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【ヨミ】ヤリガイサクシュ やりがい搾取

「やりがい搾取」とは、労働者が、金銭による報酬の代わりに“やりがい”という報酬を強く意識させられることで、賃金抑制が常態化したり、無償の長時間労働が奨励されたりする働きすぎの組織風土に取り込まれ、自覚のないまま労働を搾取されている状態をいいます。教育社会学者で東京大学教授の本田由紀氏は、すすんで仕事にのめり込み、充実感や自己実現を得ているように見える若年労働者が、実際は経営者側がしかけた、より少ない対価(雇用の安定性、賃金)で最大の労働効率を引き出すための巧妙なからくりにより、ワーカホリックへと突き動かされていると分析し、こうした搾取構造を「やりがいの搾取」と名づけました。
(2016/9/28掲載)

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やりがい搾取のケーススタディ

やりがいをエサにして人を酷使する組織
自己実現のわなが新たな働きすぎを招く

若者と職業に関わる社会問題にくわしい本田由紀氏が、「やりがい搾取」という概念を最初に世に問うたのは2007年前後のことです。劣悪な待遇や環境下での長時間労働など、非正規雇用の若者たちによる働きすぎの問題の背景には「やりがい搾取」があると分析し、この造語を著書などで使い始めました。

従来、働き過ぎが起こるのは、「上司や同僚が残業をしていると帰りにくい」といった職場の空気が主な原因で、いわば集団圧力によって、長時間労働を強いられるからだと言われてきました。しかし本田教授は、若者による働きすぎを分析する新たな視点として、「自己実現系のワーカホリック」に焦点を当てたのです。

本田氏は「<やりがい>の搾取――拡大する新たな『働きすぎ』」(『世界』07年3月号)と題した論考の中で、コンビニ店長や歩合制のバイク便ライダー、ケアワーカー、居酒屋チェーン店員などをめぐる事例研究や企業運営の仕組みを参照しながら、「やりがい搾取」の実態とからくりをあぶりだしています。自分の好きなことを仕事にし、仕事にのめり込んでいく若者たちは、働き過ぎではあっても充実しているし、幸福であるかのように見えます。しかし実際は、経営者側が仕事の中にしかけたゲーム性・カルト性・奉仕性などのからくりによって、若者たちは巧妙にワーカホリックへと動かされている、これは「やりがいの搾取」というべきものだと、本田氏は鋭く批判しています。

本田氏によると、先述した歩合制のバイク便ライダーやケアワーカー、居酒屋チェーン店員といった職種には、(1)趣味性(好きなことを仕事にしている)、(2)ゲーム性(仕事の自己裁量性、自律性が高い)、(3)奉仕性(人の役に立ちたいという気高い動機)、(4)サークル性・カルト性といった特徴があり、それが強いほど若者は仕事にのめりこみやすく、自己実現のわなに陥る可能性が高いということです。

企業が「やりがい」「成長」といった言葉をえさにして従業員に長時間労働を強いるなど、貴重な人材を酷使する図式は、昨今の“ブラックバイト”にも通じる問題だといえるでしょう。

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