アジア太平洋地域の昇給率は4年ぶりに上昇。金融業が低調に推移する中、製薬・ヘルスサイエンス業界の報酬が上昇を維持~ウイリス・タワーズワトソン昇給率調査より:ウイリス・タワーズワトソン
2018年のアジア太平洋地域の昇給率は、2014年以降初の前年比ベースで緩やかな上昇傾向が見られます。グローバルにアドバイザリー業務とブローカー業務、各種ソリューションを提供するリーディングカンパニー、ウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)が実施した最新の昇給率調査レポート(2018年Q3 アジア太平洋地域版)では、アジアの17の国や地域における2018年平均昇給率を、2017年の5.6%に対し0.1%高い5.7%と予測しています。
今年のアジア太平洋地域の企業業績予測結果にもとづき、ウイリス・タワーズワトソンはこの緩やかな上昇傾向は2019年まで続くと見込んでいます。なお、2018年の業績については、調査に参加した企業の60%が前年度並みと回答しています。
各社の回答の平均値でみると、昇給の予算枠のうち16.8%が全地域従業員数の12.8%を占めるトップパフォーマーへ割り当てられています。言い換えると、トップパフォーマー1人に対して、平均以下のパフォーマー1人の1.4倍の予算が割り当てられているということになります。
2019 年の昇給率予測を2018 年の実績と比較すると、0.4%増の中国を筆頭に、インドネシア・日本・マレーシア・韓国・タイなどの9 カ国において上昇が予想されています。一方、オーストラリア・香港・インド・ニュージー
ランド・フィリピン・シンガポール・台湾・ベトナムにおいては大きな変化は想定されていません。
安定した業績の見通しにもかかわらず、新たに人員を採用する予定がある企業の割合は、前年の39%から27%に減少しており、採用活動が向こう12 ヶ月から24 ヶ月の間、鈍化する可能性を示唆しています。一方で、現在の人員を維持したいと考える企業は54%から66%へと増加しました。人員減を見込む企業の比率は7%と前年程度に留まっています。堅調な業績のもと、人員削減までは踏み込まずとも、自動化、アウトソーシング、および技術向上などによる業務の最適化を見据え、人員数を慎重に管理している各社の姿勢が透けて見えます。
さらに自己都合ベースの退職率は、ピーク時の平均15%から13.2%に減少しました。これは、各社が現有人材の再配置や能力開発を進めていることの表れであるとウイリス・タワーズワトソンではみています。
<< 金融業界の昇給率が低調に推移する中、製薬・ヘルスサイエンスは上昇傾向を維持> >
製薬・ヘルスサイエンス業界の昇給率は、その業績の高い成長により、その他の業界よりも高い水準を維持しています。ヘルスケアの領域は、近年の中国と日本における政策改革2 や、バイオテクノロジーの発展とデジタルイノベーションにより加速度的な成長を遂げつつあります。その結果、2018 年の製薬・ヘルスサイエンス業界の昇給率(中央値)は、全業種より0.2%高く、特にインドネシア(+0.9%)、中国(+0.5%)、インド(+0.3%)では大きな違いが見られました。
一方、アジア太平洋地域における金融業界の昇給率は、他業界より低調に推移しています。この業界は、フィンテックの発展に伴う競争激化や、ビジネス環境の継続的・構造的な変化に直面していることから、各企業のコスト管理に対する意識が高まっているといえるでしょう。その結果、2018 年の金融業界の昇給率(中央値)は全業種に対して0.3%低い結果となりました。
<< 賃金の支払いは、公平性、透明性、柔軟性により注目する必要がある>>
ウイリス・タワーズワトソンによる現行報酬制度に関する最近の調査によると、アジア太平洋地域の半数近くの雇用主が賃金の「差別化」(=人材別のメリハリ)の強化や、個々の社員の成果を高めるために、報酬制度を効果的に利用していることがわかりました。しかしながら、61%の企業は、自社の予算枠によって、報酬戦略の策定や実行上の制約が生じていると認識しています。今日の逼迫した人材市場において、極めて重要でかつ需要がある高度専門人材は市場平均の10%から25%も高い給与と、場合によっては固定給の1.5 倍に達する賞与を支給されています。
この課題への対応の可否は、給与の透明性と公平性に対する従業員の強い期待と報酬戦略の方向性を結びつけられるかにかかっています。
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ウイリス・タワーズワトソン
リワード部門 データサービスプラクティス
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◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(タワーズワトソン株式会社 https://www.towerswatson.com/ja-JP /10月10日発表・同社プレスリリースより転載)