ミスマッチ失業率
ミスマッチ失業率とは?
「ミスマッチ失業率」とは、求人があっても、職種や年齢、技能、勤務地などの条件面で企業と求職者の希望が折り合わないために生じる失業率のことです。労働力人口に対する失業者の割合を示す完全失業率は失業の原因によって2種類に分かれ、一つは求職者数に比べて求人数が足りないことに起因する循環的失業率(需要不足失業)、もう一つがミスマッチ失業率です。求人需要の増減と直結する循環的失業率は景気が悪くなると上がり、良くなると下がるのに対し、ミスマッチ失業率は景気が好転してもなかなか改善されないのが特徴です。
求人不足による失業が23年ぶりに解消
産業構造の変化でミスマッチは高止まり
日本銀行が2015年10月末に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、同年7~9月平均の完全失業率が、求職者と企業の希望が条件面で合わないために生じる「ミスマッチ失業率」を、1992年の同期以来23年ぶりに下回ったことがわかりました。日銀が推計した15年7~9月平均のミスマッチ失業率が3.390%だったのに対し、労働力人口に対する失業者の割合を示す完全失業率は3.367%。この統計結果は理論上、企業の求人数が求職者数を上回っていると解釈できるものであり、求職者数に対して求人需要が不足している状態が解消されたことを意味します。言い換えると、“職種など条件にこだわらなければ働ける状態”であり、日銀の黒田東彦総裁も11月初めの講演で「労働市場は完全雇用といってよい情勢にある」とまで踏み込みました。
景気回復に加え、完全失業率の分母となる労働力人口が減少しているため、求人需要の不足による失業は「ほぼ解消」といえる状態に至っています。しかし一方で、ミスマッチ失業率の改善は思わしくありません。1990年前後は2%台前半でしたが、バブル崩壊後悪化し、2000年代前半には4%台前半まで上昇。現在は3%台前半と低下傾向にはあるものの、バブル期と比べると高い水準のままです。実は、これは先進国共通の傾向であり、経済協力開発機構(OECD)がまとめた2013年の推計値によると、先進34ヵ国のミスマッチ失業率の平均値は前年より0.17ポイント高い7.86%と6年連続で上昇しました。
原因として指摘されているのが産業構造の変化です。産業構造が変わるときは、衰退産業で人手が過剰でも、成長産業では企業が求める人材が足りず、ミスマッチ失業が生じやすいのです。現在は、生産拠点の新興国への移転やITの普及によって、求職者に人気の高い事務職の需要が減少する一方で、高齢化で求人数が増えている医療・介護、建設業などは人手が足りていません。こうした状況も、先進国にほぼ共通していると言われます。
特に労働力の急減に直面する日本にとって、本来働ける人が働けない状態が続くミスマッチ失業率の高止まりは、あまりにも大きな人材のロスです。新しい技能を身につける職業訓練の強化や雇用の規制緩和で転職を促し、ミスマッチを減らす取り組みが求められます。
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