コミュニティシップ
コミュニティシップとは?
「コミュニティシップ」とは、世界的な経営学者であるカナダ・マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授が提唱する、組織変革の概念です。「組織は士気の高い人たちのコミュニティ(共同体)になったとき、最もよく機能する」との理論に基づくコンセプトで、組織をコミュニティとして再生し、活性化するためには、現場に関与しない独善的なカリスマ型リーダーシップに依存するのではなく、一人ひとりが自らコミュニティに参画し、個を尊重しながらお互いを結びつけ協働していこうとする意識――コミュニティシップを発揮することが求められます。
コミュニティが崩れた「失われた20年」
カリスマ型リーダーシップが現場を犠牲に
欧米では経営学の大家としてドラッカーと並び称されるヘンリー・ミンツバーグ教授。古典的な経営理論やMBA型のマネジメントを鋭く批判する異端の経営学者は大の親日家で、伝統的な日本型経営のファンであると公言してはばかりません。
教授が日本型経営を理解し支持するのは、日本企業は「コミュニティシップ」を大切にすることで成長を遂げたと考えるからです。かつて日本企業では、経営者は社員を家族のように大切にし、社員は会社へのコミットメントが強く、それが「我々は会社というコミュニティの一員だ」という帰属意識を育んでいました。現場を輝かせるコミュニティシップこそが日本型経営の原動力であり、バブル崩壊後のいわゆる「失われた20年」の低迷はとりもなおさず、日本企業がこのコミュニティシップを失ったことに起因する現象だと、ミンツバーグ教授は述べています。
教授によれば、日本企業に根付いていたコミュニティが崩壊の危機に瀕している原因は、自らの長所を忘れ、米国型のマネジメントスタイルを取り入れたことにあるといいます。トップダウンを強調する米国型経営では、自ら戦略を策定し改革を強力にけん引するカリスマ的なリーダーシップが評価されますが、そうしたリーダーはともすると一般の従業員の数百倍という法外な報酬を得ることで、自らを特別な存在であると見誤りがち。現場への関心を失い、コミュニティから乖離(かいり)してしまいやすいのです。一方で、米国流の成果主義を導入した結果、一般社員も殻に閉じこもり自分の損得しか考えないように――そうして、日本企業のコミュニティは損なわれていきました。
人々が個を尊重しながら協力して働き、組織をよりよい場とするために互いを結びつけようとする意識――コミュニティシップを形成するのは、現場から乖離(かいり)したトップマネジメントのカリスマ型リーダーシップではありません。コミュニティシップは、現場に配慮しながら人を励まし、巻き込んでいく“ほどよい”リーダーシップの下でこそ発揮されるからです。とはいえ、経営層はその立場上、本来ならばより密接に関与すべき現場と一定の距離をとらざるを得ません。ミンツバーグ教授はそうした“トップの孤独”も認めつつ、その上で組織をコミュニティとして再生し、活性化するためには、現場により深く関与しながら全社的な視点でのマネジメントを担うミドルマネジャー、中間管理職層の役割が極めて重要になると強調しています。
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