有給教育訓練休暇
有給教育訓練休暇とは?
「有給教育訓練休暇」とは、就労中の労働者が教育訓練を受けるために、一定期間有給で職場を離れることを認める休暇制度です。国際労働機関(ILO)は、1974年の第59回総会で、同制度を労働者の権利として保障し、その付与に向けた政策の策定・運用を加盟各国に求める「有給教育休暇に関する条約」を採択しましたが、日本は現在もこれに批准していません。
義務ではないため導入企業は1割以下
取り組みを促す助成金制度に注目を
フランスやベルギー、スウェーデン、イタリアなどでは、すでに教育訓練休暇の実施が法制化されていますが、日本では、職業能力開発促進法第10条が“必要に応じて”付与することを求めているだけで、まだ義務づけられてはいません。そのため、同制度を導入している企業はごく少数にとどまっています。
厚生労働省が民間企業の教育訓練制度の実施状況などを明らかにするためにまとめている「能力開発基本調査」によると、2009年度調査で教育訓練休暇制度を導入している企業の割合は全体の1割にも満たない7.6%(前年度は6.7%)。事業所の規模別にみると、従業員1,000人以上の事業所で9.6%と最も多いものの、各規模間の差はそれほど顕著ではありません。大企業、中小企業を問わず、各企業の取り組みは低調なままです。
教育訓練休暇制度の義務化には至っていないものの、国は、教育訓練の実施や従業員の自発的な能力開発に対してさまざまな助成措置を設けています。その一つが「自己啓発助成給付金制度」。これは、有給教育訓練休暇の付与や受講の費用援助を行う企業に、その支援費や賃金の一定割合を助成する制度です。
同様の助成措置として、職業訓練などを段階的・体系的に実施する事業主に対し、独立行政法人雇用・能力開発機構が支給を行うキャリア形成促進助成金の一種、「職業能力開発支援促進給付金」があります。助成金の受給対象となるのは、従業員の自発的な能力開発を支援する諸制度を就業規則または労働協約に定め、職業能力開発休暇(前出の職業能力開発促進法が規定する有給教育訓練休暇に相当)の付与や従業員の能力開発にかかる経費の負担を行う事業主。ただし「職業能力開発推進者を選任し、都道府県職業能力開発協会に選任届を提出していること」や「労働組合などの意見をきいて事業内職業能力開発計画を作成していること」などの要件を満たす事業主で、あらかじめ雇用・能力開発機構都道府県センターの受給資格認定を受けていることが前提となります。従業員が自発的な能力開発を行う際には、公的および民間の教育訓練機関などが実施する訓練コースを受講。総訓練時間の8割以上を受講していないと、経費、賃金とも助成の対象になりません。
従業員が教育訓練を受けることの必要性は理解していても、企業、とりわけ中小規模の事業主にとっては、大きな負担となります。こうした助成制度の活用は、慎重に検討するべきでしょう。
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