賃上げ1.0とは生活給与の仕組み
日本企業における賃上げ1.0を一言で定義するなら、生活給与の仕組みでした。
生活を保障する給与は、従業員を会社に依存させる仕組みを強化します。それはまた求める人材像のシンプル化でもありました。男性中心のステレオタイプな熱血サラリーマン像をつくりあげ、専業主婦としての家庭モデルを作り上げ、日本社会としての共有幻想を作り上げました。
しかし失われた数十年の中で、従業員による会社への依存を会社側が否定し始めます。社内の平均年齢が上がり続ける中で、業績は横ばい。だとすれば生活を保障する年功的な昇給は維持できません。また終身雇用すら守りづらくなります。
また、高齢化は、メンバーシップ雇用の終わりが楽園ではない事実を浮き彫りにしました。年金だけでは生活できないからです。しかし再雇用時には給与水準は大幅に引き下げられます。政府が法令により、同一労働同一賃金を促進しますが、高齢化による生産性低下は、給与の引き下げを是としてます。
かくして生活給与としての賃上げ1.0はゆるやかに終焉を迎えようとしています。それではもう企業がもたないからです。

賃上げ2.0はビジネスモデルごとの利益率による仕組み
では、生活給与が終わろうとする中で、次に企業が採用すべき賃金の仕組みは、いわゆるジョブ型雇用を前提としたものでしょうか。新卒一括採用、終身雇用という概念との対比の中で、会社と労働市場を自由に行きかうような、転職が当たり前の仕組みととらえられがちです。そのため、ジョブ型の賃金の仕組みは、労働市場価値、すなわち転職時にいくらの値段がつくのかということから定まると考えてしまいます。
しかし労働市場における価値そのものがどう決まるのか、ということを考えてみれば、本質は違って見えてきます。
労働市場価値による賃金の仕組みとは、儲かっていない会社から儲かっている会社への、人材の流動性を高める、人材マッチングの仕掛けにすぎないのです。
だからこそ、賃上げ2.0は労働市場対応の仕組みではなく、「ビジネスモデルの違いを前提とした賃金決定＝利益貢献」としてとらえなければいけません。

◆失われた30年が終わり、選別と多様化の時代が始まる
・賃上げ1.0とは生活給与の仕組み
・賃上げ2.0はビジネスモデルごとの利益率による仕組
・仕組みを作る人と動かされる人の賃金の仕組みは根本的に異なる
・シェアリングエコノミーにみる賃上げ2.0の構造
◆自社に適用する賃上げ2.0
・第1ステップ：まず自社の中の役割を見極める
・第2ステップ：離職というバケツの穴をふさぐ
・第3ステップ：役割別の賃金制度
役割(1)「安定志向人材」
役割(2)「成長志向人材」
役割(3)「改善志向人材」
役割(4)「創出志向人材」
・第４ステップ：採用強化は年齢を問わない提示給与の差別化
・第５ステップ：インフレ対応は値上げとあわせて考える

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