ダブルバインド
ダブルバインドとは?
「ダブルバインド」とは、二つの矛盾した要求や情報を受け取ることで、どちらの選択肢を選んでも罪悪感や不安感をおぼえるような心理的ストレスのある状態のこと。米国の精神科医グレゴリー・ベイトソン氏によって提唱された理論で、日本語では「二重拘束」と訳されます。例えば上司に「わからないことはなんでも聞いて」と言われたので質問したところ、「それくらい自分で考えて」と言われたというように矛盾した状況を指します。ダブルバインドは職場や家族間のコミュニケーションでよくみられますが、受け手の意思決定を困難にさせるため注意が必要です。
理不尽な上司のダブルバインドが
パワハラと判断されることも
上司から「AとBという二つの仕事を任せたい。とくにAは優先して取り組んでほしい」と言われたので、Aを優先したにも かかわらず、翌日「Bはどうなった?」と尋ねられ、進捗がないことを叱られたとします。指示通りにAから取り組んでいたのに、後からBを優先させるかのように言われたため、どちらの指示に従っても上司の要求を満たすことができない。言われた側は正解がわからずに混乱してしまうでしょう。このような状況をダブルバインドといいます。
暗黙の了解の中でも、ダブルバインドが発生することがあります。女性社員が家庭と仕事を両立しようとする意志を評価しながらも、一方では長時間労働や出張に向いていないからと責任あるポストから遠ざける。この場合、女性社員はどちらの期待にも応えることができず、精神的に追い詰められてしまいます。
ダブルバインド理論は次の条件がそろったときに発生します。
・二人以上の人間の間で起こる
・最初のメッセージと、それを否定するメッセージが伝えられる
・そのどちらに従っても罰があり、メッセージの矛盾から逃れられない
ダブルバインドは、家族や上司と部下など、さまざまな関係性のコミュニケーション上の問題で起こります。理不尽な状況が継続することで心理的な罠のように感じ、受け手はストレスにさらされます。その結果、信頼関係が損なわれ、パフォーマンスに悪影響を及ぼすこともあります。
マネジャーは、ダブルバインドを回避するために注意深くコミュニケーションをとる必要があります。ダブルバインドの程度や頻度が度を過ぎると、パワーハラスメントと判断されることも。指示やフィードバックの際に、相手にとってほしい行動が明確に伝わるよう、コミュニケーションスキルを向上させておくことが重要です。
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