フリーランス
フリーランスとは?
フリーランスとは会社員や団体職員のように組織に属さず、仕事に応じて契約して働く人のことです。プログラマーのようなIT関係や、デザイナー・フォトグラファーなどのクリエイティブ関係の専門職のイメージが強いですが、多様な職種のフリーランスが存在します。
フリーランスは個人であり、契約トラブルなどで不利な立場に陥りやすいという問題があります。雇用保険などで守られていない人が多いため、セーフティーネットの整備という課題も指摘されています。フリーランスに業務を発注する企業は、関連する法令などを遵守しながら、正社員採用や派遣社員と使い分けてフリーランスを活用することが求められます。
1.フリーランスの意味や定義とは
フリーランスとは、広い定義では「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人(※1)」とされています。
中小企業庁では「特定の組織に属さず、常時従業員を雇用しておらず、消費者向けの店舗等を構えておらず、事業者本人が技術や技能を提供することで成り立つ事業を営んでいる者(※2)」と定義しています。
フリーランスの由来は中世ヨーロッパで、兵士が特定の国に所属せず、報酬に応じてさまざまな君主のもとで働いた傭兵制度にあるようです。当時の傭兵は騎兵が多く、それが「自由な槍=フリーランス」の語源となったとされます。
特定の組織に属さず、報酬に応じてさまざまなシーンで専門的な能力を発揮する現代のフリーランスの働き方は中世の傭兵と通じるものがあります。
※1出典:フリーランスの現状認識と課題|一般社団法人フリーランス協会
(1)フリーランスのスタイル
フリーランスには大きく分けて独立型と副業型の2種類があります。
○独立型
「独立型」は、どこの組織とも雇用契約を結ばず、事業主として業務を請け負うタイプです。時間についての裁量が大きく、本人の管理能力さえあればスピード感をもって仕事を引き受けやすいスタイルとなります。
○副業型
「副業型」は、特定の企業に属しながら空いた時間を活用し、副業として個人で仕事を請け負うタイプです。給与収入があることから独立型より生活は安定しやすいですが、日中は労働時間となり時間を依頼主のために使えない場合があるため、注意が必要です。
(2)個人事業主とフリーランスに違いはあるか
個人事業主とフリーランスは、どちらも個人として業務を受託する人の呼称で、実際に仕事を依頼する上では特にその業務内容に大きな違いはありません。税務署に開業届を出している場合は、法的な呼称として「個人事業主」と呼ばれます。個人事業主とは職業上の区分であり、フリーランスは主に働き方の区分とも考えられます。
2.フリーランスの人口やその推移
雇用形態が多様化し、働き方改革で政府が副業を推進した影響もあり、フリーランスとして働く人は増えています。ただ、日本に何人のフリーランスがいるのか、人数は確定できません。フリーランスにはその定義も含め、さまざまな調査があるためです。
よく知られているところでは、内閣府やフリーランスのマッチングサイトであるランサーズが、フリーランス人口や推移を推計した調査結果を発表しています。
(1)内閣府による調査
内閣府は2019年、店舗を持たず、従業員を雇用せずに、自身で事業を行う者のうち、農林漁業従事者を除いた者をフリーランスと定義して調査を行いました。調査によると、日本のフリーランス人口は306万人から341万人と推計されています。
同調査における狭義のフリーランスである「雇用的自営業」は、1985年から増加傾向にあります。雇用的自営業とは、特定の発注者に依存する建築技術者やシステムコンサルタント・設計者、保険代理人などの自営業主のことです。自営業主は長期的に減少傾向にある中、雇用的自営業者は増加している点が近年における労働市場の特徴の一つとなっています。
(2)ランサーズによる調査
フリーランスと企業のマッチングプラットフォームを運営するランサーズ株式会社は、2021年にフリーランスの実態調査を実施しました。調査対象は過去12ヵ月以内に仕事の対価として報酬を得た20歳以上の男女です。ランサーズの推計によれば、2018年に1,151万人だったフリーランスの人口は、2021年には1,670万人に増加。実に3年で519万人も増えています。内閣府のフリーランス人口推計の3倍以上の数値です。
