非生産的職務行動(Counterproductive work behavior)
非生産的職務行動(Counterproductive work behavior)とは?
「非生産的職務行動」とは、組織やメンバーの利益に反する、非協力的な従業員の行動のことを指します。例えば、ハラスメントやいじめ、遅刻やずる休み、法律や法令違反、不正の隠蔽などが該当します。英語の「Counterproductive Work Behavior」の頭文字をとり、「CWB」と略されることもあります。1990年代以降、米国の組織心理学や経営科学といった分野で盛んに研究されるようになりました。非生産的職務行動には反社会的行動、機能不全行動、逸脱行動、攻撃行動、不作法という五つの概念があります。
職場を乱す傾向を分析する指標にもなる
組織に不利益を与える五つの行動
これまで多くの企業が「経験と勘」を頼りに採用活動を行ってきましたが、少しずつ変化の兆しが見え始めています。HRテクノロジーという言葉が浸透しているように、客観的なデータをもとに採用活動を行う企業が増えてきました。自社におけるハイパフォーマー・ローパフォーマーを分析する際には、さまざまな指標が用いられます。その人の特性と、業績や人事評価を照らし合わせることが多いですが、米国ではネガティブな要素を洗い出すため、非生産的職務行動を指標に用いることもあります。
非生産的職務行動には、次の五つの概念があります。
(1)反社会的行動
五つの中で最も幅広い概念で、放火や贈賄、詐欺などの犯罪行為はもちろん、ハラスメントや虚偽、機密性の侵害、ずる休みなども含まれます。組織や組織に属する人、利害関係者を害するすべての行動が当てはまります。
(2)機能不全行動
組織内の個人や集団、あるいは組織自体に対して良くない結果をもたらすものです。他人や自分の福利を害する行為(身体的・心理的暴力、ハラスメント、アルコール・薬物乱用、喫煙)や、組織に対する有害な行動(財産の窃盗・破壊、法律違反、機能不全にする印象操作など)を指します。
(3)逸脱行動
組織の規範に著しく背くもので、組織・メンバーの福利を脅かすもの。備品の破損や盗難のほか、勝手な早退、わざとゆっくり仕事をすること、言葉の暴力や職場の噂話なども含まれます。
(4)攻撃行動
逸脱行動の中でも、誰かに危害を加えようと意図して行われる行為。誰かを傷つけようと試みることが攻撃性で、実際に傷つけることが暴力と区別されます。
(5)不作法
職場における不作法は、対象に危害を与えようとするはっきりとした意図はなくても、単に対人的な配慮を欠いた言動を指します。しかし、不作法が連鎖することによって、攻撃性をはらんだ行為へと発展していくこともあります。
こういった問題行動の裏には理由があるものです。もともと持ち合わせているパーソナリティによる影響のほか、組織の評価に公平性がなく不満を抱えていたり、仕事上の制約によるストレッサーや対人関係に葛藤を抱えていたり。そういった職場への不満が非生産的職務行動につながることもあります。職場の安全性を保ち、従業員に生産性高く働いてもらうためにも、従業員満足度を調査するなどして、職場環境の改善に真摯に取り組むことが重要です。
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