配偶者転勤休業制度
配偶者転勤休業制度とは?
「配偶者転勤休業制度」とは、配偶者の転勤に同行を希望する社員に対して休業を認める制度のことです。配偶者の海外や遠隔地への転勤に同行するために、自社の社員が離職を余儀なくされることを回避するのがねらいで、制度を導入している企業・団体の多くでは、配偶者の勤務先が社外でも適用されます。2013年秋には国家公務員や地方公務員にも同様の休業制度を創設する法律が成立、同年度中に施行される見通しです。
配偶者の海外転勤に対応するしくみ
公務員への導入を民間普及の弾みに
2013年11月15日の参議院本会議で、国家公務員が配偶者の海外転勤に同行する場合、最長3年間の休職を認める「配偶者同行休業法」が全会一致で可決、成立しました。人事院の申し入れを受けて法制化された休業制度ですが、かねて森雅子少子化対策担当相が人事院に対し、「配偶者の海外転勤や留学時に休業する制度がないため、泣く泣く離職している現状がある」として、新制度創設を訴えていた経緯がありました。人事院によると、こうした事情で離職する公務員は女性を中心に5年間で少なくとも約20人にのぼり、外務省などからも同様の要望が出ていたといいます。
職員の配偶者が公務員、民間企業勤務のいずれでも同制度の対象となり、休職期間中の給与は支給されません。職員の休業で人員減となる職場には、その間の臨時職員の採用が認められます。また地方公務員にも同様の制度創設を認める改正地方公務員法も、同時に可決、成立しています。
配偶者が海外や遠方へ転勤になっても夫婦で一緒に住み続け、家庭も自身のキャリアもあきらめたくない――そうしたニーズに対応することで優秀な人材の離職を防ごうとする施策は、民間でも広がりつつあり、「配偶者転勤休業制度」を導入する企業も増えてきました。大手商社の丸紅では06年7月から同制度を実施。在籍中2回まで、配偶者の海外転勤に合わせて最大3年間休職することができ、休暇が終わればすみやかに職場復帰ができるようになっています。資生堂や三菱化学も同じく最大3年間の配偶者転勤休業を認めていますし、キリンビールでは適用対象が配偶者の海外転勤に限られず、留学や海外ボランティアに参加する場合も最大3年間休職して同行できるしくみになっています。
「休職して配偶者に同行」をさらに一歩進めて、「配偶者と同じ場所で働き続けられる」ところまで対応しているのがプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)です。同社では、社員が配偶者や恋人の海外勤務に同行を希望する場合、キャリアが途絶えないよう同行先への配置転換を検討する「配偶者転職同行制度」を導入しています。配偶者や恋人が社外の場合でも異動の希望をできるだけ尊重し、現地に適切なポジションがなければ、休職して同行することも認められています。
とはいえ、こうした事例はまだ一部の先進企業に限られているのが現実。人事院の調査では、配偶者転勤休業制度が設けられている企業はわずか1%でした。公務員に導入されることで、あとに続く民間企業がどれだけ増えるか――波及効果が期待されます。
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