インフルエンサー
インフルエンサーとは?
「インフルエンサー」(influencer)とは、「Influence」(影響、感化、作用の意)を語源とする言葉で、他者や一般社会に大きな影響力を及ぼす人や事物のことを指します。近年では、とくにインターネットマーケティングの分野で使われ、ブログや動画サイト、ソーシャルネットワーキングサービスを始めとするCGM(Consumer Generated Media/消費者発信型メディア)において、他のユーザーへの“クチコミ”の影響力が大きいキーパーソンのことをインフルエンサーと呼びます。具体的には好感度の高いタレントやスポーツ選手などの有名人、特定分野にくわしい専門家や知識人のほか、個人で積極的に情報発信を行い、数多くの読者を抱える人気ブロガーなどが該当します。一般のビジネスパーソンの中にも、企業などに勤めるかたわら、“匿名”のインフルエンサーとしてインターネットの世界で一定の影響力をもつ個人が現れ始めています。
一般のビジネスパーソンが業界の有名人に
企業内個人が自分を発信する利点とリスク
自分の本業に関するブログを匿名で何年も書き続け、人気を集めていたエンジニアが、あるきっかけでそのブログ主であることが特定され、以来、業界誌などから取材や連載のオファーを受けたり、スカウトの話が舞い込んだりするようになった。会社の指示でHR関連のカンファレンスなどに参加していた担当者が、さまざまな場でディスカッションやプレゼンテーションを重ねるうちに業種業界を超えて注目される存在となり、人事のスペシャリストとして独立するにいたった――。こういうケースは近年、珍しくありません。多様なメディアを通じて行われる個人の情報発信が、一般のビジネスパーソンを注目度の高い「インフルエンサー」へと押し上げ、本人のキャリア機会にまで影響を及ぼす時代になってきました。
インフルエンサーの大前提は情報発信です。今日、明日の自分の本業にすぐに役立つということは少ないものの、個人が情報発信を行い、そのフィードバックを得ることには、中・長期的に見て大きなリターンがあるといわれます。「発信することがない」「面白い情報ソースをもっていない」という理由でブログやSNSに消極的な人もいますが、インフルエンサーの多くは、発信することで自分の意見や物事へのスタンスが磨かれていく、発信すべき内容があるから発信するのではなく、発信するからこそ中身がついてくるのだといいます。最初は内容が乏しくても、表現が拙くても、情報発信を繰り返し、他者からフィードバックを受ければ受けるほど、ものの考え方がしだいに深まっていく。決して目新しい話題や特別なトピックでなくても、自分というフィルターを通して、その内容を発信することで、多くの人を刺激する新たな視点を提供できるようになるということでしょう。その意味では、情報発信は貴重な学びのプロセスといえるかもしれません。
とはいえ、企業に所属する個人が、本業に関して自分を発信することには、少なからずリスクが伴うのも事実です。何気ない言動がFacebookやTwitterで一瞬にして世間に拡散し“炎上”を招く現状では、個人はおろか勤務先まで特定され、批判にさらされかねません。仕事やビジネスに対する個人の見解が、自社が広報などを通して公式に発信する方向性と異なる場合は、そうしたリスクをなおさら強く意識して、情報発信をためらってしまいがちでしょう。結果として、組織の壁を越えて多様な意見と交流する機会を逸し、社内だけの画一的な価値観や狭い人間関係に縛られるうちに、いつの間にか自分を失ってしまうことに。組織に多様性が求められるいま、それもまた、企業と個人の双方にとって小さくないリスクといえるのではないでしょうか。
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