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【ヨミ】モチカブカイ 持株会

持株会は従業員の福利厚生の一環として位置づけられ、近年では、経営側と従業員をつなぐ施策としての意味合いも持ち始めています。ここでは、持株会の概要や仕組み、会社・従業員それぞれのメリットとデメリットを見ていきます。

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1.持株会とは

自社の株を従業員が購入・保有できる制度が、従業員持株制度です。この制度を運営する常設機関が従業員持株会で、社員持株会と呼ばれることもあります。

従業員持株会には、経営側である役員は加入できません。役員を対象とした役員持株会は、別の機関として運営されます。従業員持株会と同様に自社の株式を取得できますが、役員は従業員とは異なる規制があるため、別の組織となっています。ここでは、従業員持株会に焦点をあてて、説明していきます。

従業員持株会の仕組み

従業員持株会では、従業員の給与・賞与から一定額を天引きし、これを集めた資金で自社株を購入します。従業員は拠出額に応じて配当金を得られる仕組みになっています。

会社に従業員持株会があっても、加入するかどうかは従業員の任意です。各企業では奨励金を支給するなどさまざまな便宜を図っており、従業員持株会は財産形成をサポートする福利厚生の一つと位置づけられています。

従業員持株会は上場企業だけでなく、未上場企業でも運営されています。この場合は、企業から配当を受ける仕組みになります。

従業員持株会の加入状況

東京証券取引所が行った「2017年度従業員持株会状況調査結果」によると、2018年3月末時点で東証に上場している企業3601社のうち、証券会社と契約して従業員持株制度を運営している企業数は3184社。約9割の上場企業が従業員持株会を活用していることが分かります。

同調査によると、従業員持株会に加入している従業員は全従業員の40%弱です。経年変化を見ると、直近の5年間はほぼ同じ4割程度で推移しています。このことから、企業側・従業員側ともに従業員持株会への期待値が継続的に維持されているといえます。

2.会社側から見た持株会のメリット

多くの会社が従業員持株制度を導入している理由には、どのようなことが挙げられるのでしょうか。会社側から見たメリットには、以下の三つがあります。

持株会が安定株主になる

企業からすると、従業員持株会は長期的に自社株を保有してくれる安定した株主とみなすことができます。

もともと日本では、取引先同士がお互いの株式を所有し合う、通称「持ち合い株」と呼ばれるものを多く活用してきました。関係取引先が株主となることで取引を強化し、安定株主を得ることを目的とするものです。しかし、バブル崩壊後は取引先間で株式を持ち合うことのリスクが顕在化し、現在では減少の流れにあります。

一方、従業員持株会は自社で働いている従業員が株主になります。言い換えると、自社の経営方針におおむね賛同している株主です。企業側から見ると、多数の従業員が持株会に加入することは大きなメリットになります。

福利厚生の一環

従業員持株制度は、さまざまな便宜を図ることで、従業員の長期的な財産形成をサポートします。つまり、企業にとっては安定株主を獲得しつつ、福利厚生の一環として機能させていくことができるメリットがあります。

従業員のモチベーションアップ

業績が向上して自社株の配当が上がれば、株主である従業員の資産として還元されます。そのため、仕事に対するモチベーションにつながることが期待できます。

実際のところ、株の上がり下がりは単純な構造ではありませんが、株式を保有することで、より自社の動向に注意を払うようになり、経営参加の意識が高まります。

3.会社側から見た持株会のデメリット

一方で、従業員持株会はデメリットもあります。まず考えられるのは、業績悪化などで株式が下落したり配当が維持できなくなったりした場合に、従業員のモチベーションが低下してしまうことです。これは、会社側だけでなく従業員側のデメリットでもあります。

しかし、実際の導入率の高さからも分かるように、基本的に従業員持株会は企業側にとってメリットが大きい制度といえるでしょう。

4.従業員から見た持株会のメリット

次に、従業員側から見た持株会のメリットを挙げていきます。

奨励金がある

従業員にとって大きなメリットとなるのが、自社株を購入する際に支給される奨励金です。奨励金は、従業員持株会への加入促進において強いけん引力を持つため、多くの企業が導入しています。

東京証券取引所の「2017年度従業員持株会状況調査結果」を見ると、奨励金を支給している企業は96.5%です。拠出金1000円に対して支給される奨励金額でもっとも多くなっているのが40~60円で全体の39.8%を占めています。次いで多いのが100~150円で、全体の34.6%となっています。

銀行に定期預金として1年間預ける場合の金利は、現在(2018年11月時点)0.01%から0.1%代が多くなっています。超低金利時代といわれる現代、従業員持株会は財産形成においてメリットが大きいことが分かります。

配当金・キャピタルゲインを得られる

会社で出た利益の一部を株主に還元するのが配当金です。配当金は「一株あたりいくら」という形で還元されるので、株式数を多く持っているほどリターンが大きくなります。また、購入時の価格に対して株価が上昇すればその差額が収益となります。この収益がキャピタルゲインです。

従業員持株会で毎月購入を続けていくと、まとまった株式数を保有できるため、株価上昇時のキャピタルゲインや受け取れる配当金がより増えるというメリットがあります。

少額から株式を買える

2018年10月から、全国の証券取引所に上場する全ての株式が100株単位(1単元)での取引に統一されました。一株あたりの金額が高い場合、投資したいと思ってもまとまったお金が必要になるため、なかなか手を出せないというケースもあるでしょう。

