社会的証明の原理
社会的証明の原理とは?
「社会的証明」とは、自分の考えよりも多数派の他人の考えを正しいと判断し、意思決定をすること。行動経済学や社会心理学において用いられる用語で、1984年に米国アリゾナ州立大学 名誉教授のロバート・B・チャルディーニ氏の著書『影響力の武器』の中で提唱されました。社会的証明は、明確な答えがなく曖昧な状況でよく見られる現象です。人は何かを選択するとき、失敗したくない、正しい行動を取りたい、という欲求を持ちます。「みんなと同じことをしよう」と意識しなくても、無意識的に多数派の影響を受けているのです。
社会的証明の影響力が増す現代
「みんなの意見」に同調しすぎるとどうなる?
あなたは、昼休みに弁当を買いに行きました。初めて行く弁当屋で、どれがおいしいのかはわかっていません。陳列されているAの弁当は、まだまだ十分に数がありそうです。その横にあるBの弁当は、残り一つ。あなたはどちらを手に取りますか。
多くの人はBを手に取るのではないでしょうか。理由は、「みんなが買っている」なら「失敗しない」はずだから。これは社会的証明が影響しています。
新しいテクノロジーが誕生したときの人々の行動にも、社会的証明の影響が見られます。例えば、NFTやChatGPTが出始めたとき。すぐには評価せず、専門家や周囲の評価を待ってから自分のスタンスを決めた人は多いのではないでしょうか。
現代は、社会的証明の影響力が増しています。その理由の一つは、SNSなどで他人の考えに触れやすくなったこと。また、タイムパフォーマンスという言葉の広まりからも分かるように、短時間でジャッジを迫られるようになり多数派の意見に流れやすくなったことも、一因と考えられます。
「社会的証明」は「ソーシャルプルーフ」とも呼ばれ、「バンドワゴン効果」という別の名も有しています。バンドワゴンとは、パレードで使われるような、音楽バンドを載せた飾り付きのワゴン車のこと。18世紀の米国では、政治家がバンドワゴンに乗って選挙活動をしていました。支援者がワゴンを追随し、行列ができていたことから、バンドワゴンは「世の中で流行しているもの」の比喩的表現になりました。
社会的証明はよくマーケティングに活用されますが、組織開発にも活かすことができます。例えば、変革を行う際、リーダーやハイパフォーマーなど、周囲に影響を与えやすい人材をプロジェクトメンバーに加えることで、変革へのポジティブな感情が社内に波及しやすくなります。
ただし、社会的証明を活用する際は注意が必要です。多数派の意見をよしとすると、自己決定権をないがしろにしたり、マイノリティグループの考え方を軽視したりするなど、ダイバーシティを損なう方向に向かうこともあるからです。また、サクラを仕込むことにより、社会的証明はねつ造することが可能なので、注意しなければなりません。
自分の頭で考えないと容易に流されてしまう世の中では、社会的証明に頼りすぎることなく、自分で考える癖をつけることが重要です。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。