無料会員登録

日本の人事部への登録は45秒で完了!
※登録内容はマイページで確認・変更できます。

※「@jinjibu.jp」からのメールが受信できるようにしてください。

既に会員の方はこちら

または各SNSで登録

日本の人事部があなたの許可無く投稿することはありません

既に会員の方は
こちらからログイン

ログイン

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・ログイン

ありがとうございます。会員登録が完了しました。
メールにてお送りしたパスワードでログインし、
引続きコンテンツをお楽しみください。

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・自動ログイン

会員登録とログインが完了しました。
引続きコンテンツをご利用ください。

マイページ

会員登録済み


選択したSNSアカウントは既に会員登録済みです。

邂逅がキャリアを拓く【第19回】
終わりから始まる人生――映画 “The Life of Chuck”が教えてくれたこと

YKK AP株式会社 専務執行役員CHRO

西田 政之氏

YKK AP株式会社 専務執行役員CHRO

時代の変化とともに人事に関する課題が増えるなか、自身の学びやキャリアについて想いを巡らせる人事パーソンも多いのではないでしょうか。長年にわたり人事の要職を務めてきた西田政之氏は、これまでにさまざまな「邂逅」があり、それらが今の自分をつくってきたと言います。偶然のめぐり逢いや思いがけない出逢いから何を学び、どう行動すべきなのか……。西田氏が人事パーソンに必要な学びについて語ります。

※本記事には、5月公開映画の一部物語の内容を含みます。

世界の終わりから始まる物語との出会い

機内の灯りが落ち、食事のトレイが片づけられた頃でした。スクリーンに浮かんだタイトルは“The Life of Chuck”。スティーヴン・キング原作の映画で、日本では2026年5月から「サンキュー、チャック」というタイトルで公開されます。ホラー作家の作品とは思えぬほど静かで、哲学的な匂いのする冒頭にひかれ、何気なく再生ボタンを押しました。

物語は奇妙な順序で始まります。世界が崩壊しつつあるシーンからです。街の電気が消え、人々は空を見上げます。インターネットは途絶え、自然は狂い出し、誰もが終末を悟ります。その中で、画面には見覚えのない男の顔と文字が映ります。“Thank you, Chuck. For 39 great years.”まるで広告のように、ビルの屋上スクリーンや街角のポスターにこの言葉が次々と現れます。誰だ、Chuckとは? 彼の死とともに、世界が終わるのか? そんな謎めいた導入から物語は展開していきます 。

やがて映画は時をさかのぼり、チャックの中年期、そして少年時代へと逆行していきます。彼はかつて銀行員として働き、平凡な日常を送りながら、あるとき街角で踊り出します。音楽に身を任せ、通りすがりの女性と笑顔でステップを踏むその姿には、人生の喜びが凝縮されていました。

さらに時間はさかのぼり、孤独な少年時代へ。両親を早くに失い、祖父母に育てられたチャックは、立ち入りを禁じられていた屋根裏部屋に何かが“いる”と信じていました。恐れながらもその扉を開けたとき、彼はそこで自分自身の最期の姿を目にします。しかし彼は、その運命を拒絶するのではなく、静かに受け入れ、「それでも生きてみよう」と決意します。映画は、そこから再び“始まる”ように幕を閉じます。

この作品を観ながら、私は飛行機の揺れにも増して、自分の内面に静かな揺らぎを感じました。チャックという男は、特別な英雄ではありません。どこにでもいる、少し内気で、少し不器用で、そして誰よりも人間らしい男です。けれど、彼の“終わりから始まる人生”を見つめているうちに、「人は死を想うときにこそ、生の純度を取り戻すのではないか」と思ったのです。

人生の逆再生が教える――存在は役割より先にある

私たちは、日々の仕事の中で、自分を“機能”として定義してしまうことが多いように思います。「部長として」「CHROとして」「親として」の役割が先にあり、存在が後に続きます。しかしながら、この映画が語るのはその逆です。人はまず“存在”し、そしてあとから“意味”を見つけます。まさにサルトルの言う「存在が本質に先立つ」という実存主義の再演だと感じました。

チャックは、人生の終わりに近づくほど、自分を偽らなくなります。悲しみも喜びも、恐れも愛も、全部がひとつの糸のように絡み合っていきます。

彼が踊るシーンが象徴的です。一瞬のリズムに身を委ね、彼は“誰かになる”のではなく、“誰でもない自分”に戻っていきます。そこには、内面の吐露と同時に、魂が透き通っていくような感覚がありました。そんな彼を通じて、人間の矛盾の中に宿る神聖さを見たような気がしました。

