企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】ジョブレスリカバリー ジョブレス・リカバリー

「ジョブレス・リカバリー」(jobless recovery)とは、景気が回復しても雇用の拡大がなかなか伴わない状態のことで、日本語では主に「雇用なき景気回復」と訳されます。一般に景気回復局面では、雇用情勢は景気に半年から一年程度遅れて動くため、その間、一時的にジョブレス・リカバリーに陥ることが知られていますが、近年はIT投資による労働生産性の上昇やオフショアリングの推進を背景に効率化が進み、景気回復が必ずしも国内の雇用拡大に直結しない状況が構造化されつつあるといわれています。
(2015/7/10掲載)

ジョブレス・リカバリーのケーススタディ

景気が回復しても雇用は増えない構造に
技術革新と海外移転による効率化が要因

「ジョブレス・リカバリー」という現象に注目が集まるようになったのは、米国が長期の経済低迷から脱した1990年代以降のことです。それ以前の米国の景気動向のパターンでは、不況が底を打つと、ほどなくして雇用も持ち直すのがつねでしたが、92年の景気回復期には失業がなかなか減りませんでした。さらに深刻だったのが、2002年からの景気拡大期。03年の夏場まで雇用が縮小し続け、ジョブレスならぬ“ジョブロス”リカバリーとまでいわれたのです。

リーマンショック後も然り。米国企業の株価は急速に回復しましたが、雇用ははたしてそれに伴わず、一時10%台にまで急上昇した失業率がリーマンショック前の水準に戻るのに、実に5年以上の歳月を要しました。カリフォルニア州では、同国経済を牽引するシリコンバレーを擁するにもかかわらず、失業率が現在も全国平均を上回っています。 

米国はもともと労働市場の流動性が高いため、90年代初めの景気回復期においては、企業がIT投資を推進する反面、ホワイトカラー中心の雇用調整を断行し、労働生産性の向上に成功しました。その結果、景気底打ち後も一時的に失業率が上昇し、ジョブレス・リカバリーに陥りましたが、新規企業が創出され、サービス産業を中心に雇用を吸収したため、一転して景気と雇用の足並みが揃い、以後の息の長い経済成長へつながっていったのです。

ところが2000年代に入ると、ジョブレス・リカバリーは長期化かつ深刻化。とくにリーマンショック以降は、米国のみならず多くの先進国で、“景気がよくなっても雇用が増えない”構造が固定化されつつあるといわれます。その要因は大きく二つ。

一つはロボットやICTなどの飛躍的な技術革新です。昨年発表された英・オックスフォード大学の調査レポートは、今後20年のIT化の影響で、米国にある702の職業のおよそ半分が失われる可能性があると指摘しました。現に、ネット通販最大手のアマゾンでは、キバと呼ばれる自走式の物流ロボットを導入、物流拠点の無人化を進めています。

もう一つは、製造業やコンタクトセンターなどを中心とする企業の海外移転です。AppleはiPhoneを中国で作り、IBMやMicrosoftがインドでシステム開発を行う時代。そうした労働ニーズは今後もより賃金の安い国々にシフトし続け、国内雇用は増えにくくなると考えられます。グローバル競争の激化を背景に、企業が、ITの推進やオフショアリングによって経営の効率化を追求するかぎり、景気が良くなっても雇用は増えない――ジョブレス・リカバリーが世界の主流となるのは不可避かもしれません。

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

あわせて読みたい

エンプロイメンタビリティ
「エンプロイメンタビリティ」(employmentability)とは、「企業の雇用能力」を意味する用語です。雇用される側からみて魅力的な企業か、継続的に雇用されたいかといった価値に関する概念で、雇用主としての能力や優秀な人材をひきつける吸引力を表します。単に高報酬を保障できればいいということでは...
メンバーシップ型雇用
メンバーシップ型雇用とは、先に人材を確保し、後から仕事を割り当てる雇用のあり方を指します。終身雇用を前提とする日本の企業の多くは、メンバーシップ型雇用といえます。年功序列や終身雇用に見られるメンバーシップ型雇用は、これまで多くの日本の企業が取り入れてきた雇用形態です。これと対比されるのが、職務に応じ...
特例子会社
特例子会社とは、企業が障がい者の雇用を促進する目的でつくる子会社のこと。障がい者雇用促進法は従業員56名以上の民間企業に対して、全従業員の1.8%以上は障がい者を雇うよう義務づけていますが、特例として、事業者が障がい者のために特別に配慮した子会社を設立し、一定の要件を満たした上で厚生労働大臣の認可...

関連する記事

外国人を雇用している企業は過半数、「さらに増やす」「今後雇用する」企業も半数近くに
人事担当者に外国人の雇用状況について聞いたところ、現在雇用している企業は過半数で、「さらに増やす」「今後雇用する」企業も半数近くであることがわかった。
2019/08/20掲載人事白書 調査レポート
障がい者雇用率2.5%以上の企業は16.4% 今後の雇用には前向き
障がい者雇用率について聞きました。多かったのは、「0.5%未満」(23.3%)と「2%以上2.5%未満」(22.8%)の二つです。以下、「1.5%以上2%未満」(11.6%)、「2.5%以上3%未満」(9.5%)、「3%以上」(6.9%)、「1%以上1.5%未...
2020/11/24掲載人事白書 調査レポート
目指しているのは「ジョブ型雇用」ではなく「ロール型雇用」ではないか?(リクルートワークス研究所)
このところ、ジョブ型雇用への関心が急速に高まっている。現在、ジョブ型雇用を標榜している企業は、国を越えて人材の獲得・活用を一元化したいグローバル企業や、熾烈な人材争奪戦の渦中にあるテクノロジー企業が主だ。しかし、新型コロナウイルスの流行以降、テレワーク下で姿の...
2021/01/05掲載HR調査・研究 厳選記事

関連するQ&A

障害者の雇用
障害者を雇用する際の留意点を教えて下さい。 また、助成金などについても併せて教えて下さい。 当社は、小売業です。 現在、雇用率0.6%です。
再雇用後の退職金水準について
統計データがあるかどうか分かりませんが、再雇用後の退職金水準をどの程度にすべきか知りたいと考えています。一旦、退職金は、一旦再雇用時に支給するとして、55歳~64歳迄再雇用の場合、60歳~65歳迄再雇用の場合の2パターンが分かりますと幸いです。
外国人労働者の雇用について
外国人の方を雇い入れる際の注意事項を教えてください。 また、正社員雇用に限らずアルバイトの雇用の際も同様となるのでしょうか?
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 雇用 ]

注目のキーワード解説をメールマガジンでお届け。

仕事と家庭(育児・介護)』の両立支援 会社の法律Q&A 「よくわかる人事労務の法改正」ガイドブック無料ダウンロード

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


「見える化」による効果検証で テレワーク導入をスムーズに実現<br />
西部ガスが取り組む“業務・ワークスタイル改革”とは

「見える化」による効果検証で テレワーク導入をスムーズに実現
西部ガスが取り組む“業務・ワークスタイル改革”とは

福岡市に本社を構える西部ガス株式会社は、「働き方改革」の一環としてテレ...