コーポレート・シチズンシップ
コーポレート・シチズンシップとは?
「コーポレート・シチズンシップ」(corporate citizen-ship)とは、企業も、企業人も市民社会の一員、すなわち「企業市民」(コーポレートシチズン)であるとして、企業の存立基盤である地域社会やコミュニティーの健全な発展に貢献すること、あるいはそうした企業精神や実際の取り組みを指す言葉です。日本語では、企業市民精神、企業市民活動と訳されます。社会貢献の実践は環境・文化・教育など多方面にわたり、地域住民に向けた施設開放や地域の催しへの従業員の参加、住民活動への支援などが広く行われています。
企業の“人格”を磨き地域に根付く
能力開発やキャリア教育への貢献も
事業立地の観点に立てば、企業にとって地域社会は商圏であり、また製造や物流の拠点として重要な意味を持ちますが、近年はそうした関係性だけでなく、企業も、企業で働く従業員もその地域コミュニティーの一員と捉え直し、“企業市民”として求められる役割や責任を積極的に果たしていこうとする動きが広がりつつあります。「コーポレート・シチズンシップ」と呼ばれる取り組みです。
人間関係において個人がより多くの役割や責任を果たすほど、その人格に信頼が集まるのと同様に、企業も自らのよって立つ地域社会の発展に貢献することで評価と信頼を積み重ね、それぞれの地域コミュニティーにより深く根付いていきます。その意味では、コーポレート・シチズンシップは、企業の人格を形成し磨き上げる取り組みであり、また企業の人格そのものであるともいえるでしょう。
わが国において、こうした考え方自体は決して新しいものではありません。よく知られるのが、近江商人が商売の要諦として伝えた“売り手よし、買い手よし、世間よし”の「三方よし」。三方よしとは、売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手を心の底から満足させ、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならないとする経営理念です。CSR(企業の社会的責任)が厳しく問われる時代背景から、あらためて評価されている先人の知恵であり、欧米発祥のコーポレート・シチズンシップとの思想的な共通性もよくいわれています。
コーポレート・シチズンシップによる社会貢献はいまや環境・文化・教育など多方面に広がっていますが、なかでも最近、注目を集めているのがキャリア教育や能力開発の分野における実践活動です。
コンサルティングファーム大手のアクセンチュアは、事業活動で培った人材のスキルを高めるノウハウを活かし、2015年までに世界各地の50万人が社会参加のためのスキルを身に付けることを目指す「Skills to Succeed」という活動を展開しています。日本ではその一環としてNPOと連携し、若者の就業力・起業力強化の取り組みを実施。これが高く評価され、2014年1月に経済産業省主催の「第4回キャリア教育アワード」の優秀賞を受賞しました。また証券最大手の野村グループでは、小・中学生から大人まで、幅広い世代を対象とした金融・経済教育に90年代から取り組んでいます。同社の社員が全国各地の小・中学校や高校などへ出向き、経済や金融のしくみをわかりやすく教える出張授業を実施。健全な資本市場の育成を目指し、将来の日本経済を担う人材により実践的な、活きた知識と見識を提供しています。
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