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【ヨミ】カンジョウロウドウ 感情労働

「感情労働」とは、アメリカの社会学者A.R.ホックシールドが提唱した働き方の概念で、感情の抑制や鈍麻(どんま)、緊張、忍耐などを不可欠の職務要素とする労働のことです。体力を使って対価を得る「肉体労働」やアイデアなどを提供する「頭脳労働」に対して、感情労働に従事する者はつねに自分自身の感情をコントロールし、相手に合わせた言葉や態度で応対することが求められます。
(2011/3/14掲載)
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感情労働のケーススタディ

サービス業に求められる労働の要素
顧客満足を競うあまり、過剰な負担も

ホックシールドによると、感情労働は「相手に感謝や安心の気持ちを喚起させるような、公的に観察可能な表情や身体的表現をつくるために行う感情の管理」と定義されています。肉体労働か頭脳労働かという単純な分け方でいうと、従来、感情労働は頭脳労働の一種と見なされてきました。しかし一般的な頭脳労働よりも本人の感情面に労働の負荷がかかりやすく、仕事が終わっても「充足感や達成感を得にくい」「気が抜けず、精神的なストレスやプレッシャーを抱え続けなければならない」といった特徴があります。感情労働に従事する人は、たえず相手の要求や主張、クレームを受け止める役割を担い、たとえその言い分が理不尽なものでも、自己の感情を押し殺す厳しい自制心をもって、穏便かつ的確な対応・サービスを提供しなければなりません。

かつては乗客からのどんな無理難題にも笑顔で応える旅客機の客室乗務員(キャビンアテンダント)がその典型とされていましたが、近年では“モンスター化”した利用者に悩む医療職や介護職、カウンセラー、コールセンターのヘルプデスクなどを含む対人サービス業全般にその要素が含まれてきました。より広くとらえると、たえずクライアントに接する企業の営業職にも感情のコントロールは求められます。いずれにせよ、産業構造のサービス化が進む中で、こぞって顧客満足度を競うあまり、感情労働を強いられる仕事や職種が増えてきたのは事実でしょう。

サービス業のプロは、こうした感情のコントロールを自らの仕事として明確に意識し、日々前向きにその術を磨いているからこそ、最高のサービスが提供できるのです。しかし一方で、肉体労働や頭脳労働の疲労は休憩、休暇によって回復することが可能ですが、感情労働にともなう感情の疲労や心の傷は、単に体を休めただけでは回復しにくいといわれます。仕事が終わっても、相手から投げつけられた厳しい叱責や罵倒の言葉などが頭を離れず、気持ちの切り替えができない。その結果、ストレスによるメンタルヘルスの不調を発するケースも少なくありません。また対人サービス業に従事する人が陥りやすいバーンアウト(燃え尽き症候群)も、過剰な感情労働の影響が大きいといわれています。相手に対する不満や怒りといったごく自然な感情をあまりにも抑えつけ過ぎて、感情的なエネルギーが枯渇し、燃え尽きてしまうのです。企業としてより良いサービスを追求するには、従業員がそうなる前に、感情面のケアも必要になってきます。

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