ターンアラウンド・マネジャー
ターンアラウンド・マネジャーとは?
「ターンアラウンド・マネジャー」(Turnaround Manager)とは、経営破綻した企業もしくは経営破綻寸前の状態にある企業を短期間で再生させるために、経営者として登用される事業立て直しのスペシャリストのこと。俗に「企業再生請負人」ともいいます。
財務だけの旧来の企業再生人とは違う
強いリーダーシップと経営手腕が必須
「ターンアラウンド・マネジャー」のミッションは、事業再生が必要な企業に“経営陣”として乗り込み、策定された事業再生計画を定められた期間内に達成して経営再建を成し遂げることです。とりわけ再生に金融支援が伴うようなケースでは、従来の経営者が経営責任を問われて退任するのが普通ですから、後任として当該企業の経営のすべてを継承し担うことになります。毀損した企業価値を最大化するために、ターンアラウンド・マネジャーには、財務、事業、組織などあらゆる観点から最適な戦略を構築し、完遂する能力が求められるのです。
1990年代までの企業再建の枠組みでは、再生請負人は金融機関や企業再生ファンド運営会社が再建企業の社員の中から適任者を選んだり、金融機関出身者を外部から招へいしたりするケースが多く、実際に腕をふるうのは債権放棄の働きかけや資産の売却などの財務的処置に限られていました。しかし近年の厳しい経営環境下では、財務的処置だけで企業再生を軌道に乗せることは極めて難しいといえます。大胆なコスト削減はもちろんのこと、より企業の根幹に関わる経営戦略や組織体制を刷新し、ときには歴史とともに継承されてきた企業文化にまでにメスを入れないと、競争力を取り戻せないからです。それは破綻の危機に瀕していた日産をV字回復に導いた、カルロス・ゴーン社長の改革手法をみても明らかでしょう。
だからこそターンアラウンド・マネジャーには、企業経営に関わる全方位的な知見と、何よりも強いリーダーシップが欠かせません。経営破綻か、あるいはその寸前の状態にあるわけですから、プロパーの従業員や取引先を含め内外のステークホルダーは動揺していて当然です。そんな彼らに対して、厳しい選択を迫らなくてはならない局面も少なくありませんが、むやみに抵抗勢力を排除するだけでは、組織全体が疑心暗鬼になり、改革へのモチベーションそのものが下がってしまいます。「こうすれば必ずよみがえる」という将来のビジョンを明確に打ち出し、各ステークホルダーの不安と不信感を払拭するだけの的確なコミュニケーション能力をもって、組織の士気を維持・高揚させられるかがターンアラウンド・マネジャーの腕の見せどころといえるでしょう。
欧米にはカルロス・ゴーン氏のように、いくつもの企業を経営危機から救ってきた腕利きのターンアラウンド・マネジャーが数多くいます。日本は欧米に比べて企業再生の取り組み自体が遅れていましたが、近年は産業再生機構の活躍などが契機となり、企業再生案件が増えてきたため、ノウハウも徐々に蓄積されつつあります。日本でもプロのターンアラウンド・マネジャーが続々と輩出される日はそう遠くないかもしれません。
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