ホワイトカラー・エグゼンプション
ホワイトカラー・エグゼンプションとは?
「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは、ホワイトカラー労働者を対象に労働時間規制の適用を外し、働いた時間に関係なく、成果に対して賃金を支払う制度のことです。一律に時間で働きぶりを評価することが適当でない労働者の労働時間を自由にし、生産性の向上と効率的な働き方の実現を目指すのがねらいです。同制度の導入をめぐっては、2007年に政府が法案化に動いたものの、「残業代ゼロ」「過労死促進」との批判を受け、国会への法案提出を断念した経緯があります。今回の“再挑戦”では「年収1000万円以上の高度な専門職」に限って導入する方針を決定。来年の通常国会での労働基準法改正を目指しています。
日本の働き方を変える? 新成果給制度
法改正を見越して主要企業は早期導入検討
政府は今年6月に閣議決定した新成長戦略の目玉として、労働、農業、医療などのいわゆる“岩盤規制”の改革に取り組む方針を示しました。労働分野で最も注目されたのが、昨今の働き方の多様化に対応するために、時間ではなく成果に応じて賃金を支払う新成果給制度「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入です。
長時間労働を助長するとして、日本ではこれまで規制されてきましたが、産業競争力を高めるには、時間と成果とが比例しにくいアイデア勝負の仕事をきちんと評価する制度が必要という、経済界などからの提言を受けて方向を転換。政府は「年収が最低1000万円以上の高度な専門職」に限って、労働基準法に定められた1日8時間、週40時間の労働時間規制の適用除外とすることを決定しました。
安倍晋三首相にとっては、世論の反発を受けて頓挫した第一次政権時の反省を踏まえた再挑戦となります。しかし経営側と労働側との隔たりは、依然として埋まっていません。「最低で年収1000万円以上」の高収入者となると、新制度の対象は管理職を含む給与所得者の3.8%に限られますが、連合の新谷信幸総合労働局長は「一部の業務に限って解禁した労働者派遣制度も気がついたら原則自由化されていた」となし崩しの対象拡大を警戒。具体的な制度設計を議論する厚生労働省の労働政策審議会の場でも、年収基準引き上げや職種の絞り込み、導入手続きの厳格化を訴える構えを崩していません。柔軟な制度設計を求める企業側は、逆に年収基準や職種・職務など対象範囲の拡大を主張し、労使の対立が続いています。ちなみに、2014年9月16日~10月6日に『日本の人事部』が会員を対象に実施したWEBアンケート「人事白書トレンドアンケート」で、ホワイトカラー・エグゼンプションに賛成か反対かを質問したところ、「賛成」と「どちらかといえば賛成」があわせて7割弱を占めました。
政府では年内をめどに同審議会で制度設計の詳細を詰め、15年の通常国会での労基法改正、16年春の施行を目指す予定です。こうした国の動きに即応して準備を進め、いち早くホワイトカラー・エグゼンプションの導入を検討し始めた企業も少なくありません。伊藤忠商事は、年収1000万円以上の総合職の大半を制度の対象とすることを想定し、導入を検討しています。商社の総合職の業務は、新規ビジネスの発掘など企画型の業務が中心で、高度な専門知識やスキルが求められるためです。玩具メーカーのタカラトミーも、働いた時間の長さよりヒット商品の多さでの評価がふさわしいと、おもちゃ開発担当への適用を目指しています。富士フイルムやダイキン工業は幅広い職種・部門について、早期の導入を検討。三井物産は営業、企画、為替ディーラーなどの職種で、HOYAも営業、企画、研究開発部門などでの導入を想定しています。
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