ジェンダードイノベーション(Gendered Innovations)
ジェンダードイノベーション(Gendered Innovations)とは?
「ジェンダードイノベーション」とは、ビジネスや研究開発といった場において、性差を考慮して科学的な分析を行い、イノベーションを創出すること。2005年に米国スタンフォード大学 歴史学部 教授のロンダ・シービンガー氏によって提唱されました。「ジェンダード(gendered)」には「性差に着目する」という意味があります。生物学的差異や社会的差異を考慮することで、これまで見落とされてきた事象を発見したり、新たな市場を生み出したりする可能性が高くなります。欧米で始まったジェンダードイノベーションですが、昨今は日本でもこの考え方を研究開発や政策に取り入れようとする動きがあります。
ジェンダー平等はなぜ必要?
男性中心社会に潜むさまざまなリスク
ジェンダー平等が実現されないと、何が起こるのでしょうか。男女の偏見や差別が根強く残る社会は、持続可能性が下がります。また、自由や人権が制限されるだけでなく、生命が脅かされることさえあります。
たとえば、医薬品の臨床実験では、男性や動物のオスが被験者となることが一般的。女性は月経による体調の変化があるため、薬の影響がわかりづらく臨床実験では敬遠されるのです。その結果、女性にだけ悪影響を及ぼす薬が開発されたこともあります。米国では、1997年から2000年までの間に8種類の薬が撤退しました。
自動車のシートベルトでも同様のケースがあります。開発段階で男性のダミー人形ばかりを衝突実験に使用。その結果、完成した商品は女性ドライバーの重症率が高かったり、胎児の死亡率が高かったりするなど、安全性に問題があることが明らかになりました。
日本はGDP(国内総生産)世界3位の経済大国でありながら、ジェンダー平等においては遅れをとっています。世界的に低いSTEM分野(科学・技術・工学・数学の理系分野)の女性比率を見ても、日本はOECD諸国の中でも最も低い水準。女性比率が高まれば、より安全で高品質な製品が生まれるかもしれません。
リスクマネジメントの観点だけでなく性差に着目することで、新たな市場が生まれることや、アクセシビリティ(便利さ、利用のしやすさ)が向上することもあります。たとえば、農業で使用される農機具は男性の身体に合わせて作られることがほとんどでした。しかし、農業従事者の4割は女性。女性でも使いやすいよう、開発にユニバーサルデザインの視点を取り入れることで、ユーザーフレンドリーな製品が誕生しました。
昨今は、これまで女性の視点が乏しかった企業が、女性従業員を増やしたりジェンダーを学んだりすることで、ビジネスや組織風土の改革につなげる「企業内ジェンダードイノベーション」も進められています。既存のやり方を手放し、性差を踏まえて研究開発をすることは、人々の仕事環境や健康状態などの改善につながります。国際的な競争力を維持する上でも役立つでしょう。
すでに完成形を迎えたように思われるものでも、サステナビリティやジェンダーの視点で捉え直すことで、新たな発見が生まれるかもしれません。
【参考】ジェンダード・イノベーション~性差観点の抜け漏れは人命にも影響~|株式会社日立コンサルティング
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