在宅就業障害者支援制度
在宅就業障害者支援制度とは?
「在宅就業障害者支援制度」とは、自宅もしくは福祉施設などで働く障害者に仕事を発注する企業に対して、障害者雇用納付金制度から助成金(特例調整金・特例報奨金)を支給する制度。障害者の就業機会拡大を図る障害者雇用促進法に定められ、2006年に導入されました。同制度では、自宅などで就業する障害者と仕事を発注したい企業を仲介する「在宅就業支援団体」(在宅就業障害者への支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた法人)の登録を行っており、企業が同団体を通じて障害者に仕事を発注する場合も、特例調整金・報奨金が支給されます。今年4月からは支給基準が緩和され、人手不足に悩む企業による活用の広がりが期待されています。
障害者と人手不足の企業、双方にメリット
助成金支給基準引き下げで活用促進に期待
「在宅就業障害者支援制度」の実績件数をみると、導入初年度の06年度は0件。以後、企業が同制度を活用する例は徐々に増えてはいるものの、13年度は11件で、累計でも全国で67件にとどまっています。その中の一つが、12年から活用を始めた神奈川県のスーパー「しまむら」(平塚市)。同店では、社会福祉法人「進和学園」(同市)が運営する福祉施設の就労継続支援B型(非雇用)の利用者が、清掃や商品の袋詰め、陳列棚の整理などの業務に励んでいます。
しまむらはすでに障害者の法定雇用率を達成しており、経営上、さらなる雇用は難しいのが実情でした。そこで、在宅就業支援団体の提案・仲介を容れ、スーパー業界で初めて在宅就業障害者支援制度を活用。業務請負(施設外就労)の形態で、障害者を受け入れることにしたのです。業務請負なら、施設外での就労であっても、直接の就業先である福祉施設側のスタッフが障害者の人事管理や指導などにあたるため、発注する企業は助成金の対象となります。仕事そのものも安心して任せられ、人手不足に悩む企業には労働力の確保に好都合。障害者も一般の人々と触れ合いながら働くことで成長できるなど、双方にメリットの大きい制度と言えるでしょう。
在宅就業障害者支援制度を活用した仕事の発注内容は、他にもウェブデザインや食料品生産、病院の清掃、自動車部品の組み立てなど、多岐に渡っています。進和学園には、本田技研工業からも制度を活用した仕事の発注があり、ホンダは08年度より自動車メーカーで唯一、国から特例調整金を受給しています。
とはいえ、先述したとおり、これまでの制度の活用状況は総じて低調でした。従来は、障害者に年間総額105万円以上の発注をした企業に6万3000円の特例調整金が支給(従業員200人以下の企業の場合は5万1000円の特例報奨金)されましたが、今春からは制度活用を促すためにこの基準が引き下げられ、企業が35万円以上の発注を行うたびに2万1000円の特例調整金が支給(報奨金は1万7000円)されることになりました。小口の発注も受給対象に含めることで、企業に仕事を出しやすくするのが狙いです。ただし、同制度の場合、企業が障害者に仕事を発注するだけで、直接雇用するわけではないため、障害者の雇用を義務づける法定雇用率には加算されません。支援団体などからは、制度活用のインセンティブとして、仕事を発注した場合も法定雇用率に加算する『みなし雇用』の導入を検討すべき、という声が上がっています。
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