ファーム・スペシフィック・スキル
ファーム・スペシフィック・スキルとは?
ある企業の中でしか通用しない固有のスキルを「ファーム・スペシフィック・スキル(Firm specific skill)」と呼びます。どんな仕事や職場でも活用できる汎用性の高いスキルを「ポータブルスキル」と呼びますが、それとは対をなすものです。例として、自社商品の説明能力、イントラネットの使い方、担当者への根回しなどの社内調整力が挙げられます。終身雇用制度が機能していた時代はファーム・スペシフィック・スキルが強みになりましたが、人材の流動性が高まっている現在は獲得すべきスキルを見極めることが重要になっています。
限りある時間をどう使う?
転職時代に考えたい有用なスキル習得
会社生活が長い人ほど、業務を円滑に進めるための「社内ハック」を数多く知っているものです。資料がどこに格納されているのかに詳しかったり、「あの部署だったら〇〇さんの対応が良い」などと社内ネットワーク情報を豊富に持ち合わせていたり。社内のことを知り尽くしている人は、職場で重宝されるでしょう。しかし、その知識はその会社でなければ価値を発揮しません。
日本企業は、ファーム・スペシフィック・スキルを大切にすることで高い定着率を維持してきました。スキルベースの採用ではなく、人ありきのメンバーシップ型採用を行い、自社ならではのスキルを尊重する風土を醸成することで、従業員による会社へのコミットメントを高め、定着率を向上させてきたのです。
しかし、終身雇用を貫く人は今や少数派。リクルートの調査によると、2022年時点で「転職をしたことがある」と回答したのは、20代が37.4%、30代が52.8%、40代が59.9%、50代が58.0%。50代までに約6割の人が転職を経験していることがわかりました。今後はさらに増えていくかもしれません。
ファーム・スペシフィック・スキルを磨くことには、業務の効率化や社内でのプレゼンス向上といったメリットもあるでしょう。しかし、社内スキルを高めるために時間を割いたことで、他の環境で働いていれば身につけられたスキルやキャリアを失っていることも考えられます。
すぐに転職を考えていなくても、外国語、プログラミング言語、マネジメントなどのポータブルスキルを磨くことは社内でのキャリア開発につながります。今磨いているスキルは、働く場所を変えても通用するものなのか。転職の時代を生き抜くには、中長期的な視点を持つことが重要です。
参考:「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」第1弾 転職経験や転職意向等について|株式会社リクルート
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