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【ヨミ】ホラクラシー ホラクラシー

「ホラクラシー」(holacracy)とは、従来の中央集権型・階層型のヒエラルキー組織に相対する新しい組織形態を示す概念で、階級や上司・部下などのヒエラルキーがいっさい存在しない、真にフラットな組織管理体制を表します。ホラクラシーの下では、意思決定機能が組織全体に拡張・分散され、組織を構成する個人には役職ではなく、各チームでの役割が与えられます。細分化されたチームに、それぞれ最適な意思決定・実行を行わせることで、組織を自律的・自走的に統治していくシステム――それがホラクラシーです。
(2015/6/29掲載)

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ホラクラシーのケーススタディ

経営の未来か、マネジメントの放棄か
上司も管理職もいないフラットな組織

「ホラクラシー」の理論を最初に提唱したのは、米国のソフトウェア企業の創設者であるブライアン・ロバートソン氏です。2007年に、自ら創案した組織哲学を30ページにわたる“憲法”に明示し、公表しました。それを機に、ホラクラシーへの関心が広がり、欧米の企業やNPOなどに浸透していったといわれます。

伝統的な組織では、あらゆる意思決定がトップダウンのヒエラルキーによって行われ、目標や戦略、さらには個々のタスクまでもが上から下へと流れてくるのが普通ですが、これに対し、ホラクラシーは一切のヒエラルキーを排し、フラットな組織形態を志向します。細分化したチームそれぞれに意思決定の権限と機能を分散し、全体を自律・自走させるのがホラクラシー型組織の特徴です。そこには、肩書や役職に基づく、従来型の上司・部下の従属関係は存在しません。あくまでも対等な立場の上での、社員個々の明確な役割分担があるだけです。

ホラクラシーを導入するメリットとしてまず挙げられるのは、組織から人を管理・監督するタスクがなくなり、誰もが自分の役割に集中できるようになる点でしょう。生産性の向上や能力発揮につながるのはもちろん、理不尽な命令や上下関係からも解放され、ストレスが軽減されます。また、意思決定を委ねられることで、社員の仕事に対する責任感や主体性も高まり、ビジネスパーソンとしての成長が促されると期待されています。

とはいえ、日本ではまだ関心を集め始めたばかりの理論ですから、参考文献も少なく、実際に企業が導入し、その実践が紹介されているケーススタディはほとんどありません。現在のところ、具体例として挙げられるのは、アパレル関連の通販サイトを運営する米・ザッポス社の取り組みでしょう。

同社は昨年1月、「社内のすべての役職、階級を廃止し、組織の効率とアウトプットを改善する」と表明、大きな話題を呼びました。しかしこのドラスティックな組織改革は、先進性で知られるザッポス社においても、社内に少なからず波紋を呼び、報道によると、1500人ほどの従業員の14%、約210人がホラクラシーになじめないことを理由に退社を決断した、といわれます。実際、ホラクラシーについては「マネジメントの放棄」「まとまりのないカオス」「階層という規制・監視がなくなると自由の身になった人間のパフォーマンスは低下する」といった批判的な見方も少なくありません。また、管理職のいないフラットな組織の効果は、業種や職種によっても大きく異なるでしょう。

机上の空論で終わるか、それとも新たな組織の形として日本企業にも浸透していくのか――ザッポス社のトニー・シェイCEOは、同社がホラクラシーへの移行を完了するまでには2年から5年はかかると話しています。

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