ゴーレム効果
ゴーレム効果とは?
「ゴーレム効果」とは、他者からの期待や評価が低いことによって、実際のパフォーマンスが低下する現象。米国の教育心理学者であるロバート・ローゼンタール氏により提唱されました。ゴーレム効果は、低評価を受けている本人のパフォーマンスが下がる「絶対的ゴーレム効果」と、低評価を受けている集団に属することでパフォーマンスが下がる「相対的ゴーレム効果」の二種類に分かれます。この効果は心理学上の「予言の自己成就」の一例で、人材育成やマネジメントでも重要な概念です。
なかなか成長しない部下
その原因は周囲の「期待」にある
「ゴーレム」とは、ユダヤ教の伝承などに登場する空想上の巨人のこと。ゴーレムは泥や粘土で作られており、動かすには、額にヘブライ語で「真実」を表す「エメット(אמת)」の単語を刻みます。反対にゴーレムを無力化するときには、額の文字を一文字消し、「死」を表す「メット(אמ)」とします。ゴーレムは創造者の期待によって、動くかどうかが定められるのです。ここから派生して、周囲の期待によってパフォーマンスが下がる現象がゴーレム効果と名付けられました。
職場ではどのようなゴーレム効果が見られるのでしょうか。例えば、マネジャーが特定の部下に対して関心や期待を寄せない場合、結果としてその部下は自信を失い、パフォーマンスも低下してしまいます。
メカニズムは次の通り。上司が「この人には期待しない」「この人は能力が低い」と思っていると、知らず知らずのうちに行動に表れます。例えば、責任ある役割を任せなかったり、フィードバックを与えなかったりすると、他の部下との温度感に差分が生じます。結果として、その部下は成長する機会を失い、自己効力感も失い、パフォーマンスが低下してしまうのです。
類似の概念に「ピグマリオン効果」があります。ゴーレム効果が、期待をかけないことによってパフォーマンスが下がる現象だとすれば、ピグマリオン効果は逆。高い期待を寄せることによって、パフォーマンスが上がる現象のことを指します。
転職や異動によって、急に活躍するようになった人を見たことはないでしょうか。仕事の合う・合わないもありますが、「期待されていなかった人が、期待されるようになる」など、周辺の「期待」が変わることでパフォーマンスに好影響をもたらすケースは少なくありません。
ゴーレム効果を防ぐためには、マネジャーやリーダーがメンバーに対して期待感を寄せることが重要です。また、部下の能力を引き出すコミュニケーションを心がけなければなりません。
とはいえ、マネジャーも人間です。部下がミスを繰り返したり、やる気が感じられなかったりして、葛藤することもあるでしょう。留意したいのは、自分ではフラットなコミュニケーションを取っていると思っていても、ちょっとした発言や態度で伝わってしまうことです。否定的なフィードバックをするときこそ肯定的なコメントも交えたり、「期待しているからこそ改善してほしい」という思いを伝えたりして、部下の成長を支援することが大切です。
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