これはフリーランスの定義の違いが影響しています。ランサーズによるフリーランスとは、四つに分かれます。
1)自由業系フリーワーカー 308万人
特定の勤務先はないが独立したプロフェッショナル
2)自営業系独立オーナー 551万人
個人事業主・法人経営者で、1人で経営をしているオーナー
上記のように一般的にイメージされているフリーランスに加えて、下記のような人たちも含まれているためです。
3)副業系すきまワーカー 439万人
常時雇用されているが、副業としてフリーランスの仕事をこなすワーカー
4)複業系パラレルワーカー 373万人
雇用形態に関係なく2社以上の企業と契約ベースで仕事をこなすワーカー
参照:【ランサーズ】フリーランス実態調査2021年版|ランサーズ株式会社
(3)多種多様なフリーランスの職種
フリーランスは従来、エンジニアやデザイナーなどIT系、クリエイティブ系が多数でした。ところが近年は、それ以外にもさまざまな職種に広がりを見せています。先述の内閣府の調査によれば、エンジニアやクリエイティブ系と呼ばれる専門的・技術的職業従事者の割合が比較的高く、次いで販売従事者などの営業職系が多いと推計されています。企業の管理部門に該当する人事や経理などの事務従事者は比較的少ない状況です。
代表的なフリーランスの職種をご紹介します。
<1>ITエンジニア
ITエンジニアはIT関連の技術者の総称で、代表的なのはSEと呼ばれるシステムエンジニアやプログラマーです。SEはシステムの設計・製造・テストに携わる監督的な仕事で、プログラマーはシステムの設計に基づいてプログラミング作業を行う仕事です。
<2>ライター、編集者
ライターは依頼を受けて記事を書く仕事です。自身で企画をすることはあまりありません。編集者は雑誌や書籍などを企画・編集する総合的な仕事で、企画出しから予算どり・ライターへの依頼・記事編集・取材など一連の作業を担当します。
<3>デザイナー、イラストレーター
デザイナーやイラストレーターはクリエイティブ系フリーランスと呼ばれます。デザイナーにはウェブサイトのデザインを行うウェブデザイナーと、パンフレットやチラシなどの紙媒体を作成するグラフィックデザイナーがあります。イラストレーターは雑誌・広告のイラスト作成やウェブ・ゲームで使うキャラクターを制作する仕事です。
<4>YouTuber、インスタグラマー
YouTuberは動画配信サイト「YouTube」に自身が制作した動画を投稿する人で、総再生時間やチャンネル登録者数により広告収入を得ます。インスタグラマーはインスタグラムに多くのフォロワーを持つ影響力の強い人で、商品PRをすることで企業から収入を得ています。どちらも広告収入により生計を立てるのが特徴です。
<5>営業、営業コンサルタント
営業にもフリーランスで活動している人はいます。委託販売という形で、個人事業主に自社製品の営業を依頼するのがその例です。
営業コンサルタントは顧客に必要なものを提案して売上に貢献するため、製品提案から売上がアップする接客方法や営業活動の実践的指導まで、さまざまな業務を行います。
<6>経理、財務
経理や財務のフリーランスは、クライアント次第で仕事内容が大きく変わります。経理では請求管理や経費精算業務、会計ソフトの入力からスタートアップ企業の経理全般など。財務は財務管理や予算管理、分析業務など。税務ではフリーの税理士もいます。
<7>人事
人事は、求人や採用業務に特化したリクルーター業務、人事制度のコンサルティング、社内の教育訓練を支援するフリーランスの専門家もいます。企業内で開催されるマネジメント研修などの講師も人事系のフリーランスといえます。
3.フリーランスが増加している背景
各種調査を見ても、フリーランスの人口と市場が拡大していることがわかります。
(1)働き方改革の推進
フリーランスが増加している背景として働き方改革の推進が挙げられます。人口減少に伴い、多くの人が柔軟に働ける環境が求められており、政府もフリーランスの労働環境整備を成長戦略の一つに位置付けています。
