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【ヨミ】プレゼンティーイズム プレゼンティーイズム

「プレゼンティーイズム」(Presenteeism)とは、従業員が出社していても、何らかの不調のせいで頭や体が思うように働かず、本来発揮されるべきパフォーマンス(職務遂行能力)が低下している状態のこと。日本語では「疾病就業」と訳されます。頭痛や胃腸の不調、軽度のうつ、花粉症のアレルギー症といった、つらくても無理をすれば出社できる程度の疾病が原因で発生するプレゼンティーイズムによって、全米では年間約1500億ドルの損失が出ているといわれます。
(2012/4/23掲載)

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プレゼンティーイズムのケーススタディ

「勤勉は美徳」が健康経営を脅かす!?
病欠より、無理に出社して損失拡大

病気や体調不良などにより従業員が会社をたびたび、あるいは無断で欠勤することを「アブセンティーイズム」(absenteeism)と言います。プレゼンティーイズムは、このアブセンティーイズムに「プレゼント(present)=出席している」を組み合わせて考案された造語です。これまで企業の労務管理では伝統的にアブセンティーイズムによる生産性の低下が問題視されてきましたが、最近は、出社してはいるものの業務に身が入らないプレゼンティーイズムのほうが、組織全体としての損失は大きいことがわかってきました。

企業側から見れば、賃金を払っているのに、それに見合ったパフォーマンスが得られていないという状況で、たとえば風邪だと少なくとも4.7%、花粉症だと4.1%仕事の効率が落ちるといわれています。その程度の損害なら目くじらを立てなくても…と思う向きもあるでしょうが、問題は個人の生産性の低下だけではありません。プレゼンティーイズムがより深刻なのは、それが周囲に影響を与えるからです。

ただの風邪でも、無理に出社すれば職場のほかのメンバーにうつしてしまう恐れがあります。そうなれば、組織全体のパフォーマンスに支障を来しかねません。また、無理に出社を続けて症状が悪化すれば入院や長期休暇といった事態に陥り、医療コストがかさみます。花粉症などの症状も甘く見るのは危険です。目の痒みや鼻水がひどく頭がボーっとしている状態では、会議や商談に臨んでも集中できず、有意義な議論や提案は望めません。特に、重大な意思決定を行う立場や顧客との慎重なコミュニケーションが求められる職種では、プレゼンティーイズムによる組織の損失リスクは大変大きいと言えるでしょう。

とはいえ、日本のビジネスパーソンにとって「勤勉は美徳」であり、多少の風邪なら体調不良を押して出社するという人は、決して珍しくありません。現に、気象情報会社のウェザーニューズが行った「日本の風邪事情」調査によると、日本人が風邪で熱が出て会社や学校を欠席するボーダーラインは平均で37.9度。38度まで上がらなければ、休もうとはしないことがわかっています。病気欠勤=アブセンティーイズムは日常の職場生活の中でさほど頻繁に起きることではありませんが、プレゼンティーイズムは日頃からあたりまえのように発生しているのです。

人事管理に詳しい日本総合研究所の高橋敏浩上席主任研究員によれば、最近は結果偏重の成果主義への反省から、プロセスにおける貢献度やチームとしての成果を重視する新しい人事評価制度を導入する企業が増えているため、突発的な休みが取りにくくなったとのこと(日本経済新聞2012年1月28日付より)。

“健康経営”の実現に向けて、アブセンティーイズムだけでなく、プレゼンティーイズムという目に見えにくい労働損失をいかに抑えるか――雇用者と働き手双方の意識改革が今後の大きなテーマになりそうです。

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