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傾聴とは|意味とビジネスにおける使い方やトレーニング方法

傾聴とは、相手のいうことを否定せず、耳も心も傾けて、相手の話を「聴く」会話の技術のこと。心理学などの分野では以前からよく聞かれる言葉でしたが、近年はビジネスの場でも重要視されるようになり、傾聴の技術を身に着けたいというビジネスパーソンが増えています。

更新日:2024/01/30

1. 傾聴とは?

「傾聴」とは、相手のいうことを否定せず、耳も心も傾けて、相手の話を「聴く」会話の技術を指します。

「ただ話を熱心に聞くだけなのでは?」と思われるかもしれませんが、意識すべきなのは、相手に共感し、信頼していると示すこと。経済産業省が「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事するうえで必要な基礎的な能力」として提言している「社会人基礎力」の要素にも、「傾聴力」が含まれています。ここからは、実際に傾聴を行う際の注意点を見ていきましょう。

傾聴のやり方、ポイント

傾聴ができるようになると、信頼が生まれ、社内の人間関係がスムーズになるといわれています。傾聴のポイントは、「耳できく」「目できく」「心できく」の三点です。

(1)耳できく:相手の言葉によるメッセージに最後まで耳を傾け、理解する
(2)目できく:相手の言葉以外の行動(姿勢、表情、しぐさ、声の調子など)に注意を払う
(3)心できく:相手の言葉の背後にある感情も受け止め、共感を示す

(1)耳できく:相手の言葉によるメッセージに最後まで耳を傾け、理解する

傾聴では相手のいうことを、偏見を含まずに聞き、自分の価値判断で評価せず、否定的にならないことが求められます。そのため、相手が沈黙したり、考えていたりする場合などは、できる限り待つ姿勢が望ましいとされています。「耳できく」とは、相手が話すのを邪魔せず、理解することを意味しています。

(2)目できく:相手の言葉以外の行動(姿勢、表情、しぐさ、声の調子など)に注意を払う

傾聴で重要なのは、相手の表情や声の調子なども同時に見ることです。相手が本音で語っているかどうか。語っていないのであれば、どのような態度でのぞめばいいのか。相手のことを本当に理解しようと思えば、このような非言語的コミュニケーションにも配慮しなければなりません。

(3)心できく:相手の言葉の背後にある感情も受け止め、共感を示す

言葉の裏側の気持ちまでも推測し、受け止め、共感を示すことも必要です。部下は上司に対して、会社の愚痴を言いにくいもの。そのため、「いい会社だと思っています」「楽しく仕事しています」など、当たり障りのない言葉しかいわない場合もあります。傾聴では、本心はどうなのかを推測し、それを受容・共感することが求められます。

傾聴を職場に取り入れるメリット

普通の「聞く」とは異なる「傾聴」ですが、どんなメリットがあるのでしょうか。

(1)信頼関係が構築されやすくなる

人は自分の悩みを話しているときに、相手からいちいち反論されると、「もうこの人には相談したくない」と考えるようになります。一方、傾聴では共感をもって話を聞くので、相談者の心をすっきりさせる効果があります。

ある人に話を聞いてもらうことで悩みが解消し、心がすっきりしたなら、また「あの人に話を聞いてもらいたい」と思うでしょう。傾聴では、このような安心感を相手に与えることを目的としています。そういった状況になれば、職場の同僚や部下、上司との間に信頼関係が築きやすくなります。

(2)業務が円滑に進むようになる

信頼関係が構築されていないのに、あれこれ命令されると、人は嫌な気持ちになるものです。一方、お互いに信頼関係が成り立っていると、急な仕事を与えられても「あの人に頼まれたのならやろう」という前向きな気持ちで仕事に取り組むことができます。

このように信頼関係の構築は、仕事を円滑に進めていく上で大変重要ですが、その際に役立つのが傾聴なのです。「今の言葉は、相手を傷つけていないだろうか」といった反省の機会にもつながるでしょう。

続いて、どうすれば傾聴の技術を身につけられるのかを解説していきます。

2. 傾聴の技術とトレーニング方法

傾聴には技術が必要なため、準備せずに行うと、自身にも心理的なストレスがたまることになりかねません。ここでは、傾聴のトレーニング方法を紹介しますが、まずは、トレーニングする際の注意点を見ていきましょう。

傾聴をトレーニングする際の注意点~他言しないことと、自分の責任の見極め~

傾聴をする際に注意すべきなのは、「(1)話してくれたことは、基本的に個人情報として、他言はしないこと」そして、「(2)相手の話に対する自分の責任がどこまでかを見極めること」です。

相手が「あなただから話したことなのに、なぜ他人に言ってしまったのか」と思ったとしたら、信頼関係の構築は難しくなります。しかし、「会社のお金を使いこんでしまった」などと打ち明けられたとしたら、「私だけに話してくれたのだから、誰にも言わないでおこう」というわけにはいきません。

傾聴する際には、「他言はしない」という原則を理解しておくと同時に、自分がどの程度の話なら責任を負うことができるのか、また、自分の手に負えない話を聞いたときにはどうするのかを考えておくことが重要です。

傾聴の技術の種類~話が続かなくなったときは「繰り返し」や「言い換え」を~

傾聴の基本的な技術として、「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」などがあります。話しを聞く際に「うなずき」や「あいづち」を入れることで、相手の話をしっかりと聞いていること、その内容に共感していることを伝えることができます。

言葉に詰まった際に役に立つのは「繰り返し」や「言い換え」です。

「繰り返し」

「あなたは〇〇が好きなのですね」と相手の発言を繰り返すことで、相手の話を聞いているという印象を与え、さらなる会話を引き出します。

「言い換え」

「あなたが〇〇と言っていたことは、つまり□□ということですよね?」と相手の言葉を言い換えて、話題を膨らませます。

傾聴を行っていると、相手に共感をしようという意識が強くなり、会話が行き詰ってしまうこともありますが、そんなときは、「繰り返し」を使ってみましょう。傾聴の目的は、自分の話題の豊富さを見せつけることではなく、相手から話を引き出すこと。「繰り返し」や「言い換え」は、一種の確認作業ですが、そこから話題を膨らますこともできます。

傾聴のトレーニング方法

傾聴の能力を向上させるには、トレーニングを重ねるしかありませんが、まずは話しやすい環境とはどういう状態か、どのような身振りや手ぶり、表情なら話しやすいかなど、自分自身を点検してみましょう。

また、「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」という四つの技術を使い分けることと、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのようにした」の5W1Hを意識しましょう。

会話に行き詰ってしまった場合などは、5W1Hのうち、どれかを聞き逃していないかと考えることも効果的です。その上で「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」などの技術を使用すれば、傾聴による会話がスムーズに進むでしょう。

3. 傾聴を取り入れてマネジメント力をアップ

「傾聴」は、カウンセリングやコーチングなどでよく用いられており、社会人の基本的な能力にも数えられています。相手の話を聞いて、そこに自分の意見を付け足すという日常的なコミュニケーションとは異なり、「あいづち」や「繰り返し」などの手法を用いて、話し手自身に気づきをうながしたり、共感を示したりすることで仲間意識を培うといった狙いがあります。異なる価値観を受入れ、仕事を円滑に進めるためにも、傾聴の技術を身につけてみてはいかがでしょうか。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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