ダイナミック・ケイパビリティ
ダイナミック・ケイパビリティとは?
「ダイナミック・ケイパビリティ」とは、環境の変化に合わせて保有するリソースを組み替え、適応するように自己変革していく能力のことを意味します。既存の資産や資源、知識などを再構築し、持続可能な競争優位性を作り上げていく経営戦略のフレームワークの一つで、未来を見通すことが困難な時代に必要な経営能力として知られています。経営学者でカリフォルニア大学バークレー校教授のデイビッド・ティース氏が提唱しました。
ダイナミック・ケイパビリティが
日本企業に適している理由
平成元年(1989年)、世界の時価総額ランキングのトップ50のうち、32社は日本企業でした。首位はNTTで、以下、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一動業銀行と、トップ5を日本企業が占めています。しかし、平成31年(2019年)の時価総額ランキングでトップ50に入ったのは、43位のトヨタ自動車のみ。首位からアップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(Googleの親会社)と続き、米国企業が存在感を発揮しています。なぜ日本企業は凋落してしまったのでしょうか。(参考:START UP DB 2019/7/17)
ランキング上位の企業に共通しているのは、ダイナミック・ケイパビリティがある点です。変化の激しい環境で、付加価値を最大化させるためにパラダイムシフトを起こすことができたかどうかが、その後の運命を左右しました。多くの日本企業は、この数十年でコスト削減を行いつつ、利益を上げようとしてきましたが、成功した時代の価値観から抜け出せず、変革に至らなかったのかもしれません。
しかし、ダイナミック・ケイパビリティがあったことで成長を遂げた日本企業も存在します。例えば、富士フイルムは1990年代、米イーストマン・コダックとともに写真フィルムのトップメーカーでした。その後、デジタルカメラの普及により、写真フィルムの需要は大きく落ち込んでいきました。コダックは高い技術力を持っていましたが、資源を有効利用できずに2012年に倒産。一方、富士フイルムは、保有する技術を活用してヘルスケア事業への進出など事業を多角化することで、成長を加速していきました。ダイナミック・ケイパビリティの有無によって、はっきりと明暗が分かれた一例といえるでしょう。
『ダイナミック・ケイパビリティの戦略経営論』を著した慶應義塾大学の菊澤研宗教授は、「日本企業はダイナミック・ケイパビリティに通じる特徴を持っている」と述べています。日本企業は「総合職」という雇用システムが一般的なため、目的が明確でジョブ型採用が一般的な米国企業とは異なり、状況に応じた組織再編や職務転換が行いやすいからです。日本式ならではの強みを発揮する場合には、企業は付加価値を最大化させることを第一に、総合職を再評価する必要があるかもしれません。
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変化に強い組織を作る「ダイナミック・ケイパビリティ」
・参考
平成最後の時価総額ランキング。日本と世界その差を生んだ30年とは?(STARTUP DB)
日本企業のダイナミック・ケイパビリティと組織開発の未来を考える(スコラ・コンサルト)
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