マタイ効果
マタイ効果とは?
「マタイ効果」とは、優れた人物や組織への好意的な評価が、さらなる成功につながりやすくなる現象のこと。1960年代に米国の社会学者ロバート・K・マートン氏によって提唱されました。マタイ効果は、マタイ書の「持っている者にさらに与えられ、持っていない者からは取り上げられる」に由来します。社会的な評価が強く影響する場でよく見られ、成功者は初期の名声によって信頼や次のチャンスを得やすくなります。一方で、初期の段階で不運に見舞われた人物は、その後成功を収める可能性が低くなる傾向にあります。
「スター社員」にはよりチャンスが巡ってくる
成長機会の公平性をどう捉える?
キャリア採用を行うとき、どのような候補者なら「優秀」と感じるでしょうか? 難関大学を卒業していること、前職で得ていた高い年収、表彰された実績など、多くの採用担当者は、候補者の過去の“成功”を根拠に未来の活躍を期待しているのではないでしょうか。
「持てるものはますます富む」というマタイ書の寓話からなる「マタイ効果」は、ビジネスの場をはじめ、芸術や科学などの分野でもよく見られます。例えば、音楽業界。初期にヒット曲を出して有名になったアーティストは、その後も支持され、成功し続ける傾向にあります。しかし、初期で失敗したアーティストは注目されることなく、その後も成功とは言えないキャリアが続く可能性が高いのが実状です。
企業活動においても、誰もが知る有名な企業は、社名やイメージが消費者に与える影響が大きく、顧客からの信頼を得やすくなります。一方、認知度の低い企業やブランドはそうはいきません。信頼を獲得するには時間も資源も必要ですが、早々に成功を収めなければ経営難に陥り、企業の存続は難しくなってしまうでしょう。
マタイ効果では、初期の不平等な資源分配がしばしば問題視されます。例えば、「スター社員」と「それ以外の社員」は、入社した段階では大きな差がなかったとします。しかし入社後にどの部署に配属されるか、上司が誰なのかによって、同じ新入社員でも仕事を通じて経験する内容が異なり、成長の度合いが違ってきます。すると、スター社員として抜てきされる人材と、そうでない人材とに分かれるようになり、「スター社員」となった人材はまわりから称賛され、さらに活躍を重ねていく……。こうした初期の不平等な差が大きく未来へ影響するのが、マタイ効果の問題点です。
一方、一部の人材をスター社員として扱うのではなく、すべての人材を平等に扱うアプローチもあります。マルコ効果と言い、「公平は一部の成功者の不満を引き起こすかもしれないが、より多くの人に満足をもたらし、満足の総量は後者のほうが大きい」という考え方です。スター社員ばかりに賞賛やチャンスが集中すると、その他の人たちのモチベーションは低下してしまいます。現在はより多くの従業員に学び続けてもらうことが必要と考える企業が増えているため、マルコ効果的アプローチも重要だといえるでしょう。
一部のスター社員を育てるマタイ効果的アプローチと、メンバーを平等に扱うマルコ効果的アプローチ。自社の目指す成長のあり方にはどちらが最適か、考えてみてはいかがでしょうか。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。