社会的交換理論
社会的交換理論とは?
「社会的交換理論」とは、人は有形・無形のさまざまなモノ・コトの交換によって関係性を形成・維持・発展していくという理論。人と人との関わりは、それぞれが有している資源の交換とみることができ、例えば、同僚を手伝うなどの行為もこの理論で説明可能です。提供したり受け取ったりするのは必ずしも物質的なモノだけではなく、情報などの無形物や、感謝や尊敬といった情緒的な反応も含まれます。社会的交換理論は経営学や社会学などさまざまな領域で研究されており、組織開発の文脈でも注目されている理論です。
「交渉型」と「報恩型」
職場における二種類の助け合い
私たちの生活は、リソースを交換し合うことで成り立っています。お金を払って商品・サービスを買い、技術や労力を売って賃金を得る。また、お金を介さない助け合いもあります。例えば、学校ではノートを貸し借りし、会社では有給中の同僚の代わりに業務を担うといった行為があげられるでしょう。
しかし、これらも無償で提供されるわけではありません。誰かを助けることは、自分の資源を分け与えること。与えっぱなしで、損をしている気分になったことがある人も多いのではないでしょうか。
世の中のあらゆることは交換で成り立っています。相手からどのような報酬や代償をもらえるかによって、自分が提供するものの質を変えたいと思うのも無理はありません。だからこそ「事前に交渉する」というアプローチが発生します。
交換には二つの種類があります。一つ目は「交渉型」の交換。商取引や人材採用・昇進などの労働交渉がこのタイプに該当します。「これだけの労力を提供する代わりに、これだけの報酬をください」と事前に約束するのです。交渉型のメリットは、双方が合意した条件で交換が行われるため、公平性が確保されること。逆にいえば、交渉した範囲内でのリソースしか提供されません。そのため、自身の利益を優先して、相手の利益や関係性への配慮が不足することもあります。例えば、任務があらかじめ決まっているジョブ型で採用された人が、任務外の領域では「助け合い」に参加しないというデメリットが考えられます。もう一つは「報恩型」の交換。明確に約束していなくても「この人の頼みは断れないから助ける」というタイプの交換です。お世話になった上司、懇意にしているクライアント、友人や家族間での交換が該当します。一時的に損をしても中長期的にバランスが取れていればよく、関係性の維持が優先されるなど、柔軟性が高いタイプです。提供する側に負担が偏るといったデメリットはありますが、関係性の維持や向上がメリットだとすれば、問題はないでしょう。
事業に雇用、会社のあらゆる活動はリソースの交換で成り立っています。社会的交換理論の特徴を知ることは、効果的な人材管理、チームビルディング、顧客やパートナーとの関係性の発展などにつながるでしょう。
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