以前は就業規則で副業を禁止する企業が珍しくありませんでした。現在は副業型フリーランスを後押しする社会になってきており、従業員の副業を認める企業もあります。労働時間の管理など課題もありますが、今後も会社員の副業は拡大していくと予測されます。
(2)仕事を受注する仕組みの整備
先述のランサーズをはじめ、フリーランスと企業をマッチングさせるプラットフォームやフリーランスが出展する大規模展示会など、仕事を受注する仕組みの整備もフリーランスの増加を後押ししています。
フリーランスの中には、インターネットやSNSを通じて営業活動を行う人もいます。自分の専門分野や実績を示しており、専門知識を持つフリーランスを探す企業がコンタクトしやすい環境が整えられているのです。
(3)テレワークの浸透
テレワークの浸透もフリーランスの間口を広げています。テレワークによって時間や場所を問わず、さまざまな仕事に対応できることはフリーランスにとって大きなメリットです。テレビ会議ツールやチャットツールなど業務環境の充実も、フリーランスを後押ししています。こういったシステムを利用しているのは独立型フリーランスだけではありません。副業として在宅で業務を請け負うフリーランスも活用しています。
企業の視点でいえば、より多くの専門家の中から求める能力を備えたフリーランスを選び、仕事を依頼できる環境にあるといえます。
4.フリーランスが抱える課題や不安
増加するフリーランスですが課題もあります。フリーランスサイドから見た主なものを三つご説明します。
(1)契約トラブルや発注者側による嫌がらせ
フリーランスが抱える課題として、契約トラブルや発注者側による嫌がらせがあります。報酬の未払いや過度なやり直し、買いたたきなどです。フリーランスの場合は企業間の取引よりも発注側の意向が契約に反映されやすく、フリーランスは契約を背景に不利な立場に陥りやすい傾向にあります。
優越的地位とは
フリーランスとの取引を考えるとき「優越的地位」という概念を押さえておく必要があります。
発注者から不利益な条件を突きつけられても、それを断ると取引継続が困難になることが予想される場合は、フリーランス側が受け入れざるを得ないケースもあるでしょう。こうした状況を発注者がフリーランスに対し「優越的地位」にあるといいます。フリーランスに対して、こうした優位な立場を悪用し、不利益につながる取引を行うことが問題視されています。企業間であれば、上司を伴って再度交渉に臨むことも可能ですが、フリーランスは自身で解決しなければなりません。
内閣官房日本経済再生総合事務局が2020年に実施したフリーランス実態調査の結果でも、発注者とのトラブルを経験したことがあるフリーランスは約4割。うち交渉せずに受け入れた者が約2割います。受け入れた理由の68.5%は、今後の取引・フリーランス活動に支障があることを懸念したことによるものです。この調査からも、優越的地位の相手とのトラブルを受け入れるしかないフリーランスの実態がうかがえます。
引用:フリーランス実態調査結果 P.21|内閣官房日本経済再生総合事務局
(2)病気やケガなどによるライフリスク
フリーランスは雇用保険などがないため、出産や育児、あるいは病気やケガなどの保障がありません。ひとたび働けない状況に陥ると収入が激減し、生活に支障をきたす可能性があります。そのため、フリーランスのセーフティーネットの整備は大きな課題です。
その対策として、フリーランスを守るために2017年に設立された一般社団法人であるプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会では、傷病手当金や労災保険の代わりとなる「所得補償保険」や「傷害総合保険」などを開発しています。ケガや病気で万が一働けなくなったときの喪失所得を保険金として受けとれる仕組みです。
(3)就労状態などの把握が不十分
フリーランスにはさまざまな業態があり、届け出などがなされないケースもあります。現時点では継続的に実施されている公的な統計などもないため、実態を正しく把握できていないという問題もあります。そのため、就労状態や課題などの実態の継続的な観測が十分なされていないのが現状です。
上述の内閣府調査においても、公的統計においてフォローアップする必要性が述べられています。内閣官房でも類似調査を比較して、フリーランスの実態の把握に注力しています。
