制約社員
制約社員とは?
「制約社員」とは、働く場所や時間、従事する仕事内容などの労働条件について何らかの制約をもつ社員の総称です。伝統的な会社組織の基幹を成してきた正社員が、会社に言われれば「いつでも・どこでも・どんな仕事でも」働く無制約社員を前提とするのに対し、近年は特定の場所や時間での勤務を希望するパートタイマー・契約社員などの非正社員に加え、正社員でも育児や介護、高齢、病気といったさまざまな事情により働き方が限定される制約社員が増えています。
「いつでも・どこでも・どんな仕事でも」は限界
働き方に制約のある人材をどう活用するか
労働人口の減少を背景に今後の人事管理のあり方を考えるとき、育児・介護と仕事との両立、定年以降の就労といったニーズの高まりに応えて、社員により柔軟な働き方を提供しながら組織活性化を図っていかなければならないのは明らかでしょう。勤務地や勤務時間、従事する仕事内容などに一定の制約が生じる「制約社員」の存在を前提に、人事管理システムの再構築が求められるゆえんです。
制約社員の反対は、会社の指示によって「いつでも・どこでも・どんな仕事でも」働く無制約社員です。終身雇用や年功制に象徴される日本企業の伝統的な人事管理システムの下では、この無制約社員という働き方を前提に、「総合職」と呼ばれる男性正社員が基幹社員として組織の中心を成してきました。以前から一般職やパート社員といった形態での制約社員も存在しましたが、日本企業はこれに無制約社員と異なる処遇を適用。伝統的な人事管理制度は、いわば「一国二制度」をとってきたのです。
しかしここへきて、高齢化や女性活用が進んだ結果、中高年の男性社員が老親の介護にあたったり、家事や育児で制約を受ける女性社員が増えたりするなど、正社員が制約社員化する傾向が見られます。一方で勤務地や勤務時間に縛りはあっても、正社員と同等の仕事を行うパートや嘱託の非正社員が増えるなど、制約社員の基幹社員化も顕著です。従来の無制約社員が減り、さまざまな形態の制約社員が組織内でマジョリティーを形成するようになれば、正社員・非正社員の壁も意味を失うでしょう。「一国二制度」の別扱いを続けていては、いずれ双方から不満が高まり、組織生産性の低下を招きかねません。
そうしたなか、政府が、正社員とパートの中間的な位置付けで職種や勤務地を限定する「準正社員」の雇用ルールをつくる方針を発表しました。職種変更や転勤を伴わない分、企業は賃金を抑えられ、事業所閉鎖時に解雇しやすいなどのメリットがあります。また、さまざまな要因から制約社員化する働き手にとっても、例えば出産を機に退社していた女性社員が子育て期間だけ準正社員として働くなど、一人ひとりの制約に応じた働き方の選択肢が広がります。準正社員は期間の定めのない無期雇用で、給与水準は正社員の8~9割。福利厚生などは正社員に準じ、社会保険にも加入できるため、非正規雇用より生活の安定が望めます。
すでに大手百貨店など一部の企業は、準正社員に相当する正社員とパートの中間的な職種を独自に導入しています。高島屋では雇用契約を1年ごとに更新する契約社員の数が正社員とほぼ同数、三越伊勢丹は今春から正社員の3割程度まで採用を拡大するとのこと(2013年3月14日 日本経済新聞)。政府はこうした先行事例の周知を図るとともに、パートなど非正社員を準正社員に転換させる企業への助成制度も拡充する方針です。
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