雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?
「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち二つの事業所での勤務について要件を満たした場合、本人からハローワークに申し出を行うことで、申し出た日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。2022年1月1日にスタートします。
65歳以上の兼業・複業者への雇用保険
これまでの運用からの変更点は?
被保険者となるための要件は以下の三つです。
・複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
・二つの事業所(一つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・ニつの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
総務省統計局によると、日本の総人口に占める65歳以上の割合は、2021年9月時点で前年比0.3ポイント増の29.1%。人口で見ると約22万人増の3640万人で、過去最多を記録しました。高齢者の就業者数も、2020年時点で906万人と過去最多となっています。社会を支える働き手が減少している今、年齢にかかわらず働き続けたい高齢者をサポートするため、高年齢者の就業環境の整備が進んでいます。
2020年3月の高年齢者雇用安定法改正により、現行法で定められている65歳までの雇用確保義務に加えて、70歳までの就業確保措置をとることが努力義務として追加されました。健康寿命の延伸に伴って「元気なお年寄り」が増えていることからも、働きたい高齢者を支えるための受け皿を社会全体で増やそうとしているのです。
今回新設される雇用保険マルチジョブホルダー制度もその一つ。副業や兼業が増えてきている今、高年齢者にも複数から雇用される働き方を選ぶ人たちがいます。
現行の制度では、雇用保険の被保険者となるためには「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」「31日以上引き続き雇用されることが見込まれること」という二つの要件を満たす必要があります。そのため、事業所Aで週20時間、事業所Bで週10時間働くXさんは雇用保険に入ることができていましたが、事業所Aで週10時間、事業所Bで週15時間働くYさんは入ることができませんでした。
雇用保険マルチジョブホルダー制度では、「一つの事業所の所定労働時間が週5時間以上20時間未満」「二つの事業所の所定労働時間の合計が週20時間以上」が要件となっているため、後者のYさんのようなパターンでも、本人が申請すれば被保険者になることができます。
65歳以上の雇用は現状では非正規雇用になる場合が多いため、複数の事業者から雇用されて働くマルチジョブホルダーとしての働き方は増えていくことが予想されます。該当者からの申し出があったことを理由に、解雇や労働条件の不利益変更といった不利益な取り扱いを行うことは法律上禁じられています。人事労務担当者は制度への理解と手続き方法について、しっかりと把握しておかなければなりません。
・参考
【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について(厚生労働省)
統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-(総務省)
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