職務特性モデル
職務特性モデルとは?
「職務特性モデル(Job Characteristics Model)」とは、仕事の特性が人のやる気を左右し、核心的な仕事に従事する人ほど、モチベーションが上がりやすいことを説明した理論のこと。米国ハーバード大学の組織心理学者J・リチャード・ハックマン氏と、経営学者グレッグ・R・オルダム氏によって1976年に提唱されました(その後、1980年に内容を更新)。程度に個人差はあるものの、人はおもしろい仕事に関わっていると感じると、モチベーションが上がりいきいきと働くことができるとされています。
仕事をつまらなく感じるのはなぜ?
モチベーション向上に必要な五つの要素
職務特性モデルでいう、従業員のやる気を高める「核心的な仕事」とは何でしょうか。この理論では、次の五つの特性がモチベーションを高めるために重要な要素と考えられています。
1.技能多様性(Skill variety)
一つのスキルしか生かせない単調なタスクではなく、複数のスキルを生かせる仕事であること。単純作業ではなく、企画を立てたりプレゼンをしたりと、複合的なスキルを発揮していると人はモチベーションが上がります。
2.タスク完結性(Task identity)
工程の全体像を理解した上で、初めから終わりまでの一部始終に関わることができること。例えば、広告のキャッチコピーを考えるとき、広告の目的やその後の結果を全く知らされずにキャッチコピーを作っても、やりがいは生まれにくいもの。上流から下流までの全体像を理解し、意見することができる環境でキャッチコピーを考えられると、その役割の意味を感じられるようになります。
3.タスク重要性(Task significance)
関わっている仕事を「重要だ」と思えるかどうかも、モチベーションを左右します。電話を受ける仕事一つとっても、「ただの雑用」と捉えるか「会社の印象を左右するフロント役」と捉えるかで自己有用感が変わります。
4.自律性(Autonomy)
裁量度が高く、自分のやり方で自律的に仕事を進められること。自分で決める裁量があるのか、それとも上司に細かいところまで指示されるのかによって、仕事に対するやる気の度合いは違ってきます。
5.フィードバック(Feedback)
自分が取り組んだ仕事の成果を確認できること。フィードバックというと、一般的には上司や顧客からの反応・反響のことを意味しますが、ここでは「成果」や「結果」を指します。自分が関わったことでどのような成果が上がったかを可視化できることが、モチベーションアップには大切です。
五つの特性が満たされると、有意義な仕事をしている実感、仕事への責任感、仕事の結果の知識を得ることがきます。これらは「重要な心理状態」であり、モチベーションが上がる要素です。ただし、個人のパーソナリティや状況によって、その程度は異なるのも特徴です。
最近は、ハックマン氏・オルダム氏の職務特性モデルと異なる見方をする論文も登場。職務が先にありモチベーションが変数となる従来の考え方に対し、クレッグ・C氏とスペンサー・C氏の2007年の論文では、信頼、他者からの能力に対する認知、自己効力感が変数として加えられています。また、職務も固定的なものではなく、柔軟で調整可能なものとみなされています。
「ジョブクラフティング」(=従業員が自ら仕事に対する認知や行動を変えることで、仕事をやりがいのあるものへと捉え直す手法)が注目される昨今、参照されるモチベーション理論も変化していると言えるでしょう。
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