プロ経営者
プロ経営者とは?
しがらみなく、グローバル戦略を加速
老舗への起用拡大、文化継承に不安も
今年に入り、「プロ経営者」をめぐる国内企業の動きがにわかに注目を集めています。資生堂、武田薬品工業、サントリーといった創業100年を超える老舗企業が相次いで、内部昇格ではなく、外部から経営人材を招いたことがプロ経営者起用の広がりを強く印象付けました。
資生堂では4月に、日本コカコーラで社長、会長を務めた魚谷雅彦氏が生え抜き以外で初の社長に就きました。武田薬品工業では6月1日付で、英国の大手製薬会社グラクソ・スミスクラインの幹部だったクリストフ・ウェバー氏が社長に就任。創業233年を誇る同社の歴史の中で、外国人をトップに迎えたのは初めてです。
そして、ひと際インパクトが大きかったのが先日発表されたサントリーのトップ人事。サントリーホールディングス(HD)では、佐治信忠会長兼社長が会長職に専念し、次期社長に、一般にも知名度の高いローソン会長の新浪剛史氏が10月1日付で就任します。サントリーといえば、創業家の関連会社が全株式の約9割を保有する非上場企業。「同族経営」の典型といわれる同社が、1899年の創業以来はじめて、創業家以外の経営者をトップに迎えることになったのです。
なぜ、プロ経営者を起用する人事が増えているのか。背景にあるのは、やはりグローバル競争の激化です。事業環境が激変するなか、企業が成長していくためにはダイナミックな世界戦略を、スピード感を持って実行する経営手腕が欠かせません。変化を怖れて、意思決定が遅れるとすぐに淘汰(とうた)されるので、特に保守的な老舗企業では、社内のしがらみに縛られることなく、経営の原理原則に従って行動する経営のプロが求められているのです。
そうした傾向は、プロ経営者として認められる人材に外資系企業のトップ経験者が多いことからも明らかでしょう。ベネッセHDがトップに迎えた日本マクドナルドHD会長の原田泳幸氏は米アップルで、LIXILグループ社長の藤森義明氏は米ゼネラル・エレクトリックで、カルビー会長兼CEOの松本晃氏は米ジョンソン・エンド・ジョンソンで、いずれも日本法人のトップを経験しています。
プロ経営者起用の動きが広がるもうひとつの要因として、日本企業の人材育成能力の低下を挙げる声もあります。自前で経営リーダーを育てられず、組織内部からトップが選べないとなると、企業にとって大切な企業文化や風土の継承も危うくなりかねません。社長職を退くサントリーの佐治氏は新社長に期待を寄せる一方、社内から後継者を出せなかったことについて、「私の責任かもしれない。大きな案件は全部自分で決めていたから」と、不十分な人材育成に対する反省の弁を述べています(産経新聞2014年6月25日付)。
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