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【ヨミ】アンゼンハイリョギム 安全配慮義務

労働契約法第5条では、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」として、使用者が労働者に対して負うべき労働契約上の付随義務を定めています。これを「安全配慮義務」と呼びます。使用者がこの義務を怠り、労働者に損害が発生した場合、使用者は労働者に対して損害賠償責任を負うことになります。
(2013/2/8掲載)

安全配慮義務のケーススタディ

危険地域進出に伴うリスク管理が課題に
今後は社員の赴任拒否も認められる!?

企業の従業員は普通、会社の指定した場所で、会社の用意した設備や器具を使用し、会社の指示で業務を遂行しますから、そのかぎりにおいては、社員自身の不注意でケガなどの損害を負ったとしても、社員の自己責任で済ますわけにはいきません。使用者には、労働者が安全に職務に従事できるよう配慮すべき義務――「安全配慮義務」が法律で定められているからです。これは、自衛隊員の職務上の事故に関して国に安全配慮義務違反による損害賠償責任があるかどうかが争われた、「自衛隊八戸車両整備工場損害賠償事件」の最高裁判例(1975年2月25日判決 民事判例集29巻2号143頁)によって形成された法理に基づく考え方です。

労働契約法では、安全配慮義務の内容を具体的に規定していません。必要な配慮は仕事内容や職場環境によって当然異なりますが、使用者が義務を履行するためには原則的に、事故が起こるかもしれないと想定できるものについてすべて対応することが求められます。例えば安全装置を取り付けるべき機械には安全装置をとりつけたり、社員に対して安全教育を徹底したり、心身の健康を損なう過重労働や各種ハラスメントへの対策を講じたりといったことが挙げられます。

一方で、近年は企業活動の多様化、複雑化、グローバル化などに伴い、社員の安全確保に関する配慮義務の範囲もさまざまな広がりを見せています。2013年に1月にアルジェリアで発生した武装勢力による人質事件では日本人を含む多くの尊い人命が奪われました。治安リスクの高い国や地域で日本企業が事業展開する難しさをあらためて浮き彫りにした事件といえます。

企業の安全配慮義務は当然のことながら、海外で働く社員も対象となります。リスクのある国・地域でビジネスをする際、企業はそのリスクに応じて、社員の安全確保に万全を尽くさなければなりません。危険度の高い国・地域に派遣するスタッフに対しては、事前に教育の機会を設け、現地情報をもとにテロや暴動、自然災害など具体的にどんなリスクがあるのか、安全対策はどうするのかなどを十分に理解してもらう必要があります。三井物産では、海外赴任前に2日間程度の研修を義務づけ、生活面や安全面だけでなく、カルテルや汚職、ハラスメントなどの法令違反に関する注意を促しています。

会社の人事権に基づく正当な業務命令であれば、一般に社員は海外赴任を拒否することはできません。しかしアルジェリア人質事件が日本社会にもたらした衝撃の大きさを考えれば、これを機に安全配慮義務がさらに厳しく問われ、同時に企業の業務命令権が狭められる可能性も少なくありません。

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