タレント・インテリジェンス
タレント・インテリジェンスとは?
「タレント・インテリジェンス」とは、企業が人材戦略に関する意思決定をするために、人材データやAIなどのテクノロジーを活用する手法のこと。適切な人材登用と管理を主な目的としています。社内外の人材データを分析することで、効率的かつ最適な採用活動を行い、企業の競争力を強化します。以前からHRテクノロジーの手法の一つとして存在していましたが、近年の労働市場の複雑化により、再び注目されています。
「人手不足」と「人員削減」のはざまで
再注目されるタレント・インテリジェンス
企業の4大経営資源と言われる、ヒト、モノ、カネ、情報。成熟社会において、「ヒト」は特に重要な経営資源といえます。従業員がどのようなスキルと経験を有し、どんな価値観や目標を持っているかによって企業の未来は変わります。その重要性を理解していても、ヒトの力を最大化するための打ち手に窮している経営者・人事担当者は多いのではないでしょうか。
「タレント・インテリジェンス」とは、人材データを分析することで、意思決定のための知見を得る手法。例えば、「離職の可能性が高い候補者タイプを割り出して、採用の参考にする」「社内の昇進や給与に属性による偏りがないかを確認する」「従業員の経験と勤務地を考慮して報酬を設定する」など、人材データを用いることでより効率的・合理的な判断ができるようになります。
類似する言葉として「ピープル・アナリティクス」があります。人材獲得や定着率の向上に役立つ点で共通していますが、ピープル・アナリティクスは社内のタレントマネジメントの高度化が主な目的。既存の従業員のライフサイクルに焦点をあて、どのような要因がパフォーマンス、エンゲージメント、生産性、離職などに影響するのかを解明します。一方、タレント・インテリジェンスは社内だけでなく、社外の人材データにも着目。市場全体の動向を察知し、優秀な人材の獲得を目指します。
タレント・インテリジェンスが注目されている背景には、コロナ禍、DX化、生成AIの台頭、採用チャネルの多元化など、近年の複雑化する労働・採用市場があります。コロナ禍や原料費高騰などで人件費を削減したいベクトルと、変化に対応するために人員を補充したいベクトルという、矛盾をはらんだ二つのニーズにつながっているのです。
採用手法は従来、求人広告が主流でしたが、今はエージェントやSNSなど経路が増えており、企業側から潜在層へアプローチすることも珍しくなくなりました。求人広告への対応だけなら数十人から数百人程度の選考で済んでいましたが、潜在層にまでアプローチするとなると、母集団の桁が変わります。そうなると、データに基づいたプロセスを導入するしかありません。
HRテクノロジーが興隆した初期と比べると、最近はタレント・インテリジェンスが「できること」の範囲が拡大。生成AIなどの技術的進化とともに、採用だけでなく、コア人事にも影響範囲が拡大してきています。
少子高齢化で労働力は減るばかりです。データに基づいた意思決定をすることで、厳しい採用競争を勝ち抜くための次の一手が見えてくるかもしれません。
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