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【ヨミ】インクルージョン インクルージョン

インクルージョン(inclusion)とは日本語で「包括」と訳される言葉で、組織内にいる誰もが「その組織に受け入れられ、認められていると実感できる状態」を指します。もともと社会福祉の分野で提唱され、やがてビジネスにおいてダイバーシティ(多様性)を支える考え方として広がりました。

インクルージョンの広がり

「インクルージョン」は1980年代にヨーロッパで生まれた福祉政策上の概念で、「社会的包摂」という意味があります。その後、教育やビジネスの領域でも「インクルージョン」という考えが提唱されるようになりました。

ヨーロッパにおける社会政策のコンセプト

社会的弱者を支えるための概念

「インクルージョン」という概念が生まれる前、1960年代のフランスでは「社会的排除」という言葉が使われるようになります。このときに「社会的に排除された人々」とされたのは、薬物やアルコールの依存者、施設に入っている児童などでした。

1980年代に入ると、フランスでは長期失業や不安定な就労が原因で社会保障を十分に受けられない人が増え、新たな貧困層が形成されます。彼らは住宅を失ったり、子どもに十分な教育を受けさせることができなくなったりするなど、社会に参加する機会を失っていったことから「社会的に排除された人々」として見なされるようになりました。

同様の問題は、フランス以外にもヨーロッパの国々で起こりました。こうした背景のもと、社会的弱者を「社会の中で支える=社会的包摂」の必要性が唱えられ、「インクルージョン」という概念が生まれました。

欧米における教育の機会均等を達成するためのコンセプト

教育分野で「インクルージョン」という考えが示されたのは、1994年に採択された「サラマンカ声明」でした。いじめに遭っていたり、学習が困難で授業についていけなかったりしている子どもや障がい児、戦争の犠牲になっている子ども、虐待を受けている子どもなど、教育を受ける権利を享受できていない全ての子どもが、大勢の子どもたちと分けるのではなく、普通の教室の中で教育を受けられるようにすることを目指すものです。

また、アメリカでも1990年に「個別障害者教育法」が施行され、障がいを持つ子どもが通常の教室で教育を受ける“インクルージョン教育”が進められてきました。「個別障害者教育法」とは、障がいのある児童・生徒でも高い期待度で受け入れられ、できる限り通常のカリキュラムにのっとった教育を受けられる状態を目指すというものです。

アメリカのビジネスシーンにおけるコンセプト

福祉や教育の分野では、「弱い立場の人を切り離すのではなく、大きな枠組みの中で受け入れ、支援しながら彼らの能力に期待する」というインクルージョンの概念が提示されてきました。

アメリカのビジネスの世界で「インクルージョン」という言葉が登場したのも、1990年代のことです。「集団の構成」を表すダイバーシティと区別するため、「インクルージョンとは、メンバーが参加を許可されたグループの中で十分に貢献できている状態」と定義したことが始まりです。

福祉・教育・ビジネスのそれぞれの分野で唱えられてきた「インクルージョン」という言葉ですが、「特別な事情を抱えている人が、ある集団の中で疎外されることなく存在できる状態」という意味においては共通していると見ることができます。

日本のインクルージョンの始まり

2010年の経団連の資料より

日本での「インクルージョン」が「ダイバーシティ」とセットになったのは、2010年代ころでしょう。2010年には経団連が「企業行動憲章実行の手引き(第6版)」で「バリアフリーやノーマライゼーションの促進なども含めて、意識・風土の改革などを進めながら、国籍、性別、年齢、障害の有無等を問わず、多様な人材が十分に能力を発揮できる職場環境を整備する 」と述べています。

ここでの「多様な人材が十分に能力を発揮できる職場環境を整備」という表現には、インクルージョンの概念が含まれているといえます。

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