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【ヨミ】カンパニーセイ カンパニー制

カンパニー制とは、多角経営の大企業に広く普及した社内分社制の一種。企業内に存在する組織を、各事業分野を独立した会社のように扱い、大幅な権限委譲を行うとともに、責任の所在を明確化することで、収益力の強化や事業の効率化を目指す経営システムのことです。変化への対応が求められる昨今、組織体制の再編を含めた経営手法の見直しを図る企業が増えています。ここでは、カンパニー制と事業部制・持株会社制の違いをはじめ、メリット・デメリット、実施時の注意点や導入事例について解説していきます。

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1. カンパニー制とは

カンパニー制の概要

カンパニー制とは、事業分野ごとに独立採算制をとる社内分社制度のことです。それぞれのカンパニーには執行役員などを配置して、投資・人事・予算などの権限と責任を与えます。

多角経営を行う企業に多く見られる制度で、各事業分野において最適かつスピーディーな意思決定ができる状態を目指すものです。損益計算書・貸借対照表なども各カンパニーで管理するなど、会計上の独立性も担保されていることが特徴です。

カンパニー制が注目される背景

カンパニー制はもともとアメリカで始まった制度で、国内では1994年にソニーが導入したことで注目されました。それまでの事業部制を廃止して導入にいたった背景には、1992年に創業以来初の赤字へ転落したことが挙げられます。ソニーはこの組織改変により業績を大幅に改善したことから、大企業を中心にカンパニー制を導入するケースが増えています。

カンパニー制度への期待が集まった理由には、当時、多くの企業が採用していた事業部制の欠点を補うものであったことが挙げられます。事業部制には利益追求の役割が求められていたにもかかわらず、実際には重要な経営判断を事業部単独で行えない、人事権を持っていないなど、利益責任と権限に矛盾が生じていました。

独立採算制をとるカンパニー制度は、迅速な意思決定を可能にし、本来期待される利益追求の組織運営ができる形態であると考えられました。多様化する顧客ニーズへの対応力が求められる現代において、独立性を持った柔軟性のある組織形態として注目が集まっています。

2. カンパニー制と事業部制・持株会社制

カンパニー制と事業部制の違い

事業部制は特に法的な定義はされていませんが、一般的には製品・サービスごとに分けた事業部門を設置し、事業運営に必要な権限を与える組織形態のことです。それぞれの事業に適した運営を可能にし、利益向上を目指すものです。

事業部制では予算策定や業績管理を行いますが、人事や経営判断は本部が権限を持っています。つまり、事業部は利益を追求する役割を担っているが経営的な裁量は本部にある、という状態です。

これに対してカンパニー制度は一般的に、それぞれの事業部門を独立した法人のように扱います。投資の判断や人事権など経営に必要な裁量が与えられているため、カンパニーごとの判断で実質的な経営が行われます。

カンパニー制と持株会社制の違い

持株会社とは、実際的な事業活動は行わず、株式を有することで傘下企業や事業を支配する形態を指します。一般にホールディングスと呼ばれることが多く、投資権・人事権・意思決定といった権限も持ちます。持株会社には、他社の支配だけを行う純粋持株会社と、事業活動も行いながら他社支配を行う持株会社があります。

日本では戦後の財閥解体以来、持株会社の設立は禁じられていましたが、1997年に独占禁止法が改正され、解禁となりました。法改正の背景には、新規事業の成長やM&Aを妨げて企業の成長を停滞させるとして、解禁を求める声が多くなっていたことがあります。

カンパニー制はあくまでも同じ企業内で運営され、法的にも同じ法人の扱いになるのに対し、持株会社は別会社となり、法的に扱いが定められています。持株会社は企業買収や事業売却がカンパニー制よりも容易になるため、新規事業の参入や撤退の判断が早くなるという特徴があります。