5.フリーランスを活用するメリット
さまざまな職種に広がりを見せているフリーランス。企業としてフリーランスを活用するメリットについて考えてみましょう。
(1)専門的な技術、ノウハウを持つ人材を確保できる
フリーランスを活用することで、社内にはいない専門人材を確保できます。フリーランスの中には、高い技能や経験を持つ人材も少なくありません。社内人材では得られない知見により、生産性向上やイノベーションにつなげることができます。
専門人材は獲得競争も激しく、採用には時間もコストもかかります。フリーランスを活用することで効率よく人材を確保できるでしょう。例えば近年、統計学が注目されています。ビッグデータのアクセス解析は消費者の嗜好を知る有効な手段とされ、マーケティングに活用されますが、データアナリストが社内にいることはまれで、フリーランスなどの外部の専門家に依頼している企業もあります。
派遣や人材紹介を通じて専門人材を探しても、職種によってはなかなか要件を満たさないケースも少なくありません。運よく見つかっても、派遣の場合は3ヵ月などの派遣期間が満了した時点で契約を更新できない可能性があります。紹介予定派遣も、最長期間が6ヵ月までと法律で決まっています。人材紹介は直接雇用が前提のため、社員の雇入れ同様に人件費が後の固定コストとなってしまいます。フリーランスであれば、より自由に業務を委託することができます。
(2)社員の業務負荷を減らし、他の業務に集中できる
フリーランスに業務を委託することで、社員の業務負荷を軽減できます。また、空いた時間で他にやるべきコア業務などに集中することもできます。
特に近年、ビジネス系フリーランスと呼ばれるフリーランスが増加しています。ビジネス系フリーランスとは営業や人事などのスキルを有するフリーランスです。フリーランスのカバー領域が管理部門に広がることで、さらなる業務の効率化が期待できます。
例えば採用活動では、インターネットで幅広く応募者を集められるようになったかわりに、対応に多くの時間を取られるようになりました。いまや採用活動は企業の人事部門にとって、大きな負担となっています。時期が集中することから、フリーランスに委託する企業も増えてきています。
(3) 人件費を変動費化するなど、コスト削減につなげられる
フリーランスを活用することで、人件費を変動費化でき、コスト削減につなげることができます。また企業に業務を委託する場合に比べて、フリーランスは低コストで依頼できるケースも少なくありません。
従業員を雇う場合や、派遣社員を活用する場合にはデスクやパソコンなどを用意する必要があり、人件費以外のコストが生じます。こうした間接的な費用もフリーランスを活用することで最小限に抑えられます。ただし、コストばかりに着目して不平等な取引条件を提示したり、偽装請負になったりしないように注意が必要です。
一定期間専門家が必要な案件は、フリーランスを活用するメリットがあります。システムの開発期間だけSEと契約する、海外出張期間や新規海外事業の許可取得手続きや立ち上げの期間だけフリーランスの通訳と契約するなど、その案件を進めるためには社内の人材では対応が難しく専門家の力が必要な場合です。
その案件や事業が軌道に乗るまでの短期間だけ必要であれば、社員を採用するのではなく、フリーランスに依頼すればコストを削減できます。
6.フリーランスを活用するデメリット
フリーランス活用上のデメリットと、それらをカバーする方法を確認していきます。
(1)納期遅れや案件停止のリスク
フリーランスは個人であるため、体調など私的理由による影響を受けやすく、納期が遅れたり、連絡がつかなくなったりすることも考えられます。最悪の場合、依頼していた案件が停止してしまうリスクもあります。法人間の契約よりも、何としても依頼を完了してもらう強制力が弱くなるのは否めません。
特に在宅の場合は、居住地に関係なく求めるスキルを持つフリーランスと契約することが可能な半面、密なコミュニケーションがとれず、信頼関係を築くことが難しいこともあります。マンパワーも限られているので、無理な納期や資料提供の遅れにより案件が停止するリスクも想定しておく必要があります。
