従業員シェア
従業員シェアとは?
「従業員シェア」とは、一時的な経済停滞によって人材に余剰が生じた企業が、人手が必要な企業に自社の従業員を送り出し、人材を「シェア」すること。従業員の雇用の維持に課題を抱える企業と、一時的に人手不足に陥っている企業が協業して労働力をシェアします。送り出す側は賃金支払いの負担を軽減させることができ、受け入れる側は継続雇用のリスクなく人材を確保できるというメリットがあります。
中国で広まった従業員シェア
その流れは日本にも
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年4月から5月にかけて全国で緊急事態宣言が発令され、臨時休業を余儀なくされた飲食店や小売店などでは、従業員の雇用の維持が大きな課題となっていました。そんな中、一つの解決策となったのが従業員シェア。自社以外の従業員を一時的に受け入れることで、ともに有事を乗り越えようという互助システムです。
類似の概念に「ワークシェアリング」があります。ワークシェアリングは限られた「仕事」を複数の労働者で分かち合うことですが、従業員シェアは「労働者」を複数の企業で分かち合うという点で異なっています。
従業員シェアの動きが見られ始めたのは、2020年2月ごろの中国でした。中国は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため厳しい外出自粛政策をとり、サービス業の営業休止はもちろん、地域間の移動も厳しく制限しました。自粛生活が始まると、店舗型の事業者は次々と休業。他方で、オンラインショッピングの需要は右肩上がりで膨らんでいきました。
なかでも、スーパーのネット注文と配達は急激に増加し、人手不足が顕著になりました。旧正月で地元に帰省した人たちが、移動規制のため都市に戻ってこられなくなったことも大きかったようです。そこでスーパー側はインターネットなどで休業中の経営者に呼びかけ、仕事がない従業員の人手を借りることにしました。
従業員を送り出す側は賃金支払いの負担を軽減することができ、受け入れ側も一時的な特需に対応するために継続雇用を約束する必要はありません。互いにメリットのあるこの仕組みは中国政府からも支援され、約1ヵ月で400万人を超える雇用問題を解決したといいます。
日本でも同様の動きがあり、休業を余儀なくされた居酒屋チェーンから、スーパーマーケットに従業員を派遣するケースが見られます。人手の確保という側面だけでなく、社外の人たちと交流することで従業員が新たな知見を得て、自社での業務に効果が生まれることも期待されています。
参考:
“シェア従業員”で危機を乗り切れ(NHKニュース おはBiz)
中国の新型コロナ対応で生まれた従業員シェアリングの試み(野村総合研究所)
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