われる」と回答した(残りは全て「把握できていない」と回答)。根拠は、卒業後に担当教員に離職・転職の相談をしてくる卒業生が増えてきていることである。
彼らの主な離職・転職理由として、「人間関係」(37%)、「イメージとのギャップ」(30%)を挙げて相談に来ているという。理由は他に「仕事がつらい(13%)」「条件面(7%)」も散見されるとのこと。経済組織内で求められるコミュニケーション、そして客としてはなく就業者として見た職場理解、この2点の不足が早期離職の主原因と考えられる。
2.コミュニケーション力の問題
美容サロンの営業上、立地の利便性、確かな技術・センスは従来から固定客確保の必須要件として経営サイドに当然の認識がある。昨今では、それらに加え、適切な接遇や良質なコミュニケーションも重要なファクターとして捉えられはじめている。そうした要請からも、美容師養成専門学校では2年間のカリキュラムの中に、接遇やマナーを学ぶプログラムを用意するところが少なくない。当社が行った電話調査においても、全50校のうち68%の専門学校にコミュニケーション能力開発を目的とする何かしらのプログラムが見られた。
しかし、一方でコミュニケーションの悩みを原因とする早期離職者の増加傾向がある。ある専門学校は、就職活動に際して「電話のかけ方や話し方で落とされる子も少なくない」とコメントをした。コミュニケーション能力開発については、学生時代から就業後においても、継続的かつ段階的な教育施策が業界として求められている。とりわけ学ぶことに集中できるのが学生時代である。業界アプローチを行う就職活動においてコミュニケーション能力が評価にさらされることをひとつの指標と捉え、より時間と内容を充実させたプログラム開発と実施が必要である。
3.職場理解の問題
美容学生の就職活動には、はっきりとしたステップが見られる。メディアや業界で著名な人気美容サロンへの就職を、多くの学生が目指している。しかし、人気美容サロンと言えども、採用枠は無尽蔵ではなく、むしろ狭き門である。したがって、たいていの学生は残念ながらこの人気美容サロンへの就職は叶わないのが現状である。
求人情報項目の中、何が学生に重要視されるかを調査した。最も多かった回答は「場所」(50校中18校)。ここでいう「場所」とは、青山・表参道・原宿といった美容サロンのステータスシンボルとしてブランド化された場所を指している。または地元におけるシンボリックな場所を指している。通勤利便性の意味ではないことが注目点である。
「こういった人気美容サロンへの応募結果が明らかになってから、地に足のついた就職活動が始まる」という認識は、ほとんどの美容師養成専門学校において共通している。そこであらためて着目する求人情報項目が、「店舗の性格(オーナーの考え方、雰囲気、顧客層)」(50校中12校)、「労働条件(勤務時間、給与)」(50校中12校)となっている。問題はここから発生する。人気美容サロンの場合、多角的で可視化された厳しい「リアル」な就業環境について、良くも悪くも複数のメディアが多くの情報を発信し、学生はそれを理解して応募している。また採用側も人材を厳選できる状況にある。そのため、情報や認識の不足を原因とするいわゆるミスマッチは起こりにくい。
一方、その他の美容サロンに関する情報は、学校に掲示された求人票を主な情報媒体として入手している。求人票が発信する情報は限定的であり、また採用だけを目的化しているため多少の演出も当然にかかることになる。一般大学とは異なり、民間の就職情報エージェントもほとんど機能していないのが美容学生を取り巻く就職活動環境の現状である。およそ90%の美容サロンが従業員9名以下の中小・零細事業者であり、就職説明会などが行われることも人気美容サロン以外にはまずない。したがって学生の職場理解に必要な生きた情報が乏しいのが現状である。
おそらく学生も求人案件は選ぶほどある一方で、一件あたりの「知りたい」情報量や質が不足しているという感覚を持っていると思われる。「求人票の添付資料として、サロン内やスタッフを紹介する動画が収録されたCD-ROMを提出してくる美容サロンもあり、そういった求人はとても人気がある」とコメントした専門学校があった。中小・零細事業者が中心の美容サロンにあって、採用の厳しい新卒求人活動にあれこれと手をかけていられない実務上の課題はある。しかし、この就業環境の「リアル」な情報を提供できれば、採用側にとっても応募促進とミスマッチ減少を期待することができる。学生がよく知りたい「リアル」な情報であり、かつ職場理解を深める効果があるからである。
専門学校ではミスマッチを減らすため、応募前に多くの求人サロンを見学するよう指導している。しかし、見学するためにも、その志望動機が必要である。実際に50校中58%の専門学校が「学生の見学件数は1〜3件程度」と回答しており、見学促進のねらいはうまく効果を発揮しているとは言いがたい。見学を促進する上でも、写真や画像、現職スタッフのコメントなど、生きた情報をより多く学生に提供する取り組みが必要である。実際の職場雰囲気を掴むに資する情報提供インフラを工夫・改善することは、早期離職者を減少させる一歩となると考えられる。
(クオリア・リレーションズ http://top.quacareer.com/ /同社プレスリリースより抜粋・4月13日)