【ヨミ】シャカイテキキギョウ 社会的企業

「社会的企業」とは、営利を目的とせず、事業を通じて社会的な目的の達成をめざす企業やNPOなどのことです。英語ではソーシャル・エンタープライズ(Social Enterprise)と呼ばれ、環境や福祉、教育など社会的課題の解決に経営やビジネスの手法をもって貢献すること――すなわち「ソーシャル・ビジネス」に取り組む事業体を指します。また、そうしたビジネスモデルを創出した起業家を「社会起業家」と呼びます。
(2012/7/30掲載)

社会的企業のケーススタディ

社会的で革新的かつ持続可能な事業を
日本では経営基盤や雇用の脆弱さに難

貧困問題、障がい者福祉、環境保護、地域再生、途上国支援――私たちの社会は今日、さまざまな課題に直面しています。かつては、政府や自治体が公共サービスの一環としてそうした社会的課題を管理し対応すべきだと考えられ、実際、その役割の多くは行政によって担われてきました。しかしすべての課題に対応しきれるわけではありません。まして国も地方も財政状況が悪化していく中で、公共サービスの民営化の流れが強まるのは必然といえるでしょう。

そして1980年代以降、時代と社会が解決を求める多くの社会的課題に対して、寄付や公的な支援だけに依存するのではなく、採算性をともなう自立的で持続可能なビジネスモデルを構築し、事業として継続的・安定的に取り組もうとする動きが、世界各地で興り始めました。利潤最大化を目的とせずに、社会的ミッションの達成を事業化する「社会的企業」の活動が広がっていったのです。マイクロクレジットといわれる無担保少額融資のしくみによってバングラデシュの貧困層の自立を支援し、2006年のノーベル平和賞を受けたムハマド=ユヌス氏のグラミン銀行がその典型例でしょう。

社会的企業という場合、実際には会社もあれば、NPOや協同組合も含まれ、決して特定の組織形態を表すわけではありません。むしろその役割やコンセプトに焦点をあてた概念といえます。非営利組織に詳しい明治大学の塚本一郎教授は、社会的企業の特性には、(1)誰も手をつけようとしなかった分野や問題に起業家精神をもってチャレンジする革新性(2)ビジネスとしての持続性と安定性(3)社会性と事業性、市場性と非市場性を組み合わせて自らのミッションを遂行するハイブリッド(複合的)な組織特性、の三点があると言います。

日本で社会的企業の考え方が普及し、本格的に注目を集めたのは今世紀に入ってから。2004年に発足したNPO法人フローレンスは、採算がとりにくく、誰も手をつけなかった「病児保育」という課題の解決を事業化し、経済的な価格でのサービスの提供を実現しました。また栃木県足利市の有限会社ココ・ファーム・ワイナリーでは、知的障がい者更生施設の園生の自立支援として、彼らが自家栽培した葡萄を原料に高級ワインを製造・販売、内外から高い評価を得ています。

しかし欧米の社会的企業が事業を積極拡大し、雇用創出にも貢献している現状と比べると、日本の社会的企業ではまだ福祉的就労である場合が多く、雇用との結びつきが弱いのが実状。これでは、経営も弱いといわざるを得ません。一方で、近年はCSR(企業の社会的責任)への関心の高まりを受けて、営利企業でも社会的視点から事業プロセスを改良するなど、社会性を向上させる取り組みが活発です。経営基盤を強化したいNPOなど非営利団体と、事業性だけでなく社会性も高めたい一般企業との補完的な協働に新たなソーシャル・ビジネスの可能性が期待されています。

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