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ラリー・エリソンが語る 人材、チームワークと、それにより生み出される「とてつもなく偉大な」製品

2014/5/30
2月6日にラスベガスで開催されたOracle HCM Worldの基調講演で、オラクルのCEOであるラリー・エリソン(Larry Ellison)は、「従業員を『力づける』だけでは不十分。企業が本当に従業員の力をフルに発揮させたいのであれば、その実現のために設計された新世代の人材管理ツールが必要である」と語りました。

「より満足度の高い生産的な労働力は、人間を企業に、または人間同士を結びつけることで生まれます。これは、HCMに対する従来の見方とは大きく異なります」。必要とされるのは、クラウドをベースとし、設計にソーシャルとモバイルを取り入れ、企業の全員が使用する先進のHCMシステムであるとエリソンは言います。
※HCM(Human Capital Management):人材管理

カンファレンスセンターを埋め尽くした数百人のヒューマンリソース(HR)責任者からは、次のような質問がエリソンに寄せられました。「人材の獲得でオラクルはどのように競い合っているか」「オラクルは新入社員をどのように迎えているか」「人間の行動に対してテクノロジーはどのように影響しているか」「(エリソンの)個人的なモチベーションは何か」などです。

また、今回のセッションでは、ビジネスの中枢神経系としての人事部門の出現、およびそれにともなう複雑な企業の変遷に関する積極的かつ啓発的な意見交換が行われました。エリソンによれば、この拡大した役割の中で、HCMはカスタマー・サービスと共に最も重要な二つのエンタープライズ・アプリケーションとして登場しました。「すべては人なのです」とエリソンはコメントしています。

HCM Worldでは、Accenture、CEBのCorporate Leadership Council、Elizabeth Arden、Hitachi、KPMG、PwC、Siemens、Verizonなどの企業からの講演者が、この前例のない環境変化の元でHRを率いる上で直面する課題と機会について語りました。三日間にわたって行われたこのブレインストーミング・セッションのハイライトの概要は、既出の「10 Trends Driving The Mandate For Modern HCM(先進のHCMの必須条件を決める10のトレンド)」を参照してください。

ラリー・エリソン氏講演の様子

最近エリソンは、企業にとって従業員は「最も貴重な資産」であると述べています。HCM Worldで行われた公開Q&Aセッションでエリソンは、苦労して獲得した人材を維持することの重要性について述べています。「スキルを向上できている。社内で出世を続けている。もし、そう感じさせることができないのであれば、彼らをつなぎとめておくことはできません」

ここで重要な言葉は「if」です。「もし」従業員がうまく軌道にのっていると感じられなければ、退社するリスクが高まるということです。実際に、数多い先進的なHCMシステムの貢献分野の一つに、従業員の保持があります。どこかの事業部で離職率が著しく高まれば、HCMシステムの分析機能がその状況にフラグ(目印)をつけて対応を促します。

125,000人の従業員を抱えるオラクルは、これらの課題について身をもって体験しています。エリソンによれば、実際に退社する人たちの多くは、現状との大きな差別化を求めて新興企業や小規模な企業に転職します。「人々は夢を追い続けるべきだと思います。私もそうでした」

エリソンは、このような企業家的な夢の追求は、常に成功するとは限らないが、リスクを恐れぬ人々に貴重な教訓と体験を与え、将来の成功のチャンスをもたらすと語っています。

HRから外れた質問もありました。エリソンが2012年にそのほとんどを購入したハワイのラナイ島についてある人が彼の計画を尋ねると、エリソンは太陽光、風力、LNGなどのグリーンエネルギーの実現可能性に関するデモと、インフラや学校への投資の計画について語りました。

次に、人間の行動に対するテクノロジーの影響に関する質問に答えるかたちで、エリソンは最近公開された映画「her/世界でひとつの彼女」を取り上げました。この映画の主人公は、女性の人格を持つ人工知能(Artifical Intelligence)プログラムとの関係を深めます。アカデミー賞にノミネートされたこの作品の共同プロデューサーは、エリソンの娘であるミーガン・エリソン(Megan Ellison)が務めています。エリソンは、「AIソフトウェアとのバーチャルな関係には注意が必要です」と観衆を沸かせました。

「あり得ない話のように聞こえるかもしれませんが、HRにはこの話をよく考える事が必要があります。または近い将来に必要になるかもしれません。AppleのiOSの主要機能の一つであるSiriでは、仮想現実(バーチャルリアリティ)が主流となり、人間の仕事をロボットが引き受けています。オラクルのHCMトランスフォーメーションおよびThought Leadership 担当VPであるバートランド・デュサート(Bertrand Dussert)は、コグニティブ(認知)コンピューティングとロボット工学は、HRの注目リストに載せるべきだと指摘してくれました」

エリソンは若者が現実の体験を犠牲にしてビデオゲームに時間を使いすぎていると警告し、「いつになったら終わるんだ」と問いかけました。(毎日6時間をXboxに費やす高校生の親として、ぜひとも答を聞いてみたいものです)

エリソンは、テクノロジーはミレニアム世代に素晴らしい影響を同時にもたらすと語ります。現実に、テクノロジーに精通した子供たちは、HRのリクルート担当者が獲得を競い合う未来の労働力へと成長します。従業員がキャリアを積んでいく中で、企業はモチベーションとインスピレーションを与えられる方法で人材をプロフェッショナルへと育てることが重要です。エリソンは、「自分がしていることを楽しめる環境が必要」と述べています。

ラリー・エリソン氏講演の様子

エリソンは、自分自身の目標の追求と、自分がどのように試され、それを通じて自分の限界をどのように押し広げていったのかについて語りました。「この発見のプロセスこそが、大きなモチベーションとなっています」

オラクルチームUSAが9月のアメリカズ・カップで見事な逆転勝利を遂げれば、どれだけ素晴らしいことでしょう。きっと世界中が注目するでしょう。しかし、エリソンの「チェンジ・ザ・ワールド」(彼自信の言葉)のアプローチは、常にオラクルのビジネスのマニフェストでもありました。

「とてつもなく偉大な製品をいくつ世に送り出すことができますか」というエリソンの問いかけは、答を求めるものではありませんが、実現のための洞察が込められています。

このような個人的な道程とプロフェッショナルとしての自己実現が(多くの場合はその両方を組み合わせた話が)我々全員にとって重要であることは言うまでもありません。先進のHCMは、従業員の可視性を向上させることによって彼らを励まし、チャンスを与え、メンターと共に(または自分がメンターとなり)、部門や場所を超えてお互いに協力し合える環境を提供します。

行動の呼びかけ

この新しい働き方の中で、HR部門は中心的かつより戦略的な役割を果たします。「先進的な企業では、チームの構成とチームワークの実現にHR部門が大きな責任を負います」とエリソンは語ります。その好例としてオラクル社内のHRチームを挙げ、次のように述べました。「オラクルとは何かといえば、それは人です。人を見つけ人を育てることができるように、組織の構成はHR部門に任せています」

最後にエリソンは、行動することの呼びかけともとれるHRの重要性について語り、セッションを締めくくりました。「HRは企業の運命を根本的に変えることができます。HRの力によって人を探し、育て、維持することができれば、基本的に企業が成功するためのキーイネーブラーはHRです」

ここでも「if(もし)」がまた使われています。「もし」の話を「いつ」の話に変えられるかどうかは、HRの責任者にかかっているのです。

John Foley, Director, Strategic Communications, Oracle Corporation