エビングハウスの忘却曲線
エビングハウスの忘却曲線とは?
「エビングハウスの忘却曲線」とは、学習後の時間経過にともなう記憶の減少パターンを表した曲線のこと。1885年にドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが、新しい情報を覚えた後、時間とともに記憶がどのように変化するかを実験的に調査しました。結果として導き出された曲線は、学習した1日後には74%、1週間後には77%、1ヵ月後には79%を忘れてしまうことを示しました。一方、情報を定期的に復習することで効率的に再び記憶できることも示唆しています。
忘れても、次はより早く覚えられる!
研修は「忘れる」を前提に設計すること
リスキリングの重要性はよくわかっていても、実践するとなるとなかなか難しいもの。いざ勉強を始めても、若いときのように記憶できなくて困難を感じる、という人も少なくありません。従業員に学び続けてほしいと願う企業は、従業員の「学んでも忘れる」という悩みにどう向き合えばよいのでしょうか。
エビングハウスの忘却曲線は、「忘れやすさ」に着目したメカニズムとして知られていますが、大事なポイントがもう一つあります。それは、一度忘れても、次に記憶するときは記憶の効率が上がっていること。エビングハウスはこれを「節約率」で説明しています。「節約率」は、忘れた知識を再び学習するときに「どれくらいの時間を節約できるか」という考え方です。
たとえば、学習から20分後には42%を忘れていますが、そのときの節約率は58%。つまり、最初の記憶に10分かかったとしたら、再び記憶するのにかかる時間は4分12秒(58%)です。早く復習すれば、それだけ早く記憶を復元できます。
エビングハウスの実験で使われたのは、意味をなさない文字列でした。記憶する情報にストーリー性があったり、関心の高い内容だったりする場合は、忘却のスピードは緩やかになると考えられています。
これを教育・人材育成に生かすために、研修担当者は「一度の研修で知識が定着することはない」ことを知っておく必要があります。「20分後には42%を忘れている」ことを加味して、重要な情報は何度も反復しながら進めたり、フォローアップ研修を実施したりすることが重要です。また、講師が一方的に話す講義形式は記憶に残りづらいと指摘する論文もあります。受講者にもアウトプットさせるインタラクティブな形式や、課題解決型のアクティブ・ラーニングを取り入れることも有効です。
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