フリーランスに仕事を依頼する場合は、依頼側のコントロールが重要で、グリップが効かないと求める納期やクオリティーで案件が進みません。企業間のように契約すれば案件が完了して当然との認識ではなく、定期的な打ち合わせの場を設けるなどの対応が必要です。
(2)継続、安定して依頼できるとは限らない
フリーランスは特定企業の専属ではなく複数社から仕事の依頼を受けています。そのため、案件を依頼するタイミングによっては受けてもらえないケースもあります。優秀なフリーランスは他の企業からも引き合いが多く入るため、社員のように仕事を依頼できるわけではありません。
継続して業務を依頼したい場合は、あらかじめ契約などに盛り込んでおく必要があります。料金についても流動的です。初回の案件が安価で高いクオリティーであれば継続依頼を考えますが、次回も同様に安価な金額で依頼できるとは限らないのです。
優秀なフリーランスに継続的な依頼を考えるのであれば、案件単位ではなく、3ヵ月契約など一定期間での契約を検討するのもよいでしょう。毎日ではなく、週1日で3ヵ月などの契約も交渉次第です。
(3)情報漏えいなどのセキュリティーリスク
多くの場合、フリーランスは私用端末を使用して業務を行っています。私用端末は企業の端末よりもセキュリティーが甘いことが多く、フリーランスの端末がマルウェアに感染すると機密情報の漏えいなどが起こり得ます。そのため、社内情報にアクセスする許可の権限管理を定めたり、秘密保持契約を交わしたり、渡す情報を取捨選択するなどの対策が必要です。
情報漏えいだけでなく、フリーランスの端末から自社サーバーがウイルス感染するリスクもあります。私用端末であっても社内にアクセスする端末は一定の管理が必要です。中には在宅業務用の端末を支給する企業もあるほどです。
7.フリーランスを活用する上でのポイント
フリーランスへの依頼は、発注する企業側の姿勢次第で、コストを抑えて必要な専門性を得るチャンスです。契約方法も多様で、案件ごとや月給での月契約、長期契約も可能。繁忙期は月給制の契約をして、事業が軌道に乗れば運用管理のために週1契約、月間30時間の時間契約なども交渉次第です。
新規事業を計画する際には、要員計画を立てます。事業展開や過程により必要な要員が大きく異なるので、短期間の専門家確保にフリーランスの活用は有効です。事業の展開を踏まえ、要員計画に沿った専門家を確保できるからです。
(1)経済産業省が策定したガイドラインを遵守する
2020年12月、政府はフリーランスの労働環境を整備するために、ガイドラインを発表しました。フリーランスを活用する際にはガイドラインを遵守することが望ましいので確認しておきましょう。
<1>独禁法、下請法への対応
独占禁止法はフリーランスにも適用されます。ガイドラインでは発注者側による優越的地位の濫用が規制されています。具体的には報酬の支払い遅延や一方的な発注取り消し、やり直しの要請などです。
また、資本金1,000万円以上の発注者には下請代金支払遅延等防止法が適用され、取引条件を明確にした書面の交付が義務付けられています。仕事の完了後60日以内に代金の支払いをすることや、できる限りの現金払いなどが定められています。支払いが遅れた場合は遅延利息の支払いも義務付けられているので、注意が必要です。
<2>労働関係法への対応
今回のガイドラインでは、フリーランスにおいても労働関係法令が適用されるケースもあるとしています。労基法上の労働者と認められる場合は労働時間や賃金に関するルールが適用されますし、労組法上の労働者と認められる場合は団体交渉に応じる必要があります。
フリーランスを労働者と認めるかどうかについては判断が難しいため、ガイドラインの詳細な記載を参考にしてください。
(2)まずはトライアルから始めてみる
先述のとおり、フリーランスは個人であるために取引上のリスクを伴います。最初から大きな仕事を任せたり、長期契約したりするのではなく、まずはトライアルを行うといいでしょう。依頼側はフリーランスの能力査定ができ、依頼が途中で停止したり、完了しなかったりといったリスクを軽減できます。フリーランスにとってもトラブルを抑制することにつながり、相互にメリットがあります。
(3)継続リスクに備え、代替案を用意しておく
