リフレクション
リフレクションとは?
日本語で「内省」の意。人材育成の分野における「リフレクション」(reflection)とは、個人が日々の業務や現場からいったん離れて自分の積んだ経験を「振り返る」ことを指します。過去に起こった出来事の真意を探り、その経験における自分のあり方を見つめ直すことで、今後同じような状況に直面したときによりよく対処するための「知」を見出そうとする方法論です。
経験は振り返ることで成長の糧となる
自己開示と他者との対話がきっかけに
企業内人材育成では、実際の仕事を経験学習と位置づけ、各人の成長を念頭に与える必要があります。ただし「経験さえしていれば人は勝手に成長する」というものではありません。充実した経験は「内省」を通じて初めて活かされ、能力向上を促す糧となるのです。内省=リフレクションは、仕事と仕事において経験することの意味を本人に気づかせ、成長の実感をもたらします。
内省は「反省」とどう違うのでしょうか。反省とは、過去の経験において何がどう悪かったのか、つまり自らの言動の非についてよく考え、その理由や原因を探ることです。研修や勉強会など「学び」の機会で、単に失敗しないように学ぶだけならば、反省で事足りるかもしれません。過去の誤りを認めて、同じ轍を踏まないように注意すれば十分です。しかし失敗を機によりよく対処する術を学びたい、あるいは特に失敗してはいないけれど、過去の経験を踏まえてもっとうまい方法を見つけたい、より多くの成果を上げたいといった場合はどうでしょうか?
本人が「悪かった」と自覚している点を反省するだけでは不十分で、無意識かつ暗黙に行ってきたことまでも含めて過去の経験を振り返り、自分はどうあるべきかをたえず問い直していかなければならない――「内省」を次の仕事に活かし続けることが求められるのです。近年の複雑なビジネス環境では、一人ひとりの真摯な内省なくして、個人の成長も組織の成長も考えられないといえるでしょう。
共著書『リフレクティブ・マネジャー』で内省の重要性を論じた中原淳・東京大学大学総合教育研究センター 准教授によると、経営学において「内省」に初めて注目したのは、マサチューセッツ工科大学で組織学習の研究に取り組んでいたドナルド・ショーンです。彼は、一般企業のマネジャーから医師、科学者、建築デザイナーといった専門職までさまざまな仕事の現場を観察し、その特徴に内省があることを見抜きました。不安定で不確実な現場に身を置く実務家は、働きながら刻一刻と変わる状況を振り返り、その中で自分はどうあるべきかを瞬時に読み解いていく。こうした仕事のあり方を、ショーンは「行為の中の内省(reflection in action)」と名付けました。
リフレクションのさらに重要な点は、それがしばしば“他者との対話”によって促されるということです。内省を自分独りで実践するのは難しいもの。「語るべき他者」「応答してくれる他者」に自分の経験を語るという行為を通したほうが、人は自分を見つめ直すことができると中原教授も述べています。自分のあり方や行動について自己開示し、誰かと経験を共有するほど内省は深化する。無意識かつ暗黙に行ってきた事柄にまで、より高次な視点を向けられるようになるのです。現に昨今、参加者相互の内省を支援しあうワークショップや体験セミナーにも注目が集まっています。“反省会”や“つるしあげ”ではなく、リフレクティブで前向きな会話を重ねる中で自他の考え方の差異に気づき、またときに他人の視点から刺激をうけて、とらわれていた固定観念を打破するといったシナジーを得られるのがこうした研修プログラムの特徴です。
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