隠れ倒産
隠れ倒産とは?
「隠れ倒産」とは、統計上の「倒産」にはカウントされないものの、限りなく倒産に近い企業の休・廃業や解散を意味する言葉です。主に資産が負債を上回る資産超過の状態で、経営の余力を残しているにもかかわらず、会社清算に追い込まれることを指します。法的整理や私的整理の倒産に該当せず、倒産件数の数字には含まれませんが、事業継続を断念せざるを得なかったことにかわりはないため、「隠れ倒産」と呼ばれます。近年は、人材不足や後継者難、人件費高騰など“人”に関する要因で、休・廃業や解散にいたる「隠れ倒産」が増加。日本経済の大きな懸念材料として浮上しています。
倒産が減る一方、休・廃業や解散は増加
景気回復の副作用“人手不足”が要因に
一般に倒産とは、企業が債務超過などに陥り、経済活動を継続したくてもできなくなる事態をいいます。これに対し、資産が債務を上回っているにもかかわらず、経営の余力を残したまま、自ら事業継続を断念するのが「隠れ倒産」にあたる休業や廃業・解散です。隠れ倒産は、債務返済や社員への退職金支払いなどを考慮し、倒産に追い込まれる前に、あくまで自主的に事業を辞めるという形式。したがって統計上の倒産に分類されず、民間調査会社などが集計する倒産件数にもカウントされませんが、いずれにせよ、会社が消滅してしまうことに変わりはありません。
東京商工リサーチの調査では、2013年に銀行の取引停止を受けたり、民事再生法の適用を申請したりした企業の倒産件数は11,000件を割り込み、22年ぶりの低水準となりました。一方で経営の余力を残しながら、休・廃業や解散に至った隠れ倒産の件数は約29,000件。倒産件数の実に2.6倍にのぼり、過去10年で最悪の数字となっています。景気回復で統計上の倒産件数が減少するなか、休・廃業や解散はむしろ年々増加しているのです。
なぜ隠れ倒産が拡大しているのか。財務状況に問題がないのに、なぜ廃業という決断を選ぶしかないのか。最大のリスク要因は、景気回復の“副作用”である人手不足だといわれています。上記の休・廃業および解散の件数を産業別にみると、最も多いのは建設業(8,535件)で、人手不足や建築資材高騰などが休・廃業、解散の理由に挙げられています。次に多いのが飲食業・宿泊業(6,497件)です。
人口減少が進む一方で、東日本大震災からの復興需要やアベノミクスに伴う公共投資の拡大をうけて、求人が急増。特に建設業や外食産業で、人手不足や人件費高騰が深刻化しています。採用にかかる費用は上昇しているのに、それでも必要な人員を確保できずにビジネスの機会を逃がし、収益低下から倒産に追い込まれたり、後継者に恵まれず、事業継続を断念したりする中小企業も後を絶ちません。人材不足に起因する隠れ倒産リスクを軽減するためには、パートの正社員化などの対策を進めて現有戦力の離職を防ぐとともに、採用・育成を経営の根幹に据え、徹底的な戦略見直しを図る必要があります。その成否が企業の存亡を分けるといっても過言ではありません。
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