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【ヨミ】ショウニンヨッキュウ

承認欲求

承認欲求とは?

承認欲求とは「周囲の人たちから自分を価値のある人間として認められたい」という欲求のことです。マズローの欲求五段階説によれば、承認欲求は人間の基本的な欲求の一つとされています。「目立ちたがり」などネガティブな文脈で捉えられることもありますが、うまく活用することで、自己効力感やモチベーションを向上させ、人材育成につなげられます。

掲載日:2019/03/25 更新日:2024/10/30
承認欲求とは

承認欲求とは

「周囲から認められたい、自分を価値ある存在として認めてほしい」という承認欲求は、多くの人が持っていますが、ネガティブな文脈で語られることが少なくありません。たとえば「承認欲求が強くて目立ちたがりだ」「人から承認されたくて〇〇を行っている」といった例は、承認欲求をネガティブにとらえています。

しかし承認欲求は、うまく活用することで人の成長につなげられます。人材育成では、承認を受けることで、自己効力感や内発的モチベーションが高まり、スキルアップやキャリアアップにつながると考えられています。人が持つ承認欲求を理解し、育成に結びつけることが重要です。

マズローの欲求五段階説にある欲求

承認欲求を説明する際、マズローの欲求五段階説が用いられます。マズローの欲求五段階説とは、人間の欲求を五段階に分類し、「一つの欲求が満たされるたびに上の段階の欲求を満たそうとする」という理論です。「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の五つで構成されます。

【マズローの欲求五段階説】

  • 生理的欲求...人が生きるための基本的な欲求
  • 安全欲求...生活の安定や健康維持、危険から身を守るなど安全に対する欲求
  • 社会的欲求...周りから受け入れられる、社会から必要とされることに対する欲求
  • 承認欲求(尊厳欲求)...他者から評価を得て自尊心を満たそうとする欲求
  • 自己実現欲求...自分が描く理想的な自己に向かって能力を発揮し、実現しようとする欲求

マズローの説によれば、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求が満たされたうえで、人は承認欲求を持つようになります。

これを職場に当てはめてみると、生理的欲求は賃金が労働契約に沿って支払われる金銭的保障です。安全欲求は、雇用の維持や収入の見通し、組織の存続が保障されている状況を指します。社会的欲求は、従業員同士コミュニケーションをとり、職場に受け入れられている感覚が当てはまります。これらが満たされた状態で、人は職場で称賛を受けたり、上司から認められたり、大きな裁量を任されたりする承認欲求を持つようになります。

承認欲求を内発的モチベーションと結び付ける場合、まずは基本的な労働環境が整い、雇用の安定性や社内での円滑な人間関係が保たれていることが前提となります。

欲求の強さは人による

マズローによれば、承認欲求は人間が持つ基本的な欲求ですが、人材育成の観点でいえば、個人差を考慮にいれる必要があります。職場にはさまざまなタイプの従業員がいるため、「認められたい」という気持ちは一様ではないでしょう。

電通の調査では、消費者を欲望タイプ別で分類しています。タイプ別の詳細を見ると、人によって承認欲求が他の欲求に比べて強い人・弱い人がいることがわかります。たとえば、「わたしの好き最優先」タイプは、「つながり欲」や「消費欲・物欲」は高いものの、他者から承認を受ける承認欲求は低めです。一方で、「360度パワフル」タイプはすべての欲望因子が高く、人に影響を与えたり、他者から認められたり、社会貢献をしたりと、多方面に欲求が強くあらわれます。

この調査を職場に当てはめると、「わたしの好き最優先」に対しては、承認よりも仕事のマッチングが重要でしょう。「360度パワフル」では、成果を出したことに対して、正面から承認することが効果的といえます。このように人材育成の文脈で承認欲求を考えるときは、人間の基本的な欲求であることを踏まえつつ、個人差があることに注意する必要があります。

職場での承認欲求の付き合い方

職場で褒められたり、表彰されたりすることはうれしいものです。しかし、承認は適切なタイミングで適切になされてこそ、プラスの効果を発揮します。

同志社大学 教授の太田 肇氏は、承認とはもろ刃の剣だと述べています。承認することは、相手のモチベーションを引き出す一方で、プレッシャーにもなります。外部からの称賛は、最初は内発的モチベーションにつながるものの、次第に「承認を得るためにがんばろう」という目的とすり変わりがちです。

たとえば、はじめて仕事で表彰された際、いままでの頑張りが報われ、仕事にやりがいを見いだせるかもしれません。しかし、何回も表彰を受けていると、その人にとって表彰されることが仕事のゴールとなってしまい、顧客との良好な関係や生産性の向上など、それ以外の部分での面白さを見失ってしまう可能性があります。これは、承認が外発的動機付けに変化してしまった典型的な例です。本人のモチベーションをそがず、プレッシャーをかけすぎない承認を与えることが大切です

具体的に承認する

適切な承認は受け取った本人が納得できるものですが、そのためには具体性が求められます。

【具体的に承認をする際のポイント】

  • 期待をかけすぎない
  • 具体的にどこがいいかを示す
  • 努力でなく能力をほめる

まず、承認や期待が大きすぎると、相手にとって負担になります。そこで、相手の能力やポジションを考慮しつつ、目標面談などの機会を活用し、具体的に何を期待しているのかを伝えます。
また、承認が曖昧だと、相手にうまく届かない可能性があります。それでは、せっかくの承認がモチベーションアップにつながりません。たとえば、部下が仕事で結果を残したとき、すぐに誉めると相手に承認が届きやすくなります。時間が空いてしまうと、相手が忘れてしまったり、誉めるタイミングを逃してしまったりする恐れがあります。

「よくがんばったね」と声をかけることは、一見褒めているようでも、働きすぎにつながってしまう恐れのある承認の仕方です。業務が忙しく残業続きの部下に対して、「最近がんばっているな」と努力を承認すると、「激務をこなす=誉められる」というメッセージを暗に発してしまいます。「プレゼンでは、数値に説得力があってよかったよ」や、「〇〇さんは取引先の名前を全部覚えているから、対応に安心感があるね」など、相手の能力に焦点を当て承認を行うことが大事です。そのためには、日頃から部下の仕事ぶりを観察しておく必要があります。

双方向に承認する

承認することで、不必要な上下関係が生まれることがあります。承認されると、部下には上司に応えようという気持ちが生まれます。それが強すぎると、部下は上司や職場に常に「貸しをつくっている状態」になり、心理的な負担が発生します。承認された側は、上下関係を無意識にプレッシャーに感じてしまうのです。

このような状況を防ぐには、上司・部下が双方向で承認を行える環境を整えるといいでしょう。感謝を送り合うサンキューカードや、従業員同士で報酬を送り合えるピアボーナス制度は、双方向の承認を促す例です。部下からも上司をほめる仕組みを通じて、承認を双方向に送り合い、承認が持つ過大な期待を軽減できます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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