組織で働く私たちは、しばしば“内面を見せること”を恐れます。感情を吐露することは弱さだと教えられ、感情を抑えるほど成熟だと思い込みます。でも、チャックが示したのはその逆でした。内面を見せる勇気こそが、人間を純化させる。彼が涙を流しながら笑う瞬間に私が気づいたことは、不完全であること、矛盾していること、それこそが“生きている”証なのだということでした。

私自身、人事責任者として新しい組織に入るたび、最初にやってきたことがあります。それは制度を語ることでも、戦略を示すことでもありません。自分自身を、できる限り言葉にしてさらけ出すことでした。

現職の会社では、着任直後に13,000字を超えるブログを書きました。生まれてから今に至るまでの赤裸々な歩み。特に、なぜ人事を志したのか、どこで迷い、何に失敗し、それでもなお人と組織に向き合おうとしているのか。それは説明ではなく、覚悟の提示だったのだと思います。そのうえで、時間をかけて、一人ひとりの社員と向き合う。役職も評価もいったん脇に置き、「あなたは、いま何を感じていますか」と問い続ける。

不思議なことに、そうした回り道のような時間を経るからこそ、組織の言葉が、少しずつ動き始めるのを感じてきました。人は、正しい人についていくのではなく、覚悟のある人の前で、ようやく自分の言葉を探し始めるのかもしれません。

限界状況と“個人の宇宙”――死を見つめて生が立ち上がる

哲学者ヤスパースは「限界状況」という言葉を残しました。死、苦悩、罪、偶然――それらは避けられません。しかし、人は、その限界に触れたとき初めて、自らの本質に気づきます。チャックにとっての“限界”は死であり、同時に再生でもありました。彼は死の瞬間に、世界の終わりを迎えますが、それは同時に世界の始まりでもありました。なぜなら、彼の世界は“彼自身の意識”の中に存在していたからです。つまり、宇宙とは個人の心の比喩なのです。

映画の終盤、チャックの人生が静かに閉じていく中で、スクリーンに再び“Thank you, Chuck.”の文字が浮かびます。それはまるで、世界そのものが彼に感謝を告げているように見えました。

「あなたが生きてくれたから、世界が存在したのです」

そのメッセージを受け取ったとき、私は不意に胸が熱くなりました。日常の中で忘れかけていた、「生まれてきたこと、生きること自体が奇跡である」という感覚が、身体の奥底から蘇ってきたのです。

ホイットマンの詩に、こんな一節があります。

“I am large, I contain multitudes.”(私は広大です。私は多様性を内に含んでいます)

人間は、ひとりの中に無限の世界を抱えています。怒りも、愛も、羞恥も、誇りも、そのすべてを内包して生きています。チャックの物語は、まさにこの“multitudes”の具現化のようでした。一人の普通の男の人生が、宇宙のように広がり、やがてその宇宙が静かに消えていく。その消滅の美しさに、私は「有限性の詩学」を見ました。

終わりを想うことで、私たちは“今”を生きはじめる

飛行機が着陸態勢に入り、窓の外に夜明けの光が見えました。画面は暗転し、機内アナウンスが流れます。それでも私はまだチャックの世界から抜け出せずにいました。“終わりから始まる人生”というパラドックスが、頭の中でぐるぐると回っていました。

仕事においても、人生においても、私たちはしばしば“始まり”を焦ります。新しい制度、新しい戦略、新しい挑戦。しかし、本当の「始まり」は、終わりを見つめ、そこから“何を受け取るか”を考える瞬間にあるのではないでしょうか。組織改革でも、キャリアの転機でも、古い枠組みを手放すことなしに新しい創造は生まれません。チャックが屋根裏部屋で自分の最期を見つめ、それでも生を選んだように、私たちもまた、自分の「終わり」を想うことで、「今」を真に生き始めるのだと思います。

“The Life of Chuck”は、単なる物語ではありません。それは、“死を通じて生を描く”という、最も人間的な問いを静かに投げかけています。内面が吐露される瞬間と、純度が増していく瞬間。その間にこそ、人間の尊厳が宿っているのだと思います。

私たちは誰もが、チャックのように世界を内包しています。そしてその世界が、いつか終わることを知っています。だからこそ、いま隣にいる誰かと笑い、語り、踊る。その瞬間が、すでに永遠なのです。

  • 参考になった 1
  • 共感できる 1
  • 実践したい 1
  • 考えさせられる 3
  • 理解しやすい
西田 政之氏
西田 政之氏
YKK AP株式会社 専務執行役員CHRO

