偽装請負
偽装請負とは?
契約上は「業務請負」(アウトソーシング(外部委託)の一種で、製造、営業など業務を一括して請け負う形態)や個人事業主であっても、実態が人材派遣に該当する労働形態を指します。
2005年度の是正指導件数は過去最多の974件
労使双方が対策に乗り出し始める
業務請負および個人事業主の場合、本来はメーカーなどの顧客から仕事の発注のみが行われ、請負側は作業責任者を置き、配下に人員がいる場合は作業指示を行うのは請負側です。偽装請負となるのは、請負側が人の派遣のみを行い、責任者がいないか実質的に機能しておらず、顧客の正社員が作業指示を行っているような状態がそれにあたります。違法であるものの、製造業やIT業界などで幅広く行われていましたが、2006年に朝日新聞が実態を報道したことによって問題が顕在化し、労使双方が対策に乗り出すことになりました。
問題の背景として、業務請負を人員の入れ替えが容易な調整弁として利用していることや、中国・東南アジアなど海外の低賃金労働力に対応するためのコストダウンの手段として利用されているといった雇用側の事情の他、労働者側にもフリーター志向のある若者や労働意欲が低下した若者が増えていることなどが指摘されています。
派遣労働者のほとんどが労働組合に加盟していないことや、バブル経済崩壊後の不景気で労組も正社員の雇用確保のために黙認してきた経緯もあり、現場では半ば当たり前のこととして放置されてきました。
しかし、偽装請負の状態で労災が発生すれば、労働者を送り込んだ側だけではなく、労働者を受け入れた側も責任を負わされます。「派遣と判断された場合は派遣元の責任ではないか」と誤解する人もいますが、派遣であっても、派遣元、派遣先の双方が安全上の責任義務がある上、違法行為を放置していた責任はより重く問われることになります。
労働者派遣の規制緩和を目的に2004年3月1日には改正労働者派遣法が施行され、製造業務への人材派遣が解禁になりました。衆参両議院では、これまで一般的に行われている偽装請負を排除し、人材ビジネス業界に対して労働諸法令が順守される取り組みを推進していくことが確認され、同時に派遣業界に対する監督指導強化策が打ち出されています。また、それに伴い人材派遣および業務請負の指導監督署が、ハローワーク(公共職業安定所=労働大臣が管轄する職業紹介・職業指導、雇用保険の事務処理など、職業安定法の目的を達成するための業務を無料で行う機関)から各都道府県の労働局に移されました。
立ち入り調査で監視を強めた結果、全国の労働局が2005年度に是正指導した件数は過去最多の974件に上ることが2006年8月21日、厚生労働省のまとめで判明しています。さらに、同省では「偽装発覚の恐れから労災隠しを招きやすい」と警戒を強めています。
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