3. カンパニー制を採用するメリット 

意思決定スピードが上がり収益性の向上が見込める

事業部制と比較すると、カンパニー制では経営判断に必要な投資や人事にかかわる裁量を含めた大幅な権限委譲が行われるため、より早い意思決定が可能です。「ヒト・モノ・カネ」の経営資源を最適に配分できる権限を持つことで、市場の変化や顧客ニーズへの対応力が向上し、結果として収益性の向上を見込めるというメリットがあります。

独立性の高い組織形態により事業活動の活性化が見込める

大規模な企業では、組織の細分化により決裁ルートが長く複雑になり、機動力が落ちるという課題を抱えがちです。カンパニー制は独立採算制をとるため、計画から実行までのスピードが早く、柔軟性は高くなります。また、カンパニーごとに収益責任を持たせることで、業績や収益性への意識が高まり、事業活動の活性化につながります。

経営スキルを持つ人材の育成

カンパニー制の責任者は、経営者とほぼ同等の経験を積むことになります。中長期の事業戦略策定や経営資源の配分、投資の決定など、通常の業務だけでは習得できない経営視点やスキルが身につく機会となります。将来のリーダー育成においても、メリットがあるといえます。

4. カンパニー制を採用するデメリット

カンパニー間のつながりが弱まり組織横断のシナジーが生まれにくい

カンパニー制では、事業部門ごとに縦割りの組織をつくります。そのため、同じ社内であってもカンパニーをまたいだ交流が少なくなり、情報共有が行われにくいという側面を持ちます。その結果、事業部を横断するような新規事業が発案されない、技術やアイデアが共有されないなど、多角経営で得られるはずのシナジー効果が生まれにくいというデメリットがあります。

裁量が大きいため不正・隠ぺいのリスクが高くなる

カンパニー制では重要な権限が与えられることで独立性が高まり、競争力強化につながります。しかし一方では、収益性への責任が明確になることで結果至上主義に陥りやすいというデメリットが生まれます。カンパニーに不都合な情報を隠ぺいする、不正な会計処理を行うといったリスクも浮上してきます。カンパニー制を導入するときは、事前に企業統治を行う必要があります。

重複部門が生まれコストが増大する

カンパニー制では、それぞれのカンパニーが人事や投資の権限を持つため、本来なら本部に集約されていた人事・総務・経理などの部門が重複して存在することになります。そのため、人件費をはじめ重複コストが発生するデメリットがあります。

さらに損益計算書・貸借対照表などもそれぞれに作成する必要があるため、業務も煩雑化します。現在では、人事・総務・経理部門などの業務をアウトソーシングする企業も増えつつあります。カンパニー制を導入する場合は、コスト面にも注意を払う必要があります。

5. カンパニー制導入に際する注意点

本部はカンパニーの業務に口出ししない

カンパニー制のメリットは、それぞれが権限を付与され、柔軟に決断・行動できることです。独立性の高い事業運営を可能にすることが、結果としてカンパニー制の成功につながります。そのため、本部はカンパニーの業務に干渉しないことが大切です。カンパニー制は単純な組織変更ではなく、企業運営そのものを変革するものと捉えることが重要です。

会計上の監視体制強化と透明性の確保

カンパニーは重要な権限の付与にくわえ、会計上でも独立した存在となるため、本部の目が行き届きにくいという弱点があります。カンパニー制の導入に際しては、会計関連の監視体制を強化し、透明性を確保する仕組みを整備しておくことが重要です。

不正を回避するには、社外取締役や監査役を配置し、会計監査人などと協力して厳重な監視ができる体制を整えるなどの施策が必要です。

本部は全体最適を見通したコントロールを行う

カンパニーは社内で独立した位置付けとなりますが、評価制度や評価基準にカンパニーごとのばらつきが生じると社内での公平感を欠き、従業員の不満を生む可能性があります。カンパニー制を導入するときは、本部がカンパニーを横断した全体最適を考え、統一すべきルールを定めておくことが重要です。