にしだ・まさゆき/1987年に金融分野からキャリアをスタート。1993年米国社費留学を経て、内外の投資会社でファンドマネージャー、金融法人営業、事業開発担当ディレクターなどを経験。2004年に人事コンサルティング会社マーサーへ転じたのを機に、人事・経営分野へキャリアを転換。2006年に同社取締役クライアントサービス代表を経て、2013年同社取締役COOに就任。その後、2015年にライフネット生命保険株式会社へ移籍し、同社取締役副社長兼CHROに就任。2021年6月に株式会社カインズ執行役員CHRO(最高人事責任者)兼 CAINZアカデミア学長に就任。2023年7月に株式会社ブレインパッド 常務執行役員CHROに就任。2025年6月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員、MBTI認定ユーザー、幕別町森林組合員も務める。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

オピニオンリーダーからの提言

HR領域のオピニオンリーダーによる金言・名言。人事部に立ちはだかる悩みや課題を克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。

連載をフォローすると、新着記事が掲載された際にメールでお知らせします。
フォローするには『日本の人事部』への会員登録(無料)が必要です。

無料会員登録

フォローすると、対象ジャンルの新着記事が掲載された際に通知します。
利用には『日本の人事部』への会員登録が必要です。

メールアドレスのみの登録で、15秒で完了します。

この記事ジャンル 自己啓発

無料会員登録

会員登録すると、興味のあるコンテンツをお届けしやすくなります。
メールアドレスのみの登録で、15秒で完了します。

この記事を既読にする

無料会員登録

「既読機能」のご利用には『日本の人事部』会員への登録が必要です。
メールアドレスのみの登録で、15秒で完了します。

コメント3
最新順 人気順 古い順

*****2026/04/25

東京都 情報サービス・インターネット関連

今を起点に考えると、苦悩や壁にぶつかった際にすぐに辞めたいと思うことがある。一方、今すぐやめろと言われれば、そこに抵抗する自分がいる。本当は終わらせたない。終わりを意識するからこそ、今という瞬間を、苦悩さえも、楽しめるのではないかと思う。今に挑戦できる環境に感謝しながら噛み締めたい。

good

*****2026/04/19

東京都 コンサルタント・シンクタンク

役割を果たすことばかりに囚われず、自分らしさや、自分を構成するものにも目を向けて、今を大切にしながら生きたいと感じました。

good

Ka2026/04/17

東京都 通信

素敵な記事をありがとうございます。自らつくる"存在"を輝かせていきたいです。

good
3件中1~3件を表示
  • 1

無料会員登録

コメント投稿には『日本の人事部』への会員登録が必要です。(リアクションは登録なしで利用できます)

無料会員登録

『日本の人事部』への会員登録が必要です。

コメントを書く

ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)が公開されます。

コメント
■コメント投稿に関するご注意
以下に定めるご注意をご承諾の上、コメントを投稿してください。

1.
記載されている記事や回答の内容に関係のないコメントは、ご遠慮ください。
2.
以下の内容を含んだコメントの投稿を禁止します。『日本の人事部』事務局が禁止行為に該当すると判断した場合には、投稿者に通知することなく、コメントを削除または修正することもございます。予めご了承ください。
・第三者の名誉または信用を毀損するもの
・第三者を誹謗・中傷するもの
・第三者の名誉、信用、プライバシーを侵害するもの
・第三者の著作権等の知的財産権を侵害するもの
・第三者の権利または利益を侵害するもの
・公序良俗に反する内容を含んだもの
・政治活動、宗教、思想に関する記載があるもの
・法令に違反する、または違反のおそれがある記載のあるもの
・差別につながるもの
・事実に反する情報を記載するもの
・営利目的の宣伝・広告を含んだもの
・その他、内容が不適切と判断されるもの
3.
氏名・住所・電話番号などの個人情報を記載すると、トラブルに繋がる可能性があります。絶対に記載することのないよう、ご注意ください。
4.
掲載されたコメントにより発生したトラブルに関しては、いかなる場合も『日本の人事部』事務局では責任を負いかねますので、ご了承ください。
5.
ご投稿いただきましたコメントは、『日本の人事部』や、当社が運営するウェブサイト、発行物(メールマガジン、印刷物)などに転載させていただく場合がございますので、ご了承下さい。

問題を報告

ご報告ありがとうございます。
『日本の人事部』事務局にて内容を確認させていただきます。

報告内容
問題点

【ご注意】
・このご報告に、事務局から個別にご返信することはありません。
・ご報告いただいた内容が、弊社以外の第三者に伝わることはありません。
・ご報告をいただいても、対応を行わない場合もございます。

「邂逅がキャリアを拓く」のバックナンバー