ジョブコーチ
ジョブコーチとは?
「ジョブコーチ」とは、「職場適応援助者」の別称で、障がい者が一般の職場で就労するにあたり、障がい者・事業主および当該障がい者の家族に対して障がい者の職場適応に向けたきめ細かな人的支援を提供する専門職を指します。2002年(平成14年)に厚生労働省が創設した「ジョブコーチ支援制度」によって導入されました。障がい者が円滑に就労できるように職場内外の支援環境を整え、障がい者の雇用の促進および職業の安定に資することがジョブコーチ支援の一番の大きな目的です。
障がい者就労へ本人・職場・家族を支援
法定雇用率引上げが企業の活用動機に
障がい者が一般の職場で働けるように障がい者と企業の双方を支援する「ジョブコーチ」の概念と方法論は、1986年にアメリカで”Supported Employment”(援助付き雇用)として初めて制度化され、日本には80年代末に伝わりました。日本では当初、雇用前の職場実習において生活支援パートナーが援助する形で、障がい者雇用に一定の成果を上げていましたが、雇用後に不適応を起こし離職してしまうケースも少なくありませんでした。
そこで厚生労働省は、ジョブコーチによる雇用後の支援を試験的に実施。その有効性を確認した上で、2002年5月から知的障がい者や精神障がい者の雇用支援事業としてジョブコーチ支援制度をスタートさせました。これは障がい者が職場に適応できるように、ジョブコーチが職場に直接出向いて本人を支援するとともに、雇用主や職場の上司・同僚・部下、さらには障がい者の家族にも本人の職場適応のために必要な助言を与えるしくみです。
ジョブコーチによる支援は具体的な目標と支援計画に基づいて実施されるもので、その内容は支援対象によってそれぞれ次のように分かれます。
【障がい者本人に対する支援内容】
・作業遂行能力の向上支援、職場内コミュニケーション能力の向上支援、健康管理および生活リズムの構築支援
【雇用主に対する支援内容】
・障がい特性に配慮した雇用管理に関する助言、配置や職務内容の設定に関する助言
【職場の従業員に対する支援内容】
・障がいの理解に係る社内啓発、障がい者との関わり方に関する助言、指導方法に関する助言
【障がい者の家族に対する支援内容】
・安定した所業生活を送るための家族の関わり方に関する助言
本制度の下で稼働するジョブコーチは、(1)障害者職業センターに所属するジョブコーチ(2)民間社会福祉法人などに所属するジョブコーチ(第1号職場適応援助者)(3)障がい者を雇用する企業に所属するジョブコーチ(第2号職場適応援助者)の3種類に分かれます。05年には「ジョブコーチ助成金制度」が新設され、(2)および(3)にかかる費用が助成金の対象になったことにより、障がい者をよく知る身近な地域の社会福祉法人などが生活支援とあわせてジョブコーチ支援を担うとともに、障がい者を雇用する企業自らもジョブコーチを配置し、自社内で必要な援助を行うことが期待されています。なお、ジョブコーチは資格ではありませんが、上述の第1号、第2号職場適応援助者とも一定の研修を受講修了することが必須の要件となります。
13年4月1日からは、障がい者の法定雇用率が従来の1.8%から2.0%に引き上げられました。身体障がい者と知的障がい者に加え、新しく精神障がい者を雇用義務対象に含める法改正も議論されています。障がい者と企業現場を結ぶジョブコーチの役割が今後、さらに重要性を増していくことは間違いありません。
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