フリーランスは社員ではないため、取引を継続できるとは限りません。継続できなくなった場合を想定して、代替案を用意しておかなければなりません。他に依頼できるフリーランスを確保しておく、業務マニュアルなどを整備しておく、社内リソースでも対応できるよう情報共有する、といった対策が考えられます。
フリーランスに依頼することは専門性を得ると同時に、社外の専門家の知識を社員が学ぶチャンスでもあります。フリーランスから専門性を社員が吸収すれば、継続リスクにも対応できます。契約次第では、フリーランスから積極的にノウハウを共有してもらうことも可能です。
8.人材戦略において企業はフリーランスをどのように活用すべきか
案件単位ではなく数ヵ月単位の長期間契約など、多様な契約形態が可能なフリーランス。人材獲得手段の選択肢の一つともいえます。では、他の人材獲得手法とどのように使い分けるのが効果的なのでしょうか。
(1)採用活動は中核人材の獲得のために行う
新卒や中途など、企業の採用活動は将来組織におけるビジネス活動の中核を担う人材確保を目的に行います。そのため、単にスキルや実績だけでなく、ビジョンマッチやカルチャーフィットなどの要件も重要です。しかし、フリーランスについては必ずしもそこまでの要件は必要なく、課題を解決できるかどうかが重要なポイントとなります。自走して依頼案件を完了できればよいのです。
(2)派遣社員はノンコア業務を行う人材の安定確保のために活用する
派遣社員は、基本的にノンコア業務を行う人材を安定的に確保することを目的に活用します。定型化、標準化された業務を派遣社員に任せることで、社員は戦略立案や分析などのコア業務に専念できます。ノンコア業務であっても継続性、安定性を重視するため、継続契約が確約できないフリーランスだけで対応するにはリスクを伴うのです。その点、派遣は契約期間の人材確保が約束されています。仮に派遣期間中に派遣社員が辞めたとしても、別の派遣社員が来て業務を滞りなく進めていきます。
(3)フリーランスは多様な業務に活用可能
フリーランスは経営の中枢でない限り、幅広く多くの業務に活用できます。しかしながら、個人であるがゆえにさまざまなリスクも抱えています。フリーランスを活用する場合は、その個人がどれだけ信頼できるかを見極めなければなりません。また、信頼関係を構築することも重要です。関係を築くことで、中長期的なパートナーとして安心して業務を任せられるようになるでしょう。
9.フリーランスの探し方
どうすれば、自社の求めるフリーランス像に合致した人材と出会うことができるのでしょうか。
(1)マッチングプラットフォームを利用する
フリーランスと企業をマッチングするさまざまなサービスが提供されています。特定の職種に特化したマッチングサービスもあります。求める人材の分野に強いプラットフォームを用途に応じて使い分けることで、効率よくフリーランスに出会えます。
マッチングプラットフォームには多くのフリーランスが登録している一方で、多くの企業も利用しています。職種や時期によっては競争率が高くなります。
(2)展示会などで知り合う
フリーランスが出展する展示会などで知り合う方法もあります。展示会ではフリーランスと直接商談することも可能。多くのフリーランスと一度につながる機会でもあります。コロナ禍においてはオンラインで開催されるものもあります。
(3)インターネット、またはTwitterなどのSNSで探す
フリーランスの中には、ブログやTwitterなどのSNSで情報発信している人が多くいます。そうしたフリーランスのアカウントをフォローし、コンタクトすることもできます。過去の実績やポートフォリオを掲載しているフリーランスも多く、国内外のフリーランスと出会うことが可能。過去の実績を確認できるため、強みのある分野や能力査定をできるメリットがあります。
(4)知り合いや既存のフリーランスからの紹介
友人や知人、すでに取引のあるフリーランスから紹介してもらう方法もあります。すでに取引のあるフリーランスに依頼する際には、同じ職種ではなく違う職種であれば、紹介を得やすいこともあるようです。紹介者から実績や仕事の対応など、取引する上で把握しておきたい情報を得られるメリットがあります。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。