6. カンパニー制導入企業における組織図の具体例 

カンパニー制を導入している企業の事例を紹介します。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車では2016年4月に7カンパニー制を導入しました。これまでは技術開発本部・生産本部・車両系生産技術・デザイン本部など機能ごとに分けられていた組織を、製品を軸にした組織へ体制変更しています

これまでの機能別組織体制では、製品をつくるにあたって機能ごとの壁が立ちはだかり、意思決定や調整に時間がかかることが課題とされていました。製品を軸とした組織体制は、企画・開発・生産までを一気通貫できるため、競争力のあるクルマづくりが可能になります。

7カンパニー制では、先行型・量産型のように製品を分類しています。7カンパニーは以下の通りです。

  • 先進技術開発カンパニー
  • Toyota Compact Car Company
  • Mid-size Vehicle Company
  • CV Company
  • Lexus International Co.
  • パワートレーンカンパニー
  • コネクティッドカンパニー

トヨタ自動車がカンパニー制を導入した背景には、「もっといいクルマづくり」を目指すため、開発から製造までの一体化や人材育成を促進していく狙いがあります。また、意思決定をスピーディーに行うこと、中長期で見た経営戦略策定機能をより強化していくことを目的としています。

第1トヨタ(北米本部・アフリカ本部など)・第2トヨタ(中国本部・中南米本部など)の2ユニットは継続・強化し、新たにヘッドオフィスを設置しました。ヘッドオフィスには未来創生センターをはじめ、コーポレート戦略部や直轄部署などがあります。トヨタの本体であるヘッドオフィスと各カンパニーが連携し、各カンパニーが競争力を高めながら企業の価値向上を目指しています。

カンパニーには責任・権限を与えられるプレジデントとして専務役員が就任しています。これによって、次世代の経営を担う人材育成も行われているのがポイントです。

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、銀行・信託・証券の連携強化を目指す「ワンみずほ戦略」の総仕上げの位置付けとして、2016年4月にカンパニー制を導入しました。グループ内で横断する形で、顧客ニーズにも柔軟に対応・サービス提供できる仕組みづくりを目指しています。

今回のカンパニー制導入により、従来の10ユニット(個人、リテールバンキング、事業法人、大企業法人、金融・公共法人、国際、投資銀行、トランザクション、アセットマネジメント、市場)から、5カンパニー・2ユニットへと再編しています。お客様を第一とするマーケット・イン型アプローチの強化を目指しています。

  • リテール・事業法人カンパニー
  • 大企業・金融・公共法人カンパニー
  • グローバルコーポレートカンパニー
  • グローバルマーケッツカンパニー
  • アセットマネジメントカンパニー
  • グローバルプロダクツユニット
  • リサーチ&コンサルティングユニット

カンパニー制導入の目的は、収益性を追求する体制づくり、意思決定の迅速化などが挙げられており、本部をスリム化して人員をカンパニーへシフトしています。また、2ユニットの再編は、専門性を強化すること、全カンパニーの横断的な機能の活用を図ることが目的とされています。

みずほフィナンシャルグループは大規模な企業であるがゆえ、グループ一体となった運営が難しいという問題を抱えていました。これまでもグループ内を横断する組織は存在しましたが、それぞれの役割はあいまいで中途半端なものでした。カンパニー制導入によってそれぞれのトップが戦略を立て、収益に関しても責任を持つことになります。

7. カンパニー制が適しているか慎重に判断したうえで導入を

グローバル化が進み市場変化のスピードは今後も加速することが想定されます。企業の競争力を維持するには、素早い意思決定と柔軟な対応力が重要となってくるでしょう。

カンパニー制はこうした現在のニーズに合致する組織形態といえます。しかし、コーポレートガバナンスが重視される昨今、カンパニー制の導入に際しては監督者としての本部の役割も重要性を増しています。企業によっては、カンパニー制が適していないケースもあります。

あくまで一つの経営手法と捉え、メリット・デメリットなどを踏まえて導入を検討すべきでしょう。

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