キャリアロス
キャリアロスとは?
「キャリアロス」とは、労働者が休職などで職場を離れることにより、査定・昇進面でのマイナス、スキルやモチベーションの低下を招き、復帰後のキャリアに支障が出る現象を指す言葉です。日本で仕事と育児の両立や女性の管理職登用が進まない要因のひとつに、育児休業や時短勤務に伴うキャリアロスの問題があるといわれます。
長期の育休や時短はキャリアにマイナス
補助的業務ばかりで能力開発の機会失う
日本生産性本部が2014年1月に発表した「第5回コア人材としての女性社員育成に関する調査」によると、企業の課長(相当職)、部長(相当職)、役員の各役職に占める女性社員の比率は、従業員300人未満の小規模企業でそれぞれ15.5%、7.1%、6.2%、300人以上1000人未満の規模で11.0%、4.1%、1.1%、1000人以上3000人未満で6.4%、2.3%、0.9%、3000人以上の企業では4.8%、1.7%、2.7%となり、おおむね各役職とも企業規模が大きくなるにつれて、女性比率が少なくなっています。
多くの企業が女性の活躍を期待して、仕事と子育ての両立支援の推進に取り組むようになり、特に大企業では近年、法定以上の育児休業や短時間勤務を導入する企業が大幅に増えました。2、3年間の育休や、子どもが小学3年生になるまで利用できる時短制度を提供するケースも珍しくありません。それでも先のデータを見るかぎり、実際には大企業ほど女性の昇進・登用が難しく、女性活躍が進んでいないのが現状です。
そうした現状について、企業が両立支援を充実させた結果、妊娠・出産を機に離職する女性は減ったものの、単に女性が辞めなくなったというだけで、それが“戦力化”にはつながっていない、という意見もよく聞かれるようになりました。大和総研主任研究員の河口真理子氏は自身の論文で、現在のワークライフバランス推進策により、「家庭責任が主で、会社では補助的な仕事を行う女性社員」が大量に作り出されたと分析しています。優秀な女性社員が、家庭責任を果たすために、育休や時短勤務などの支援策を何年もフル活用することで、復帰後のキャリアップに支障をきたしている、つまり大量の「キャリアロス」が発生しているというのです。
「子どもが小さいうちは育児に時間をあてたい」「両立する自信がない」などの理由で、女性社員の側から管理職を辞退したり、降格を望んだりするケースも多いでしょう。また、本人がいくら優秀で意欲的でも、上司としては仕事と子育ての両立への配慮から、短時間勤務を使って復帰した女性社員にチャレンジングな仕事は任せにくいこともあります。キャリアは仕事の難易度が高まるにつれて形成されるものですが、補助的な仕事しか与えられない状況では能力開発の機会を逸し、キャリアにマイナスの影響が生じるだけでなく、本人の仕事へのモチベーションまで失われやすいのです。
育休や短時間勤務など両立支援制度の拡充には、社員にとって働き方の選択肢が広がるメリットがある一方、長期の利用によってキャリアロスが生じる可能性があることも留意しなければなりません。各種制度の導入・拡充にあたっては、ただ女性の労働時間を減らせばいいという発想ではなく、仕事のやりがいと効率を両立させながら、女性がきちんと能力を発揮できる環境の整備が不可欠。社員のキャリアロスは、雇用する企業にとっても大きなロスになりうるからです。
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