一方、従業員持株会は毎月一定の金額で自社株を購入できます。少額から株を購入できる点もメリットの一つに挙げられます。

財産形成の手間がかからない

毎月の収入から少しずつ貯蓄しようと思っても、自己管理が難しく、実際にはなかなか貯められないことも少なくありません。従業員持株会に加入すると、毎月自動的に給与や賞与から一定額が差し引かれ、自社株の購入に回ります。

余計な手間がかからないうえ、知らず知らずに貯まっていくため、自己管理が苦手な方や面倒な手続きを省きたい方にとってメリットになります。また、ライフスタイルの変化などで毎月の額を増減したい場合は、金額の変更も可能です。

5.従業員から見た持株会のデメリット

従業員から見たときに、持株会には気を付けるべきリスクやデメリットも存在します。

会社への依存度が高くなる

会社の業績が落ちた場合、株価も下落する可能性が高くなるため、保有資産が目減りすることがあります。また、業績悪化により給与や賞与が下がる可能性も出てきます。最悪の場合は、勤務先が倒産して収入と資産の両方を失う事態が想定されます。

投資の原則を言い表した言葉に、「卵は一つのカゴに盛るな」というものがあります。一つのカゴに卵を入れると落としたときに全て割れてしまいますが、別々のカゴに入れておけば、一方を落としても他方の卵は無事です。

これと同様で、収入と資産の両方を依存する形になる従業員持株制度は、リスクの分散ができないというデメリットがあります。資産運用の全てを持株会に委ねないようにするなど、運用方法を工夫することが必要です。

株主優待はもらえない

株式投資を行う目的の一つに、株主優待を受けられることが挙げられます。たとえば、お食事券やカタログギフト、自社商品の詰め合わせなど、多くの上場企業では株主に対してさまざまな優待を実施しています。

しかし、従業員持株会では、株式を購入しても株主優待は受けられません。これは、自社株の購入を個人名義の証券口座で行っているわけではなく、持株会の名義で行っているためです。

最低売買数量(1単元100株)以上を所有している場合は、自分名義の証券口座をつくって株式を出庫することで株主優待を受けられます。ただし、出庫すると奨励金をもらえなくなるなど持株会のメリットは享受できないため、どちらがよい方法なのかを検討する必要があります。

すぐに売却できない

従業員持株会で購入した株は従業員個人の資産になりますが、普通預金のように必要になったらすぐに引き出せるわけではありません。

株を売買する際は、最低売買数量である1単元ごとになります。個人名義の証券口座を持っている必要があり、そこに持株会の株を出庫すれば売買が可能です。ただし、個人口座をつくるところから手続きを行うと、数週間を要することもあります。そのため、株価が下落したので損切のために売りたい、といったことに対応するのは難しいといえるでしょう。

また、最低売買数量に達していない株を現金に換えたい場合は、持株会を解約して買い取ってもらう手続きが必要になります。解約した場合は、一定期間の再加入ができない、または再加入自体を認めていない会社もあります。臨機応変な運用が難しい点は、従業員側にとってデメリットといえます。

6.従業員持株会を導入するには

従業員持株会は、しっかり運用できれば会社側・従業員側の双方にメリットがある制度です。しかし、導入にあたっては長期的かつ安定的に運用できるよう、綿密な準備と制度設計が必要になります。

従業員持株会を導入したい場合に、どのような検討項目があるのか見ていきます。

設立にあたって検討すること

従業員持株会の設立にあたって、具体的に決めなくてはならない事柄には主に以下のものがあります。

(1)持株会の株式保有比率

支配権の確保と節税の観点から持株会の株式保有率を決めます。

(2)出資金の拠出方法

出資金の拠出は、給与から天引きする定時拠出、会員の手持ち資金からの拠出、または併用のパターンがあります。一般には給与から天引きする拠出が多くなっています。

(3)奨励金の支給

奨励金を支給するかどうか、支給金額をどのくらいに設定するかを検討します。

(4)運営管理の方法

従業員持株会の運営管理を自社に置くか、または外部に委託するかを検討します。また、設立後の事務局の運営方法について決める必要があります。

(5)規約の策定

従業員持株会の規約について定めます。退職時の株式売買の方法も明らかにしておくことが必要です。

7.従業員持株会の導入に際して留意すべきこと

上場企業における導入数の多さや従業員加入率が維持されていることから分かるように、持株会は双方にとってメリットが生まれている制度です。福利厚生の充実を図れるとともに、モチベーションアップや経営への参加意識を高められる点で、今後も導入を検討する企業が増えることが予想されます。

一方で、持株会は長期的な運営となるため、安易な導入は避ける必要があります。従業員とのトラブルにつながらないように制度をしっかり検討したうえで、慎重に進めることが重要です。また、従業員には、事前にメリット・デメリットを十分に理解してもらうことも必要です。

従業員持株会は、従業員と経営側の信頼関係が成功の可否に影響する仕組みです。オープンで透明性のある経営への納得感を醸成することも、大切な要素といえるでしょう。

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