「ポジティブに考える」「客観的に捉える」といった“認知”による対処が、ストレスによる心身の不調を大きく改善。特に“対人関係によるストレス”や“職場環境によるストレス”の軽減に効果的~ストレスチェックの経年データに基づく共同研究の成果を発表:ヒューマネージ
人的資本経営(Human Capital Management)の哲学に基づく人材サービス事業を展開する株式会社ヒューマネージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:齋藤 亮三、以下ヒューマネージ)は、企業で実施されたストレスチェックの分析結果をもとに、「ストレスの原因への対処方略によるストレス反応の改善効果」に関する共同研究を行いました。本分析は、厚生労働省が推奨する『職業性ストレス簡易調査票』に独自設問が追加された調査票の項目を用いており、また、約12万名の経年データに基づく大規模な分析となります。
■「ポジティブに考える」「客観的に捉える」など、“認知”による対処(コーピング)がストレスによる心身の不調を、約1割改善。
ストレスの原因(ストレッサー)によって起こる心身の変化(ストレス反応)の程度は、ストレスの原因への対処(コーピング)によって異なるとされています(Folkman&Lazarus,1998)。このコーピングの効果に関する先行研究は様々ありますが、「日本の労働者」を対象に、「縦断的な質問紙調査」(一定の調査対象に関して時をへだてた2つ以上の時点で調査を行う)を行い、コーピングの効果を定量的に検討した研究はほとんど見られませんでした。今回の分析結果は、約12万名というデータの多さだけでなく、「2ヶ年の結果データを対象にしている」点においても、非常に貴重なものと言えます。
1)はじめに:ストレスの原因への対処(コーピング)とは?
一般的に「ストレス」という言葉は、ストレスの“原因”(例:「あの上司がストレスだ」)とストレスの“結果”(例:「ストレスで胃が痛い」)の両方を指す言葉として使われていますが、心理学では、ストレスの“原因”を「ストレッサー」、ストレスの“結果”を「ストレス反応」といいます。
ストレッサーによって起こるストレス反応の程度は、ストレッサーへの対処(コーピング)によって異なるとされています。コーピングには、自ら行動しストレッサーの解決を図る“行動”によるコーピングと、捉え方を変えることでストレッサーを軽減しようとする“認知”によるコーピングがあります。同じストレッサーにさらされても、人によりストレス反応が異なるのは、コーピングの違いが影響しているのです。
2)明らかになったこと①「“認知”による対処が、ストレス反応を大幅に軽減する」
今回の分析により、“行動”によるコーピング、“認知”によるコーピングともストレス反応の改善に効果があることが明らかになりました。特に、ストレスフルな環境において、「ポジティブに考える」「客観的に捉える」といった“認知”によるコーピングをおこなった人は、ストレス反応の程度(※)が約1割と大幅に改善していました。
状況によっては、自ら行動しストレッサーの解決を図る“行動”によるコーピングでは、問題解決が難しい場合もあります。そのような場合は、“行動”によるコーピングと同時に“認知”のコーピングを併用していくことが効果的と言えそうです。
※『職業性ストレス簡易調査票』の「ストレスによっておこる心身の反応」項目の得点(得点範囲:29~116、平均値:56)
3)明らかになったこと②「ストレッサーにより、効果的なコーピングが異なる」
さらに、ストレッサー、コーピング、ストレス反応の因果関係を詳しく分析することにより、ストレッサーに応じて“認知”と“行動”のコーピングを使い分けると効果的であることがわかりました。
たとえば、「ポジティブに考える」「客観的に捉える」といった“認知”によるコーピングは、「職場の対人関係でのストレス」「職場環境によるストレス」といったストレッサーに効果がみられました。これらのストレッサーには、自身の認知(とらえ方)を変えることが改善の第一歩になり得ることを示唆しています。
他方、「上司に悩みを相談する」「計画を立てて解決を目指す」といった“行動”によるコーピングは、「働きがい」や「自身が感じている仕事の適性度合い」といったストレッサーに効果がみられました。これらのストレッサーには、行動を起こし、状況に働きかけることが効果的であることが窺えます。
今回、コーピングがストレッサーの軽減、ストレス反応の改善に効果的であることがデータから明らかになりましたが、ストレッサーが一定のレベルを超えると、個人のコーピングのみで対処することは難しくなります。ストレッサーや個人のコーピングの状況に応じて、組織レベルで改善に取り組むことが重要です。
<共同研究の概要>
テーマ:コーピングによるストレス反応の改善効果~2年間のデータを用いた縦断的検討~
研究者:株式会社ヒューマネージ
種市 康太郎(桜美林大学 教授)
川上 真史(ビジネス・ブレークスルー大学 教授)
牛尾 奈緒美(明治大学 教授)
<分析対象>
対象者数:115,162名
調査時期:第1回調査…2016年1月~12月
第2回調査…2017年1月~12月
調査票:ストレスチェック『Co-Labo57+』(『職業性ストレス簡易調査票』+独自設問が追加された調査票)
■本件に関するお問い合わせ
株式会社ヒューマネージ 広報グループ 担当:山口(やまぐち)
e-mail :info@humanage.co.jp
tel :03-5212-7170 fax :03-5212-7180
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ヒューマネージ https://www.humanage.co.jp/ /11月9日発表・同社プレスリリースより転載)